◆ 就業規則変更の注意点 ◆


就業規則を見直す場合は『労働条件の不利益変更』に要注意!

■就業規則に一旦規定を定めれば『労働条件』として確定します

そのため、従業員にとって労働条件が今現在よりも悪くなる場合は
『労働条件の不利益変更』になるため、就業規則の変更は簡単にはできません
(たとえば、賃金の引き下げ、退職金制度の改定、手当の廃止、など)


■明文化されていない『社内慣行』はありませんか?

就業規則や社内規定に記載していなくても、
「慣行(習慣)」としてあれば「労働条件」と判断されます。


たとえば、変更後の就業規則に「退職金は支給しない」と規定する場合、変更前の就業規則に退職金規定がなくとも、「慣行」として退職金を支払った実績があれば、退職金の支払いを要求されれば、支払わざるを得ません。裁判では会社側が負けています。


■就業規則を『不利益変更』するためには、何が必要か?

(1)不利益変更には『合理性』が必要

2)労働契約に直結する内容を不利益変更する場合には
 『従業員の同意』が必要



(1)『合理性』を判断する基準は?

合理性の具体的な判断基準について、
最高裁は「第四銀行事件」(平成9.2.28)の判決において、
①従業員が被る不利益の程度
②企業側の変更の必要性の内容・程度
③変更後の就業規則の内容自体の相当性
④代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
⑤労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応
⑥同種事項に関する同業他社の状況、等
の諸事情を考慮して,合理性判断をすべきであるとしています。

要するに、

合理性があるかどうかは,就業規則変更の必要性と
従業員の受ける不利益を比較して総合的に判断すべき


ということです。

(2)『従業員の同意』は、全ての従業員について必要なのか?

最高裁は,「秋北バス事件」(昭和43.12.25)の判決で、
「新たな就業規則の作成または変更によって,既得の権利を奪い,労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されないが,労働条件の統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって,当該規則条項が合理的なものである限り,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,その適用を拒否することは許されない。」としています。

要するに、

原則として、従業員の同意を得ずに、就業規則を不利益変更することはできない。
ただし、労働条件を不利益に変更することについて、
『合理性がある場合には、これに同意しない従業員も、拘束される』


と判断しているのです。

■実務上の対応方法は?

賃金や退職金など労働者にとって重要な権利や労働条件に関する不利益変更には、『高度の必要性』が必要とされています。
合理性がないと判断される不利益変更は無効となります。


従業員が多くなると全員から同意をとることは、現実として困難な場合が多いものです。
しかし、労働条件の不利益変更の議論に巻き込まれることを避けるためにも、会社側として、できる限り従業員全員から同意を得る努力が必要です。


会社側として、充分な説明を行うことで、現状を理解してもらい、労働条件の変更を納得してもらうことです。そのうえで
『従業員一人々から個別に同意書をもらう』ようにして下さい。


ただし、無理に同意させると、その同意書は無効になります。
あくまでも「自らの意思で」同意書に署名してもらうことが肝要です。


参考資料①⇒  就業規則の変更等に関する判例・裁判例の要旨

【成果主義導入による不利益変更訴訟判決(及び新聞報道)】
参考資料②ノイズ研究所事件「成果給与に変更合理的」高度な必要性も認める
 減額3社員が逆転敗訴 東京高裁判決で初判断
(2006年6月22日判決)

■勘違いに、ご注意

労働基準監督署は『不利益変更の就業規則』であっても『届出書・意見書・就業規則の3点セット』があれば、受理します。
届出時には、就業規則の内容を確認しますが、記載すべき規定が漏れていないか確認しているのであって、その内容について、承認したわけではありません。
「不利益変更の同意をとりましたか?同意書もありますか?」などとはいちいち聞きません。

もし、従業員とのトラブルが発生したとしても、変更部分の妥当性について判断を下すのは「裁判所」です。
判断するのは労働基準監督署ではありません。

 

 

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