雇用延長問題の解決策はこれだ

■ 雇用延長問題の解決策 ■

中小企業がとるべき解決策として、最初に「結論」を申し上げます。

T.継続雇用制度(再雇用制度)を導入

U.希望者全員(あえて選定基準を設けず)を再雇用

V.給料は大幅にカット(年金と雇用保険を最大活用)

W.労働は、短時間勤務 または、隔日勤務

これだけだと異論のある方が多いと思いますので、
「他の解決策」も含め、以下に解説していきます。

雇用延長方法の選択

◆1.雇用延長方法の選択◆


高年齢者雇用安定法が定める雇用確保措置の3つの選択肢から1つを選択しなければなりません。それぞれの制度のメリット・デメリットを比較します。

【3つの制度のメリット・デメリット】

(1)定年の引上げ

法律改正の本来の目的は定年の引き上げですが、経費負担が増大します。
<メリット>
@高齢社員の知的資産を維持し続けることができる。
A全社員に対して安定した雇用を保障することができる。
<デメリット>
@雇用を延長する社員の選抜を行うことができない。
A労働条件を原則として、引き下げることができないので、賃金・退職金などの総額が増大する。
Bコスト(給与)とパフォーマンス(労働)が見合っていない社員を雇用することで若年層のモチベーションが低下することがある。


(2)継続雇用制度(再雇用制度)の導入

就業規則や雇用契約書などの整備が必要です。
<メリット>
@対象者選定を行うことができるため、一定以上の能力を持つ高齢社員のみを雇用することができる。
A選定基準を明確に定めることができるため、社員に緊張感を与えることができる。
Bノウハウや知的資産を有する社員を比較的低い賃金で雇用することができる。
<デメリット>
@処遇面で折り合いがつかず、退職するリスクを抱える。


(3)定年制の廃止

社員にやめてもらうことが困難(解雇の問題発生)になります。
<メリット>
@高齢社員の意欲を引き出し、また優秀な高齢者の雇用を促進することができる。
Aノウハウや知的資産を有する社員を雇用し続けることができる。
<デメリット>
@社員の退職時期が不定となるため、要員計画が立て難い。
A健康、能力、意欲などの点で問題がある社員も継続雇用しなければならない。
B契約終了時のルールなどで問題が起こりやすい。

また、賃金や退職金といった「お金」の面から比較すると

(1)定年の引き上げ、(3)定年制の廃止

@賃金が年齢や勤続年数で決まっている場合、賃金制度の見直しが必要
A退職金が基本給や勤続年数と関係ある場合、退職金制度の見直しが必要


(2)継続雇用制度(再雇用制度)の導入

@一度雇用関係が終了し、新たな雇用契約を結ぶので、賃金の設定が自由にできる。
A60歳定年で退職しその後再雇用となるので、退職金規定は原則これまで通りでもよい。


結論
継続雇用制度(再雇用制度)の導入が現実的な対策です。

<継続雇用制度とは?>
現在雇用している高年齢者が希望するときは、定年後も引き続いて雇用する制度のこと。
継続雇用制度には次の2つがあります。一般的には、再雇用制度を導入します

●勤務延長制度
定年年齢が設定されたまま、その定年年齢に到達した者を退職させることなく引き続き雇用する制度です。
●再雇用制度
定年年齢に到達した者をいったん退職させた後、再び再雇用する制度です。

【継続雇用制度の雇用条件】

高年齢者の安定した雇用の確保が図られたものであれば、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用でなくても構いません。
また、常用雇用のみならず、短時間勤務や隔日勤務なども含むため、会社の実情にあわせて制度を導入できます。

【継続雇用制度の対象者の選択基準】

労使協定により継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、この基準に基づく制度を導入した場合は、継続雇用制度の措置を講じたものとみなされます。この場合は、希望者全員を対象としなくても構いません。

《もう一つの考え方》

★年齢構成と、選択する制度
社員の年齢構成によっては、継続雇用制度の導入を選択しないことも考えられます。
20〜30歳代ばかりで50代がいないような会社では、最初から『定年の引き上げ=65歳定年制』を選択しても良いでしょう。一番年上の社員が定年退職する頃には,65歳定年が義務化されている可能性が高いからです。

就業規則・再雇用規程・労使協定の作成

◆2.就業規則・再雇用規程・労使協定の作成◆


新たに継続雇用制度を導入する企業の場合は、就業規則に雇用規定を定めます。すでに再雇用規程がある場合は、規程の再雇用基準を修正します。

60歳以降の賃金を下げるという取扱いを行う場合には、労働条件の不利益変更として扱われないように、就業規則や労働契約書の整備を行う必要があります。
今回は雇用延長制度の導入という前提がありますので、大きな問題を抱えることは少ないと思われますが、制度導入においては会社側から一方的に通達するのではなく、労使で十分に話し合うというプロセスを経ることが求められます。

【フロー】

60歳定年制

手を入れるか?→入れる=「定年の引き上げ」OR「定年制廃止」
↓入れない

「継続雇用制度」を導入する

対象者は?→選定しない=「希望者全員の再雇用」
↓選定する

労使協議は?→合意できた=「労使協定で対象者を選定」
↓不調

適正な基準か?→適正=「就業規則で対象者の選定基準を規定」


【対象者の選定基準の策定】

継続雇用制度の対象となる社員の基準を、労働組合または社員代表と協議します。
対象者の選定に当たっては、労使間で話し合いの場を設け、その企業に最も適した基準を労使納得のうえで、決定することが大切です。

<適正と認められない例>
×会社が特に必要と認めた者に限る←よく誤解されています。×です
×上司の推薦がある者に限る
×定額部分の年金受給資格のあるものに限る
×組合活動に加入していない者←不当労働行為と判断されます。

<適正と認められる例>
○社内技能検定Aレベル以上の者
→公的資格、公的検定で判断
○営業経験が豊富な者(全国の営業所を3箇所以上経験している者)
→注意!2箇所だけの人に、3箇所以上経験させるような努力が求められます。
○過去3年間の勤務評定がB以上の者(勤務評定が開示されている企業)
→注意!Cの人に対し、Bになるような指導が求められます

★適正か否か判断する方法は?
一度選定基準を決めて、過去1年〜2年の間に退職した人にその基準を当てはめてみます。
⇒その基準に合格した人が「ゼロ」ならば、その選定基準は認められません!

【労使協定の作成】

労使協議で決定された基準をもとに労使協定を締結します。労使協定は、労働者の過半数を代表する者と使用者の署名捺印、作成日、有効期間などがあれば、形式は特に決まっていません。

<労使協定とは?>
その事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合と、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者と、事業主との書面による協定のことです。

【労使協議が不調の場合】

労使の協議が不調の場合は、大企業は法施行後3年の間(平成21年3月31日まで)、中小企業(従業員数300人以下)は法施行後5年の間(平成23年3月31日まで)に、就業規則で継続雇用制度の対象者の選考基準を定めることができます。《激変緩和措置》

ただし、就業規則で基準を定めることができるのは、労使協議が不調であることが前提なので、労使協議を省略したり、形式的な労使協議だけで、基準を就業規則で定めることはできません。

<就業規則とは?>
労働者の労働時間・休日・賃金などの労働条件、服務規律(働くために守るべき事項)、退職・解雇に関する事項などを定めた書類で、常時使用する従業員が10人以上いる企業は、法律で作成および労働基準監督署への届出が義務付けられています。

<従業員代表の選び方>
退職か再雇用かという問題を扱うので、代表者の適格性が問われたり、労使トラブルにならないように注意が必要です。そのため「継続雇用の対象者を選定する場に出る代表者を選ぶ」ことを明示して、代表者を選ぶことが求められます。選出した証拠も必ず残します。
就業規則に添付する意見書の時のような代表者選出では後で問題になります。(「おい田中君、代表でここに署名してハンコ押しといてくれ」では困ります。)

【雇用確保措置年数の決定】

継続雇用の最高年齢を高年齢者雇用安定法が定めるように段階的に引き上げるか、最初からいっきに65歳まで引き上げるのか、決定します。

【再雇用規程の作成・変更】

継続雇用の基準が決定すれば、再雇用者を対象とする再雇用規程を、就業規則に作成します。これは、再雇用者の場合、通常の正社員とは異なる労働条件で働くことになるため、ルール作りが必要です。
再雇用規程がすでにある企業の場合は、労使協議で決定した基準に基づき、再雇用の対象者となる基準を変更します。

選定基準は本当に必要か

▲選定基準は本当に必要か?!▲中小企業の現場では▲


Q 労使で話し合いの場を設けて、充分な協議ができますか?
⇒労使で話し合いができるのであれば、基準を明確にして「対象者を選定」すれば良いでしょう。
しかし、労使協議できる環境が無ければ、「希望者全員を再雇用」しか方法はありません。

Q 選定基準評価表を作成したとして、本当に運用できますか?
⇒人事評価制度がなければ(あっても機能していなければ)、適正な評価をするには大きな労力が割かれます。現場にはそんな労力を割く余裕はありません。
「希望者全員を再雇用」なら、選定基準の作成も評価表の運用も不要です。

Q「全員はイヤだよ!あんなヤツまで再雇用すんのかよ!」
⇒必ずしも全員再雇用とは「結果として」なりません。

★給料や勤務形態を決めるのは会社です(原則)。
「この給料じゃな〜、この勤務時間じゃな〜、働けないな。」と
“先方からご辞退いただく”のであれば、何ら問題はございません。


★もう一つ大事な理由
⇒助成金の受給要件として、継続雇用制度の導入の場合、
「希望者全員」の65歳雇用が必要になります


結論
中小企業では、「希望者全員を再雇用」が現実的な運用です。


※「それでも、当社ではじっくりと選定基準を作りたい。」という方もおられるでしょう。
そこで具体的にどのように基準を定めたらよいのか、まとめましたので参考にして下さい。

※参考資料 選定基準の例

@「働く意思・意欲」に関する基準の例
引き続き勤務することを希望している者
定年退職後も会社で勤務に精勤する意欲がある者
本人が再雇用を希望する意思を有する者
再雇用を希望し、意欲のある者
勤労意欲に富み、引き続き勤務を希望する者
定年退職○年前の時点で、本人に再雇用の希望を確認し、気力について適当と思われる者 等

A「勤務態度」に関する基準の例
過去○年間の出勤率○%以上の者
懲戒処分該当者でないこと
人事考課、昇給査定において、著しく評価が低くないこと
無断欠勤がないこと 等

B「健康」に関する基準の例
直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと
直近○年の定期健康診断結果を産業医が判断し、就業上、支障がないと判断されること
定年退職○年前の時点で、体力について適切と認められる者
体力的に勤務継続可能である者
勤務に支障がない健康状態にある者 等

C「能力・経験」に関する基準の例
過去○年間の賞与考課が管理職○以上、一般職○以上であること
過去○年間の平均考課が○以上であること
人事考課の平均が○以上であること
業績成績、業績考課が普通の水準以上あること
工事・保守の遂行技術を保持していること
職能資格が○級以上、職務レベル○以上
社内技能検定○級以上を取得していること
建設業務に関する資格を保持していること
技能系は○級、事務系は実務職○級相当の能力を有すること
定年時管理職であった者、又は社内資格等級○以上の者
○級土木施工管理技士等の資格を有し、現場代理人業務経験者又は設計者である者 等

D「技能伝承等その他」に関する基準の例
指導教育の技能を有するもの
定年退職後直ちに業務に従事できる者
自宅もしくは自己の用意する住居より通勤可能な者
勤続○年以上の者 等