●「労災増、下請け把握を」 厚労省 製造請負問題(8月22日 朝日)
製造業の工場で「請負」が増加し、労働災害が発生しやすくなっているとして、厚生労働省は発注元のメーカーに対し、下請け、孫請けの企業名やその責任者を把握し、請負会社を交えた協議会を設置するよう求めていく。同省の調査では、メーカーに比べて、請負会社では労災の発生率が2倍以上に上る。「請負会社の自主的な努力のみでは十分に災害を防止できない」として、メーカーに自覚を促す狙いだ。
発注元のメーカーが実施すべき安全管理について、厚労省の労働基準局が指針にまとめ、8月1日、日本経団連や連合に通知した。
指針によると、メーカーは、請負会社との間や請負会社同士の連絡調整を統括する管理者を選任する。一方、受注側の請負会社は、下請け、孫請けに至るまで、各社ごとに責任者を置き、メーカーに通知する。それらの責任者が参加する「協議会」を設け、定期的に開催することを求めた。協議結果は労働者に周知する。
このほか指針は、発注元のメーカーに対し、安全衛生計画を作って請負会社に周知することや、作業場所を巡視することを要望した。また、請負会社に使わせている機械の安全を確認することや、請負会社の労働者の健康診断の受診率を高めるために日程を調整することも求めている。そのうえで、安全衛生管理体制を確保できない請負会社には、仕事の発注を控えるべきだとしている。
下請けが一般的となっている造船業や建設業では、以前から請負会社との連絡調整が義務づけられていた。近年、製造業の請負が増えたため、今年4月に施行された改正労働安全衛生法で、請負会社との連絡調整が製造業でも義務づけられた。指針はその内容を具体化するために策定された。
製造業の大規模工場を対象に厚労省が03年11月に行った調査によると、労働者1000人あたりの1年間の労災被災者数は、発注元が5.09人だったのに対し、請負など「協力会社」では11.32人に上っていた。
厚労省は今後、各地の労働基準監督署や労働局を通じて、メーカーに対し、指針の順守を求めていく。