割増手当の計算では、なぜ深夜割増だけ別なのですか?
Q.時間外の割増率は25%ですが、残業基礎算式で表すと(基本給のみとして考えます)
基本給×1.25となり、同様に休日割増の計算式は
基本給×1.35となると理解しています。
しかし、深夜割増の計算式は割増率が25%にも関わらず
基本給×0.25と教えられたのですが、どうして深夜割増だけ1.25とならず0.25なのでしょうか?
A.
(1)割増賃金計算の考え方を、事例でご説明します。
●御社では、深夜労働分を、最後にプラスオンする方式を取られているのです。
事例:所定労働7時間の会社
【労働日】
AM9 休憩1時間 PM5 PM6 PM10
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
←所定労働時間―→←法定内残業→←時間外労働→←時間外労働+深夜労働→
←――――100%―――――――→
←法定労働時間――――――――→←100%+25%以上―――――――――→
←+25%以上―――――→
①法定労働分・・・・・×1(100%)
②時間外労働分・・・×1.25(100%+25%)
③深夜労働分・・・・・×0.25(+25%) 合計=①+②+③
※深夜労働のない時間外労働分(PM10まで)と、
深夜労働のある時間外労働分(PM10以降)とを別々に計算する方法もありますが、
御社の方法が一般的です。
【休日】
AM9 PM10
▼ ▼
←休日労働―――――――――――――――――→←休日労働+深夜労働―→
←100%+35%以上―――――――――――――――――――――――――→
←+25%以上―――――→
★注★
休日労働に時間外労働という概念はありません。
休日に8時間を越えて労働したからといっても、それは時間外労働ではなく、
あくまで休日労働なので+35%のままです。
ただし、労働が深夜に及んだ時には、さらに+25%となります。
①休日労働分・・・×1.35(100%+35%)
②深夜労働分・・・×0.25(+25%) 合計=①+②
(2)なぜ深夜割増だけ別なのか?
労働基準法第37条(割増賃金令)で定める割増率は、法令ではこうなっています。
時間外労働・・・25%以上〜50%以下
休日労働・・・・・35%以上〜50%以下
深夜労働・・・・・25%以上
●労働基準法では、「時間外労働・休日労働」は基本的には違法なのです。
だから、時間外労働・休日労働をさせるために、「36協定」を締結して届出をし、「就業規則」にきちんと定めをすることで、許可を得ることが必要なのです。
36協定の届出をしないで法定労働時間違反をした場合の刑罰が、他の届出違反(30万円以下の罰金)に比べて重い(6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金)理由はここにあります。
●これに対し、「深夜労働」はもともと適法なのです。
社会を維持するためには、日中働く人と夜働く人との両方が必要です。だから、「午後10時から午前5時の間であれば、『たとえ8時間を超えなくても』この時間帯に働けば、深夜割増を支払う」と、なっているだけなのです。深夜労働だけなら協定も届出も不要です。
同じ割増賃金でも、「時間外労働・休日労働」と「深夜労働」は、その法的性格が異なるのです。