特別休暇の期限や目的を会社が限定することはできますか?
Q.弊社では今、慶弔やリフレッシュのために特別休暇を設けようと検討しています。
年次有給休暇は付与後2年間で権利が消滅すると、法律で「取得期限」が定められていますが、特別休暇もそれに当てはまるのでしょうか。
結婚式は挙げたが新婚旅行には来年行く予定なので、その時に使いたい、等の社員の声を聞きます。あまり離れてしまうと管理も大変なので、例えば6ヶ月以内とか有効期間を定めてしまってもかまわないのでしょうか。
また、繁忙期に長く休まれると困るので、利用目的によって与える日数を制限することは可能でしょうか?
よろしくお願いします。
A.特別休暇は法定年休とは異なり、会社が取得期限や利用目的を決めることができます。
特別休暇について定めた法律はなく、当然、労働基準法第115条の時効も適用されません。
就業規則等に定めることで、会社の事情に合わせて、取得期限を3年でも3ヵ月でも自由に設定することができます。また利用目的に応じて、取得の要件や与える日数を限定することもできます。
●休暇の法的な区分は?
【法定休暇】・・・法律で付与義務が定められている休暇
年次有給休暇・産前産後休暇・生理休暇(労働基準法)、看護休暇(育児介護休業法)、
通院休暇(男女雇用機会均等法・母子保健法)
【会社休暇(特別休暇)】・・・就業規則・労働協約に定めることで成立する、法定休暇以外の休暇
慶弔休暇・病気休暇・リフレッシュ休暇(勤続休暇)・会社有給休暇(上乗せ年休) など
年次有給休暇・産前産後休暇・生理休暇(労働基準法)、看護休暇(育児介護休業法)、
通院休暇(男女雇用機会均等法・母子保健法)
【会社休暇(特別休暇)】・・・就業規則・労働協約に定めることで成立する、法定休暇以外の休暇
慶弔休暇・病気休暇・リフレッシュ休暇(勤続休暇)・会社有給休暇(上乗せ年休) など
●法的効力の違いは?
法定休暇の代表格である「年次有給休暇」と「特別休暇」とは法的な効力に大きな違いがあります。
そのため、おのずと運用方法も違ってきます。注意すべき8つのポイントをチェックします。
①自由にいつでも取得できるか?
「法定年次」・・・従業員の希望する時季に与えなければならない(労使協定での計画休暇日数を除く)。
「会社特別」・・・請求の時季・請求の手続など、取得に制限を設けても良い。
②取得について会社の承認が必要か?
「法定年次」・・・従業員が希望日を特定して会社に通告すれば年休が成立する。法律上は会社側の承認を必要としない(承認が望ましいとされている)。なお、会社側には時季変更権があります。
「会社特別」・・・会社側の承認によってはじめて休暇が成立する、との定めも有効。
③休暇の目的を申し出なければならないか?
「法定年次」・・・年休をどう利用するかは従業員の自由であり、強制的に目的の申出を求める社内規定は違法であり無効。(ただし、任意で目的申出を求めるのであれば可。)
「会社特別」・・・利用目的の申し出を要する旨の定めも有効。また利用目的によって、取得の要件や与える日数を変えて定めることも有効。
④「2日前までに所属長に申し出ること」との手続制限は適法か?
「法定年次」・・・申し出てもらいたい、との訓示的なものは差し支えないが、手続を守らないと休暇は一切認めない、との取り扱いは違法。ただし当日以降の申出(事後振替)についての制限は適法。
「会社特別」・・・取得手続を定めて、その手続によらない休暇は認めない旨の制限も適法。
⑤単に「忙しいから他の日にしてほしい」との理由で取得拒否ができるか?
「法定年次」・・・事業の正常な運営を妨げるという客観的な理由でなく、単なる繁忙を理由とする拒否は違法。ただし従業員に取得日変更を申し込むことは適法。(従業員がこれに応じるか否かは、法律上は自由。)
「会社特別」・・・合理的理由のある場合だけでなく、就業規則で明確にその旨を定めて与える条件としている場合であれば、単に忙しいからとの業務上の理由で拒否しても適法。
⑥遅刻・早退への振替など1日以下の分割はできるか?
「法定年次」・・・法定休暇は1労働日を単位とするので、従業員から請求があっても、半日単位で付与する義務はない。ただし、半日単位での取得を認めても違法ではない。
「会社特別」・・・時間単位・半日単位の分割付与など自由にその単位を定めることができる。
⑦年度内に取得できなかった休暇を買上げてもよいか?
「法定年次」・・・2年間の時効期間があり、この期間中の買上げは違法につき無効。ただし、2年間経過後の時効消滅分の買上げは適法。
「会社特別」・・・未取得の残休暇分の買上げも適法。(ただし好ましくはない。)
⑧有効期間を1年として、年度内に取得しないと繰越を認めず消滅させてもよいか?
「法定年次」・・・2年間の消滅時効(労基法第115条)が認められているため、繰越制限は違法。
「会社特別」・・当年度内に取得しなかった休暇は繰り越しを認めず消滅する、との定めも有効。
そのため、おのずと運用方法も違ってきます。注意すべき8つのポイントをチェックします。
①自由にいつでも取得できるか?
「法定年次」・・・従業員の希望する時季に与えなければならない(労使協定での計画休暇日数を除く)。
「会社特別」・・・請求の時季・請求の手続など、取得に制限を設けても良い。
②取得について会社の承認が必要か?
「法定年次」・・・従業員が希望日を特定して会社に通告すれば年休が成立する。法律上は会社側の承認を必要としない(承認が望ましいとされている)。なお、会社側には時季変更権があります。
「会社特別」・・・会社側の承認によってはじめて休暇が成立する、との定めも有効。
③休暇の目的を申し出なければならないか?
「法定年次」・・・年休をどう利用するかは従業員の自由であり、強制的に目的の申出を求める社内規定は違法であり無効。(ただし、任意で目的申出を求めるのであれば可。)
「会社特別」・・・利用目的の申し出を要する旨の定めも有効。また利用目的によって、取得の要件や与える日数を変えて定めることも有効。
④「2日前までに所属長に申し出ること」との手続制限は適法か?
「法定年次」・・・申し出てもらいたい、との訓示的なものは差し支えないが、手続を守らないと休暇は一切認めない、との取り扱いは違法。ただし当日以降の申出(事後振替)についての制限は適法。
「会社特別」・・・取得手続を定めて、その手続によらない休暇は認めない旨の制限も適法。
⑤単に「忙しいから他の日にしてほしい」との理由で取得拒否ができるか?
「法定年次」・・・事業の正常な運営を妨げるという客観的な理由でなく、単なる繁忙を理由とする拒否は違法。ただし従業員に取得日変更を申し込むことは適法。(従業員がこれに応じるか否かは、法律上は自由。)
「会社特別」・・・合理的理由のある場合だけでなく、就業規則で明確にその旨を定めて与える条件としている場合であれば、単に忙しいからとの業務上の理由で拒否しても適法。
⑥遅刻・早退への振替など1日以下の分割はできるか?
「法定年次」・・・法定休暇は1労働日を単位とするので、従業員から請求があっても、半日単位で付与する義務はない。ただし、半日単位での取得を認めても違法ではない。
「会社特別」・・・時間単位・半日単位の分割付与など自由にその単位を定めることができる。
⑦年度内に取得できなかった休暇を買上げてもよいか?
「法定年次」・・・2年間の時効期間があり、この期間中の買上げは違法につき無効。ただし、2年間経過後の時効消滅分の買上げは適法。
「会社特別」・・・未取得の残休暇分の買上げも適法。(ただし好ましくはない。)
⑧有効期間を1年として、年度内に取得しないと繰越を認めず消滅させてもよいか?
「法定年次」・・・2年間の消滅時効(労基法第115条)が認められているため、繰越制限は違法。
「会社特別」・・当年度内に取得しなかった休暇は繰り越しを認めず消滅する、との定めも有効。
●特別休暇は有給か?無給か?
有給にすべきです。無給では特別休暇を設ける意味がありません。
特別休暇が無給なら、従業員は有給の年次有給休暇を取得するだけのことです。
●法定の年休すら、ほとんど取得できていない場合、特別休暇を設ける意味があるか?
特別休暇を設けなくても、法定の年次有給休暇を取得させれば良いのでは?と当方は考えます。
が、こればかりは会社の方針による、としか申し上げられません。
それでも特別休暇を設けるのであれば、「失効年休積立制度」がおすすめです。法定年休は、権利発生後2年間に取得しないと消滅します。この消滅分を積立て、後日一定の事由が生じた場合に利用させるのが、この制度です。
が、こればかりは会社の方針による、としか申し上げられません。
それでも特別休暇を設けるのであれば、「失効年休積立制度」がおすすめです。法定年休は、権利発生後2年間に取得しないと消滅します。この消滅分を積立て、後日一定の事由が生じた場合に利用させるのが、この制度です。
(補足)積立有給休暇の設計の注意点3つ
①[使用目的を限定する]
私傷病、家族介護、育児、リフレッシュなど、具体的に使用目的を定める。
(連続○日以上の場合に適用するか明記)
(使用目的に応じて、使用できる日数を限定する又は限定しないことを明記)
(介護・育児などは法定休暇を超える日数に適用することを明記)
②[年間積立日数に上限を設ける]
積立できる日数に上限を設ける
(例:失効年休のうち、積立日数は上限10日とする)
③[有効期限を設ける]
取得を促すため、有効期限を設ける
(例:積立休暇の有効期限は付与日から1年間とし、年度内に取得しなかった積立休暇は消滅する)
※有効期限を設けないのであれば、[総積立日数に上限を設ける]
無制限に積立を認めるとかえって取得率が下がるため、必ず上限を設ける
(例:総積立日数は上限60日とする)
私傷病、家族介護、育児、リフレッシュなど、具体的に使用目的を定める。
(連続○日以上の場合に適用するか明記)
(使用目的に応じて、使用できる日数を限定する又は限定しないことを明記)
(介護・育児などは法定休暇を超える日数に適用することを明記)
②[年間積立日数に上限を設ける]
積立できる日数に上限を設ける
(例:失効年休のうち、積立日数は上限10日とする)
③[有効期限を設ける]
取得を促すため、有効期限を設ける
(例:積立休暇の有効期限は付与日から1年間とし、年度内に取得しなかった積立休暇は消滅する)
※有効期限を設けないのであれば、[総積立日数に上限を設ける]
無制限に積立を認めるとかえって取得率が下がるため、必ず上限を設ける
(例:総積立日数は上限60日とする)