遅刻者に給与で制裁する手立ては何かないでしょうか?
 
Q.一部の社員に遅刻が多く、対処方法を検討中です。
 
弊社の勤務時間は8:00〜17:00(休憩1時間)ですが、遅刻者の残業代については、8時間を超えた分のみ支払うことにしようと検討しています。この時、仮に「8時間勤務するまでは、17:00を過ぎても時間外手当はつけない」とした場合、「どうせ残業がつかないのだから、9:00に出社して18:00に帰ればいいや」などという不心得者が出ないか危惧しています。
 
遅刻者に対して残業代を支払わないのは当然ですが、それ以外に何か給与で制裁する手立ては無いのでしょうか。また、給与での制裁以外の方策があれば合わせてお教えください。
 
 
A.「遅刻をなくす」という目的が、はたして「給与で制裁する」ことで本当に達成されるのか?いささか疑念を禁じえません。 そこで、
 
(1)ご質問の「給与で制裁する手立て」に、まずはお答えし、その上で
(2)「制裁の前にすべきこと」について私見を述べたいと思います。
 
(1)給与で制裁する手立て
 
●まずは、遅刻・早退した時間分の賃金カットです。
 
これは、“働いていないので賃金も発生しない”、ということです。「ノーワーク・ノーペイの原則」(民法第623条及び第624条1項)の通り、何ら問題ありません。
 
なお、トータルで所定労働時間働いた場合は割増賃金を支払わない旨、就業規則に記載が必要です。
 
●次に、遅刻・早退した時間分を“超える”賃金カットです。
 
これは制裁の一環としての「減給の制裁」として認められています。“働いたけど、制裁として賃金を一部カットするぞ”ということですので、労働者の生活を脅かすことがないよう、以下の「制裁規定の制限(労基法第89条第9項及び第91条)」が設けられています。

①就業規則に制裁の種類及び程度に関する事項を定めること
②制裁1件につき、減給の限度は平均賃金の1日分の半額まで。
③複数の制裁を行う場合には減給の総額は減給月の賃金総額の10分の1まで。これを超える部分は次月以降の賃金から減額する。

例:平均賃金1万円(月給30万円)の場合
1件の減給の限度は5千円まで。
1月の減給の限度は3万円まで(1件5千円×6回まで)。

労働基準法が制裁に一定の制限を加えているのはここだけですが、これ以外の制裁について制限がないわけではありません。

就業規則で定める「懲戒規程」などは「公序良俗(民法第90条)」の範囲内であることが求められます。あまりに重過ぎる制裁や非常識な制裁などは、認められません。
 
●制裁の手順が決まらないと、「減給の制裁」はできません。
 
就業規則には「懲戒規程」があります。
ここに記載されている懲戒の種類は一般的には次の順になっています。
①「訓告(口頭で注意を行い、将来を戒める)」、
②「けん責(始末書を提出させ、将来を戒める)」、
③「減給(始末書を提出させるほか、給与の一部を減額する。)」
以下、④出勤停止、⑤降格、⑥諭旨退職、⑦懲戒解雇、となっています。

①「訓告」、②「けん責」、を行い、それでも改善が見られない場合に初めて、③「減給」の制裁を行うことになります。そのためには、例えば「訓告」2回で「けん責」、「けん責」3回で「減給」、などの手順やその判断基準をきちんと決めたうえで、社員全員に「懲戒に関するルール」として明示し理解してもらう必要があります。

この手順や判断基準を決めていないため、せっかく「懲戒規程」があっても使えていない会社様が多いのです。

●給与「以外で」制裁する手立て

勤怠実績(勤務態度)を、賞与査定時の考課項目や、人事評価の評価項目などに加える(重要項目として評価ウエイトを上げる)などの方法も考慮してはいかがでしょうか。
「遅刻しないのがあたり前だ。そんなことを評価項目には入れられない!」と憤慨なさるかもしれませんが、遅刻しないことが当たり前でない、のが御社の現実です。考課面での手だても必要と考えます。
 
 
(2)「制裁の前にすべきこと」
 
●『叱る』ことです。
 
遅刻を繰り返す社員に限って、個人的能力だけは優れていたりします。
だからといって放置していては、組織が崩壊します。
彼らも、「遅刻はいけない」と、わかっているはずです。それでも遅刻してくる・・・・。
 
●上司(会社)の対応が甘いから舐められているのではないでしょうか
 
ここにある管理職心得から、一部を転載します。参考にして頂ければ幸いです。
 
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『一言だけ、大声で叱れ!』
○「何時だとおもってるんだ!」 ×ぐちぐちと叱らないこと
『失態の事実のみを叱れ!』
○「20分の遅刻だぞ!」
『本人の性格を責めるな!』
×こんなところにいい加減さが出るんだ、などと余計なことは言わないこと
『その日のうちにフォローしろ!』
本人の優れたところをまず褒める。
遅刻することが、どれだけ本人の将来にマイナスか諭す。
そして会社として期待していることを話す。
 
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タイミングを逃さず、きちんと叱ることが大事です。
制裁がどうとかよりも、その前にすべきことがあるように思うのです。

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