●労災補償共済:遺族に4000万円渡らず 自社運転資金に(12月23日 毎日)
 
厚生労働、国土交通両省所管の公益法人「建設業福祉共済団」(東京都港区)が、労災事故の被害者補償のため行っている共済事業(法定外労災補償)を巡り、沖縄県の建設会社が受領した共済金4000万円を、事故で死亡した男性(当時28歳)の遺族に渡さず、自社の運転資金に充てていたことが分かった。遺族は引き渡しを求めて民事裁判を起こしたが、共済規約に被害者側への交付を義務づける規定がないことなどから請求を棄却された。両省は制度に問題がなかったか調査に乗り出した。

共済団は70年に事業を開始。加入業者が掛け金を支払い、現場で働く自社や下請け、孫請け会社の従業員らがけがをしたり死亡した場合、会社に共済金を支払う。04年度は3万1382社が加入し48億円余の掛け金収入を得て164件で約35億円の共済金を支払った。

旧建設省は、通常の公的労災では補償が不十分として、こうした法定外労災補償への加入を促進し、94年以降は公共工事の入札参加資格審査で加入業者が加点評価されるようになった。工事契約締結時に加入証明書の提出を義務づけている自治体も多い。

遺族が那覇地裁沖縄支部に起こした訴訟の判決(10月)によると、共済加入の建設会社が受注した沖縄市内の公共工事現場で働いていた孫請け会社の男性は、02年12月24日に作業事故で死亡。建設会社は受領した共済金全額を遺族に渡さず運転資金に使った。共済団は遺族へ引き渡すかどうかを会社に確認せず、両省もこうした事態を防ぐ指導をしていなかった。

判決は同社の対応を「制度の趣旨を逸脱している」と批判したが、被害者側への交付義務付け規定がないことから「遺族に共済金を受領する法的権利は認められない」と結論付けた。遺族側は控訴している。

共済団は「残念だが極めて例外的なケース。従来、共済金は遺族に支払うよう加入業者に要請してきた。今後も理解を得るよう一層の努力を続ける」と説明した。両省は共済団から事情を聴くなど調査を始め「指導が必要かどうかを含めて検討中」としている。遺族側代理人の新垣勉弁護士は「行政が共済の運営をチェックしていれば、こうした事態は防げたはずだ」と指摘。会社の代理人は「訴訟中なのでコメントできない」と話した。【木戸哲】

◇解説◇ 制度の不備浮き彫り 那覇地裁支部判決

「建設業福祉共済団」の共済事業を巡り、規約に被害者側への共済金引き渡し義務が明記されていないことを理由に、被害者遺族敗訴とした那覇地裁沖縄支部判決は、制度の不備を浮き彫りにした。現状では同種事案再発を防げない可能性が高いことを示している。

商法は保険金殺人などの犯罪防止のため「他人の命に保険を掛ける場合は本人の同意が必要」と定め、同意のない契約は法的に無効だ。企業が従業員に掛けた生命保険金を遺族に渡さなかった「団体生命保険」では、批判を受け本人への同意確認が徹底され、保険金も原則として遺族に交付されるようになった。

一方で、公益法人に商法は直接適用されず、共済団も企業に従業員の同意を必要としていない。だが、判決は共済団の事業にも商法が類推適用されると述べ「契約は無効の可能性が高い」と指摘。「同意は不要」との運用が認められるためには、共済金が確実に被害者側に支払われる仕組みが必要だ。所管する厚生労働、国土交通両省は、万全な乱用防止策を講じるよう共済団に求めるべきだ。【木戸哲】

◇多発の可能性も◇ 本間照光・青山学院大教授(保険論)の話

この共済は、健康保険や公的年金に類似する「政策保険」で、厳格な運用が求められる。アルバイトも含めて全労働者を補償するが、同意が不要なため本人は加入を知らないのが一般的で、同様のケースが水面下で多発している可能性がある。判決は制度の不備による不利益を労働者に転嫁している。政府の責任も重大で、規約に「企業は共済金の受取人になれない」と明記させるべきだ。遺族に保険金を渡さず問題になった「団体生命保険」と同じ構図で、保険金殺人のような犯罪への悪用も懸念される。

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