◆ 13.職務発明・知的財産権 ◆
★注記★最下段の【規定例】は あくまで“サンプル事例の抜粋”です。
このままでは、特許・知的財産権を会社に帰属させるには不十分です。
(社員に権利を返還する事態も起こりえます。) ●
職務発明とは、企業の業務の一環として完成された発明や、大学での研究成果として完成された発明のこと。特許丁に出願される発明のほとんどが職務発明である。
●
特許と知的財産(所有)権は、知的活動によって生じた無形の財産権であるが、
特許=知的財産(所有)権ではない。 ●
知的財産(所有)権は、「文芸、美術、学術」等を保護する
著作権と、「産業に役立つ技術的な意匠、商標」を保護する
産業所有権とに大別される。
●産業所有権は、
特許・実用新案・・・技術的な発明、考案を保護する。
意匠・・・産業上のデザインを保護する。
商標・・・商品・サービスのネーミングやマークを保護する。
(1)就業規則に職務発明についての
予約承継の規定(職務発明に対する社内制度の確立)と正当な対価の支払を定めておく。
《職務発明》 従業員の発明のうち、その発明が「使用者の業務範囲に属し、かつ、発明をするに至った行為が当該従業員の現在または過去の職務に属すること」が職務発明の要件となる。(特許法35条)
使用者が契約または勤務規定その他の定めをすることにより、従業員の発明による特許を受ける権利(若しくは特許権)を従業員から使用者に当然に承継させることが、特許法において認められている。
ただし
★従業員は発明から「相当の対価」の支払を受ける権利がある。 その発明により使用者が受けるべき利益の額及び発明についての使用者と従業員(発明者)の
貢献度を考慮して定めなければならない。
【訴訟例】
青色発光ダイオード事件(200億円の支払を求めるが、8億円で和解)
光ピックアップ事件(250万円の対価が認められる)
日立製作所事件(71億円の支払を求める)
《ポイント》 ①就業規則に予約継承について定めておく。
②従業員に対する適性妥当な対価(「相当の対価」)支払いシステムを作る。 合理的根拠・判断要素に基づいた算出法や算定額の平均値を割り出す。 (2)就業規則に知的財産権(所有)権について定めておく。
【知的財産(所有)権】 ●
特許権・・・発明をした人に対して、その技術を公開してもらい、その代償として、一定の期間、一定の条件でその技術に対して独占権を与えられる。
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実用新案権・・・「物品の形状、構造又は組合せ」に係る考案を保護するもので、特許ほどではない小発明を保護される。
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意匠権・・・工業的に利用可能な物品の形状や模様、色彩などのデザインを保護するもので、そのデザインに関して製造・販売する独占権を与えられる。
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商標権・・・商品やサービスに関してつけられている名称やマークを保護されるもの。自己の商品と他者の商品を区別するためにつけられるものが商標。
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著作権・・・著作物に発生する権利で、それを創作した人に権利が与えられる。
【規定例】
1.「会社の発意に基づき、社員が業務遂行上著作、発明、考案をした場合は、その著作権、特許権、実用新案権などの知的財産権は、会社に帰属する。」
2.「社員は次に掲げる事由により発明について、特許を受けたときは、会社に専用実施権を付与しなければならない。」
(1)「その職務遂行上、会社の業務範囲に属するものであること。」
(2)「その発明考案に至った経緯が、会社における社員の現在又は過去の職務に属するものであること。」
3.「前項にかかわらず、社員が特許を受ける権利又は特許権を、会社に譲渡した場合はこの限りではない。この場合は、専用実施権は消滅するものとする。」
4.「前2項の規定により、社員が専用実施権を設定し、又は、特許を受ける権利若しくは特許権を会社に譲渡した場合は、会社は相当の対価を支払うものとする。」
※注記※この【規定例】は “サンプル事例の抜粋”です。このままでは、特許・知的財産権を会社に帰属させるには不十分です(社員に権利を返還することになります)。上記解説中の《ポイント》を反映したものにも、なっておりません。
また、就業規則に規定することは当然として、「権利譲渡契約」を結ぶことも必要です。 「対価を決める手続(これも事例には載せていません)」も正当かつ合理的なものでなければ、無効とされてしまいます。
職務発明・知的財産権に関する規定の作成にあたっては、サンプル事例の転用は危険です。 “貴社の事情”に合わせたものを作成しなければ、有効なものとはなりません。 ご注意下さい。 (当事務所では、弁理士等、特許・知財の専門家と共同もしくは相談のうえ作成しております。)