給与は全額差し押さえられる?(06年12月号)

給与は全額差し押さえられる?

◆差し押さえ命令の出た社員への支払いは?

会社員の借金返済が滞り、裁判所から給与の差し押さえ命令が出てしまいました。しかし、給与は雇用主が本人に直接支払うべきものだと法律で定められています。

命令の法的意味は重そうですが、全額を押さえられたりするケースはあるのでしょうか。

◆賃金支払いの5原則

労働基準法では、使用者に対して立場が弱くなりかねない労働者の生活を守るため、「賃金支払いの5原則」(直接払い・通貨払い・全額払い・毎月払い・一定期日払い)が定められています。

◆裁判所の差し押さえ命令には従うべき?

裁判所が差し押さえを命じたということは、法的に貸主の主張が通ったということです。この場合、その会社員は差し押さえ命令に応じなければなりません。

直接払いの原則に反するようにも見えますが、問題はありません。このようなケースは借金返済が滞った場合だけでなく、国や地方への税金の滞納なども同様の扱いとなります。

◆4分の3は原則本人に

給与を全額差し押さえられれば、その会社員は生活ができません。このため、差し押さえ金額は原則として賃金の4分の1となっています。雇用主は4分の3を本人に、4分の1を貸主や国・地方に支払うこととなります。この場合、債務者保護の観点から、賃金から所得税、地方税、社会保険料などを控除した手取り賃金をベースに考えられます。

全額差し押さえを禁じているのが生活保護の観点であるため、標準的な世帯所得を超える高い給料をもらう人からは、政令で定める額を超える部分の全額を差し押さえに回せることとなります。

◆「直接払いの原則」の効力

「直接払いの原則」は、この差し押さえ命令以外ではかなり強い効力を持ちます。例えば複数の社員から委任を受けた者にまとめて支払い、後に分配してもらうことは許されませんし、代理人などへの賃金支払いも「直接」の原則から反するとされています。

もし、社員が賃金を第三者に譲渡することを当事者間で合意していても、雇用主はとりあえず本人に支給するべきです。