●アンチ成果主義結実/岐阜の「未来工業」(11月11日 朝日)
 
―社是は「なぜ、なぜ、なぜ」―
 
「上場企業では日本一休みが多い」と言われる岐阜県の電気設備資材メーカー「未来工業 (http://www.mirai.co.jp/index.html)」(名証2部)。定年は70歳、ノルマもないのに好業績。ユニークな取り組みでも知られ、売上高が約250億円の企業に、全国からの視察が絶えません。はやりの成果主義に背を向けた型破りな経営の原点には、創業者らが若く日に志した劇団運営の手法がありました。

岐阜県大垣市の隣町にある本社の廊下は昼間でも薄暗い。「暗くても支障はない」と、普段は電灯を消しているからだ。「印刷代がもったいない」と食堂の食券もなくして自己申告にかえた。65年に創業した山田昭男相談役は「日本一の倹約経営者」と自称する。

そんな未来工業は労働時間の短さでも知られている。年間休日は約140日。今度の年末年始には19連休を予定する。勤務時間は朝8時半から午後4時45分までで、昼休みは1時間。残業は原則的に禁止。残って仕事をしている社員には、山田さんが「早く帰れ。電気代を徴収するぞ」と声をかける。

育児休業も昨年、社員の要望をふまえて2年から3年に延長した。それでも給与は岐阜県庁とほぼ同額。どれもこれも、社員のやる気を引き出すためだ。
 
「給与を上げるのが一番だが、それには限度があるから労働時間を短縮する。社員の休みが多くてつぶれた企業はない」と山田さん。「働かなくてもその分ペナルティーを受ければいいんだろう、という言い訳を与えることになる」とノルマ制度も導入しない。給与は年功序列で、はやりの成果主義とは対極の路線を進む。

そんな「楽」をしながらも、収益力は高い。06年3月期の売上高は247億円で経常利益は32億9千万円。

中小企業経営に詳しい坂本光司・静岡文化芸術大教授は「数々の新製品を生み出す開発力が抜群で、売上高に対する経常利益率は同業他社の倍以上」と分析する。松下電工などの大企業が「ライバル」と位置づけるほどという。

有名なのは国内で8割以上のシェアを持つスイッチボックス。壁に付ける電灯などのスイッチの裏側に埋め込むため、上に壁紙が張られると位置がわからなくなってしまう。そこで上下にアルミテープを張り、金属探知機で探し当てる仕組みを開発した。手のひらほどの箱に約10もの特許、実用新案が詰っている。

付加価値にこだわり、これまで発明した新商品は1万8千種類以上。大手問屋を通さず、工業業者と直接取引きをし、社員が業者との対話からアイディアを見つける。

社内の各所には「常に考える。なぜ、なぜ、なぜ」という社是が掲げられている。社内の提案制度では、上司の悪口と給料への不満以外なら、提案さえすれば「参加賞」として500円、最高報酬は3万円。年間9千件もの提案が集まる。

―現場重視 原点は演劇―

ユニークな経営の原点は、演劇にある。未来工業は、山田さんや清水昭八会長ら「未来座」という劇団の仲間が65年、「親のすねかじりを続けられない」と、劇団をやめて起業した。

山田さんは「演劇は、演じる側が感動できなければ、お客も喜ばない。企業も同じ。社員が喜んで働くよう仕事をしやすい仕組みを整え、幕が開けば社員という役者に任せる。任せなければ役者は育たない」と話す。

「現場を一番よく知る者が判断すればいい。無知な上司に相談するのは無駄」と、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」も禁止するほど現場重視は徹底している。

「高価格でもお客に納得してもらうことが大切」という考えも、演劇と商売に共通するという。安ければ売れるという先入観を捨て、価格競争と距離を保つ。

そんな未来工業はメセナ(企業の文化の支援活動)でも知られる。75年に「ミライコミュニティシアター」を設立、演劇やロシヤのバレエ、中国の京劇などの公演を毎回、数千万円かけて企画し、地域の人をのべ数万人、無料で招待してきた。

阪神大震災が起きた95年には、得意先の債券を計1億6千万円放棄し、電気工業者には復旧資材を無償提供した。

未来工業の会社案内にはこう書いてある。「演劇集団は、企業になった。企業は大所帯になったが人々をいつも感動させることを忘れない」

―やる気呼ぶ経営見事―

「経営改革の切り札」として成果主義を導入した多くの企業で、社員の士気低下につながった。一方、「ユートピア経営」と評される未来工業をそっくりまねて失敗した経営者もいる。

ともに、制度を支える明確な思想が社員に浸透しなかったのだろう。やりすぎ、と思えるほど節約を積み重ねるが、メセナや被災先への支援には大盤振る舞い――そんな未来工業にはファンが多く、社員も誇りに思っているという。社員のやる気を徹底的に引き出そうとする姿勢こそ、学ぶべきなのだろう。

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関連記事

●やる気引き出す“反成果主義” (7月5日 読売)

年間休日140日、70歳定年、残業禁止など独自の理論で「社員のやる気」を引き出す未来工業(本社・岐阜県輪之内町)。そのユニークな制度を打ち出してきたアイデアマンが創業者の一人、相談役の山田昭男さん(75)だ。

同社は、電気設備資材などを手がける中堅メーカー。今年で創業40年を迎えた。山田さんはこれまで、「会社がもうかるためには、社員のやる気を起こさせることが大切」と、従業員を優遇する様々な制度を整えてきた。年間休日140日は、山田さんによれば「日本一多い」という。正月休みは20日間、8月の盆休みは10日間ある。就業時間は朝8時30分~午後4時45分。休憩1時間を除くと7時間15分と、労働基準法に定められた8時間に比べて短い。年間の総労働時間1600時間。残業は一切禁止だ。

今年2月には、創業40周年を記念し、オーストラリアへ社員旅行。かかった費用1億5000万円は、すべて会社持ちだ。社員が旅行委員となり、「バンジージャンプ」「ホームステイ」「エステ」など、40周年にちなんだ40のネタを作成。社員はクジをひいて様々な体験に挑戦した。

5年前には、当日にならないと行き先がわからない「ミステリー社員旅行」を開催。あみだクジで、パリ、ハワイ、フロリダなど海外10か所へ飛び立つ、ユニークな試みを行った。

「働くうえでいい条件を作れば、社員が頑張り、会社がもうかる。こうした様々な取り組みは、言ってみれば『アメ』作りで、『ムチ』は決して使ってはいけません」

従業員800人のうち300人が女性という同社では、一昨年から産休の仕組みも整えた。出産後、最大3年間の育児休暇を与える。2人目以降も同様に3年間。ただ、3年取った社員はまだおらず、「育休を取っても1週間で戻ってきてしまう」のが現状という。

今年から定年を延長した。従業員は、71歳の誕生日の前日まで働くことができ、その間、自由に定年時期を設定できる。60歳以降も給料は下がらず、長くいればいるほど退職金も上がる仕組みだ。昨今の成果主義の逆をいく「やる気主義」を貫いている。

「評価の基準もあいまいなのに、成果主義などを入れても社員のやる気は上がりません。うちの会社は、評価をしない『年功序列』。そのために、休暇制度をはじめ様々なインセンティブ(動機付け)をつけているのです」

従業員は必ず正社員にし、特別な場合を除き、パート、アルバイトは認めていない。「会社は、コストを下げろと言われると真っ先に人件費から削るのが常。その結果、派遣社員やパートが生まれた。けれど、人材は会社の大切な財産。人件費の前にまだ下げるべきものはある」と言い切る。

創業から8年間は毎年、倍増で売り上げを伸ばした。以後、現在まで業績を下げることなく、維持している。

6年前、脳こうそくをわずらったものの、現在は年間100日のペースで中小企業の社長を対象に経営論を語り歩く。「後進が1人前になるための手助けをすることが残りの人生の目的」と山田さん。まだまだ第一線で走り続ける。

●未来工業、社員旅行に「40の指令」(1月31日 日経産業)

海外旅行で「特命」を全うせよ!電設資材大手、未来の子会社、未来工業(岐阜県輪之内町、滝川克弘社長)は創立40周年を記念して実施する2月1~5日のオーストラリア旅行で、40種類の指令をこなす企画を実施する。社員にバンジージャンプ、農場体験、熱気球搭乗など様々な指令を出し、報告書と写真を提出させる。全社規模で実施することで、社員の結束や発想力を強めるという。

社員旅行には同社社員750人のうち510人が参加する。20歳代の若手社員らで構成する実行委員会が「文化系」「スポーツ系」「絶叫系」に大別した40の指令を作成した。社員は「何が当たっても必ず実行します」という誓約書にサインし、くじ引きで指令書を受け取った。

●休日年140日残業せず成果 他社製品と少しだけ差別化図る
 /未来工業取締役相談役 山田昭男さん(04年6月9日 読売)


読売新聞 中部経済 グローカル第42回
⇒ http://chubu.yomiuri.co.jp/news_k/glocal/glocal_040609.htm

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