人事労務の時事解説 2006年2月号

 

日本と各国との社会保障協定
 
平成17年10月に、日本はアメリカとの社会保障協定を締結しました。アメリカとの締結では、年金制度だけであった3国(ドイツ、イギリス、韓国)とは違い、医療保険制度の二重加入防止も含まれています。

アメリカは日本と協定を締結した国としては、4番目となります。1番目は、平成12年2月からドイツと、2番目に平成13年2月からイギリスと、3番目にはアメリカより半年早く平成17年4月から韓国となっています。現在も、ベルギー、フランスなどと協定締結に向けて交渉が続けられています。日本の企業人が、海外へ派遣される機会が増えてきていることが、協定国の増加の要因になっています。

基本的な考え方

日本の事業所に勤務する人などが、協定国にある支店や駐在員事務所などに派遣される場合、両方の国の社会保障制度(年金・医療保険制度)に加入しなければなりませんでしたが、協定を締結した国とは、どちらかの国の社会保障制度のみに加入することになりました。

協定の対象者は、原則としてその人が就労している国の社会保障制度(年金制度:注)のみに加入します。ただし、事業所から一時的に(5年以内と見込まれる場合)に協定相手国に派遣される場合は、引き続き派遣元の国の社会保障制度(年金制度)のみに加入します。
(注:アメリカ→社会保障制度、他の3国→年金制度)

協定の特徴

現在締結している国との協定の特徴は原則的には、イギリス・韓国の協定パターンとドイツ・アメリカの協定パターンに分かれます。

イギリス・韓国のパターンは協定国へ就労等している間、年金制度への二重加入を防止するのみの制度となっています。
ドイツ・アメリカのパターンは二重加入の防止だけでなく、年金の加入期間を通算し年金保険料の掛捨ても防止する制度となっています。さらにアメリカとは医療保険の点でも掛捨て防止となっています。

これから締結する国とは、締結内容も充実するものと思われます。従業員をいづれかの国へ派遣したことがある場合、またはこれから派遣する場合は、一度社会保険事務所等でご確認ください。


就労意識のランキング

1位 仕事を通じて人間関係を広げていきたい(95.2%)
2位 社会や人から感謝される仕事がしたい(93.1%)
3位 どこでも通用する専門技能を身につけたい(93.0%)
4位 これからの時代は終身雇用ではないので、会社に甘える生活はできない(86.5%)
5位 高い役職につくために、少々の苦労はしても頑張る(79.7%)
6位 仕事を生きがいとしたい(72.5%)
7位 仕事をしていくうえで人間関係に不安を感じる(63.9%)
8位 面白い仕事であれば、収入が少なくてもかまわない(59.4%)
9位 いずれリストラされるのではないかと不安だ(38.7%)
10位 職場の上司、同僚が残業していても、自分の仕事が終わったら帰る(35.0%)
11位 仕事はお金を稼ぐための手段であって、面白いものではない(30.3%)
12位 いずれ会社が倒産したり破綻したりするのではないかと不安だ(22.0%)
13位 職場の同僚、上司、部下などとは勤務時間以外はつきあいたくない(19.9%)

上記は平成17年度新入社員を対象に実施した「働くことの意識」調査において、就労意識についての13の質問文に対する回答で、肯定的な内容(「そう思う」と「ややそう思う」の合計)の比率の順位です。
総じて、ポジティブな項目が上位を占める傾向があり、反対にネガティブな項目が下位を占めています。最近では、職場の人間関係にドライな若い世代が多いというイメージがありますが、この結果をみる限り、新入社員たちは職場の人間関係に大きな期待をもっているようです。
また、専門技能への関心が確認され、これからの職業生活において、個人の専門技能をよりどころとしていきたいとする意向がうかがえます。


児童手当、小学6年まで支給へ

少子化対策の一環として支給されている児童手当ですが、2006年4月から支給対象が引き上げられ、所得制限も緩和されることが決まりました。現在は、仮に夫婦と子ども2人の世帯とすると、給与所得者で年収780万円未満、自営業者については年収596万円未満の方に支給され、0歳から小学3年生までの子どもの85%に支給されていますが、年収要件の緩和によって約90%の児童が対象となる見込みです。

◆児童手当とは

児童手当は児童を養育する方に手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健全な育成および資質の向上に資することを目的に、現在は小学3年生までの児童を養育している方に第1子、第2子に対して月額5,000円、第3子以降に対しては月額1万円が支給されています。

2006年4月からは支給対象が小学6年生まで引き上げられ、所得制限も夫婦と子ども2人の世帯で給与所得者については年収860万円未満、自営業者は年収780万円未満に引き上げられます。

◆必要な財源は

児童手当拡充のために必要な財源は2006年度から、たばこ税を1本につき85銭引き上げ、たばこの値段は1本1円の値上げでまかなうことが決まっています。


インフルエンザ対策のための自宅待機は無給でよい?

新型インフルエンザの流行に備え、A社では社内対応策を検討しています。海外の新型インフルエンザ発生地域から帰国した社員に対して、安全が確認されるまで自宅待機をさせたいと考えていますが、この期間は無給にすることはできるのでしょうか。

◆国の行動計画では

大流行が懸念されている新型のインフルエンザについて、国の行動計画が策定されています。行動計画では、世界的流行が起こる前からピークを迎えるまでの流行の状況を6つのフェーズに分類し、各フェーズごとに国内で発生していない場合(A)と発生している場合(B)に分けて国が行う措置が定められています。

フェーズ4B以上で可能

フェーズ4(ヒトからヒトへの感染が確認されているが、感染集団は小さく限られている段階)でB(国内で発生)となった場合、国は新型インフルエンザ患者やその疑いのある者に対して入院勧告や発生地域の企業に対して新型インフルエンザの症状が認められる社員に出勤停止や受診勧告を行います。

国の勧告に従い、感染者やその疑いのある社員を自宅待機させる場合は、休業手当の支払いは不要となり無給とすることができます。

フェーズ4Aでも

また、フェーズ4以上でA(国内で発生していない)となった場合は、国内流入を防ぐため、発生地域からの入国者に対し質問票や診察で患者を振り分けることがあります。そこで新型インフルエンザの患者の疑いがあれば検疫法に基づき停留、患者と確定されれば入院勧告が行われます。

この措置によって海外から帰国した社員が停留または入院となり、出社できない期間は休業手当の支払いは不要となります。

それ以外は休業手当が必要

これらのケース以外で、会社が独自の判断で国の措置を超えて、社員に自宅待機を命じる場合には休業手当を支払わなければならないでしょう。


定年退職でも使える雇用保険

雇用保険には生活の安定や就職促進のために様々な仕組みがあり、基本手当の受給だけでなく、定年退職者でも利用できる制度がありますが、知らないと損をすることもあるようです。

基本手当は

退職前の1年間で通算6カ月以上雇用保険の被保険者になっていれば、基本手当をもらうことができます。定年退職者でも再就職する意思や能力があり、ハローワークで求職の申し込みをすれば対象となり、被保険者期間によって給付日数が決められています。

受給できる期間は通常退職後1年間ですが、定年後しばらく休養してから働きたいという場合、定年退職者の場合、最長で1年間延長することができます。延長するためには、退職後2カ月以内にハローワークに行き、延長したい期間を申し出なければなりません。

また、雇用保険の基本手当を受け取ると、その期間中については、公的年金は受けられなくなるので、事前に受給できる年金額を社会保険事務所で試算してもらい、どちらを受けるか検討するとよいでしょう。

基本手当のほかにも

基本手当のほかに、被保険者期間など一定の条件を満たせば、定年退職者でも利用できる制度があります。

60歳から64歳が対象の高年齢雇用継続給付は、定年後に再就職し、賃金が60歳時より大幅に減った場合に、低下率に応じて一定額が支給されます。ただし、賃金額が一定水準より高い場合は対象外になります。

また、教育訓練給付は、パソコンや簿記など政府が指定する講座を受けて修了すると、かかった費用の一定割合を負担してくれます。定年になって現在働いていない人でも、退職後1年以内であれば対象となります。被保険者期間が5年以上ある場合は、受講料の4割(上限20万円)をもらえます。


年金額試算サービス始まる

2005年12月から社会保険庁はインターネットに接続できる携帯電話から年金額を簡易に試算するサービスを始めました。一定の条件を満たせば誰でも利用でき、年金加入期間などを自分で設定して試算することができます。試算の対象は、社会保険庁が支払う老齢基礎年金、老齢厚生年金の年金額(つまり、「基金」の分は反映されません)ですが、将来の年金額を保障するものではありません。

アクセス方法

携帯電話で下のアドレスを直接入力し、「自分でできる年金額簡易試算」をクリックすると試算のために必要な項目を入力することができます。

http://www.sia.go.jp/k/

このシステムを利用するには次のような前提条件があります。
①簡易試算を行う時点で、60歳未満であること
②簡易試算を行うには、加入期間が合計25年(300月)以上あること。
③年金額は、60歳到達月に退職しているものとして計算します。

一部の機種では利用できない場合がありますが、その場合はパソコンから社会保険庁ホームページの「自分でできる年金額簡易試算」を使って試算することができます。

◆実際の試算の方法

①生年月日と性別を入力します。
②これまでの年金の加入期間と厚生年金の期間については平均給与額を入力します。
③60歳までに見込まれる年金の加入期間と厚生年金の期間について平均給与額を入力します。
④入力に間違いがなければ試算のスタートをクリックします。
⑤1年間に見込まれる年金額、指定した年齢までのおよその累計額を求めることができます。
 

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