人事労務の時事解説(2007年4月号)

人事労務の時事解説 2007年4月号


営業車の駐車違反に関する会社の責任

◆駐車料金の支給がない場合、反則金の支払いは?

社員が営業車でのセールス中に駐車違反で反則金をとられてしまいました。会社は経費節減と称して駐車料金を支給しないため、やむなく路上駐車していました。「反則金は自分で払え」と会社は主張していますが、会社が負担しなくてもよいのでしょうか?

◆改正道路交通法による駐車違反取り締まり強化の柱

1.放置車両の取り締まり事務の民間委託を開始
2.車両の使用者責任を強化。放置違反金の納付命令を可能に
3.放置違反金を納付しなければ、滞納処分も可能に
4.放置違反金を納付しなければ車検が受けられず

道路交通法改正により、昨年6月から駐車違反取り締まりの民間委託が始まり、同時に短時間の車両放置も摘発対象となりました。これにより、短時間駐車している営業車の違反が取り締まられるケースも増加しています。

◆会社負担の放置違反金

違反を摘発しても、運転者が出頭せず、車両である会社も「誰が運転していたかわからない」などと釈明する例が増えているようですます。これでは「逃げ得」という不公平感を助長してしまいます。そこで、運転者が出頭しない場合、使用者に放置違反金の支払いを科すことになったのです。会社に科される放置違反金は反則金と同額です。会社が支払いを拒めば当該車両の車検が受けられなくなり、営業活動への影響も出てきます。

会社は、民法715条により、社員が不法行為をしないよう指導する義務と、不法行為があった場合に代わりに責任を負うこととされています。違反駐車の場合、本来は運転者に支払い義務がありますが、会社が駐車料金を支給しないような場合には、運転者の不法駐車を助長していたともいえそうです。
 
◆今回のケースでは

今回の例では、会社が反則金を負担し、その上で社員が違法駐車をしないよう駐車場を確保してあげることや、駐車料金を支給する仕組みを作ることも求められそうです。

ただ、会社は法令順守の徹底を訴えているのに、社員が駐車違反を繰り返しているような場合は事情が異なります。本人が違反金を支払わない場合や、注意をしても改善しない場合は、懲戒処分や減給処分を受けても、社員は対抗できない可能性があります。

ポイント

1.駐車違反で運転者が出頭しなければ、会社に支払い責任の可能性がある
2.会社には、社員が違反をしないルールづくりが求められる


見直される65歳以上の介護保険料

◆急激な負担増を抑制するには

厚生労働省は、65歳以上の介護保険料の体系を見直す検討に入ったそうです。保険料は、現在、加入世帯の課税所得によって分かれていますが、こうした「階段型」の設定では加入者の所得が少し増えただけで保険料の段階が上がり、負担が大きく増えるケースがあります。

このため、所得に応じて緩やかに保険料が増減する体系に改めるよう検討するとのことです。ただ、高齢化に伴い介護に必要な保険料の総額は今後も増えることが確実で、負担を緩和するには無駄な給付をなくすなど、介護費そのものの抑制が急務となってきます。

◆「階段型」から「斜面型に」

現行の保険料は、本人が住民税非課税で家族に納税者がいる人を基準とし、課税所得の状況によって段階的に負担を増減しています。例えば、世帯全員が非課税なら基準より25%、生活保護世帯なら50%も安くなります。逆に、本人が納税者なら25%以上高くなり、基準額は市町村ごとに異なります。

厚生労働省は、保険料の体系を現行の「階段式」から、加入者の所得の変化に応じて保険料も緩やかに増減する「斜面型」に近い形に切り替える案を軸に検討しています。体系を改めても、加入者から集める保険料の総額は同額を維持したい考えですが、ある時点で負担が急激に増えるケースはなくなると考えられます。

保険料体系の見通しの背景にあるのが、高齢化に伴う介護費の増加です。介護保険料は見直しのたびに上昇しています。加入者の所得段階が上がった場合の負担額が増加し、急激な負担増になるケースが多くなっています。さらに、税制改正(老年者控除の廃止など)の影響で2006年度は収入が前年度と変わらなくても、自動的に課税対象となり保険料負担が重くなった世帯も多くなっています。

◆無駄な給付抑制が不可欠

厚生労働省は、高齢化による今後の介護保険料負担の増加を抑えるため、制度を運営する市町村に対し、介護給付の無駄をなくすための適正化策の徹底を要請しました。市町村の約7割は、ケアマネジャーが作成した介護計画を点検していないなど、過剰請求などに対する監視が甘いといわれています。

介護保険料は、不正請求が毎年数十億円規模に達しています。厚生労働省は、2004年から適正化策を実施するよう市町村に求めてきましたが、実際には人員不足などを理由にまったく実施していない市町村もあります。このため、全国の市町村に対し、実施を徹底するよう強く求め始めたのです。

制度の支え手を増やすため、介護保険料を負担する人を、現在の40歳以上から、20歳または30歳以上に広げる案も検討されていますが、実現するかは不透明です。保険料の負担の増加を抑えるためには、サービスを効率的に提供し、無駄な給付を抑制することが不可欠といえるでしょう。


介護休業はどのぐらい取得されている?

◆認知度低く取得者はわずか1.5%

働きながら家族の介護をしている人のうち、介護休業の取得経験者がわずか1.5%にとどまっていることが、労働政策研究・研修機構の調査でわかりました。介護休業は育児休業よりも認知度が低く、制度自体の内容が理解しづらいことが取得率の低さにつながっているようです。

◆介護休業制度の概要

1.介護休業対象者は、要介護状態にある対象家族を介護する男女労働者です。
2.日々雇い入れられる者は除かれます。
3.期間を定めて雇用される者は、申出時点において、次のいずれにも該当すれば介護休業をすることができます。
・同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること。
・介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれること(93日を経過する日から1年を経過する日までの間に、労働契約期間が満了し、かつ、労働契約の更新がないことが明らかである者を除く)。
4.労使協定で定められた一定の条件に該当する対象除外労働者は介護休業をすることはできません。


◆介護休業をしなかった理由(複数回答)

・家族の助け、外部サービスで介護に対処できた…78%
・休日、休暇制度などを活用して対処できた…69.2%
・職場に介護休業制度がなかった…57.5%
・職場に介護のことを相談する部署がなかった…49.6%
・職場で取得した人がいなかったので情報がなかった…38.6%
・休業を取得すると収入が減ると思った…29.3%
・介護休業制度の内容が使いづらかった…16.4%

◆4人に1人が離職や転職

家族の介護を始めた当時働いていた4人に1人が、介護をきっかけに離職や転職を経験しているそうです。職場に介護休業制度や介護について相談する部署がないため、休みを取れないケースが目立ちます。

介護休業は、育児・介護休業法で通算93日を上限に複数回の取得が可能とされており、会社は介護休業制度がなくても原則的に休業の申出を拒むことはできません。しかし、同法に基づいて制度を設けている企業はまだまだ少なく、「休みを取りづらい」との社員の声が多い状況となっています。


口頭による採用内定に効力はあるか?

◆口頭で「採用する」と言った場合

A社で働く社員が転職先を探してB社の面接を受けたところ、その場で採用担当者から口頭で「採用する。2カ月後には来てほしい」と言われ、A社にすぐ退職届を出しました。しかし、その後B社が「採用するつもりはない」と態度を変えました。社員が内定取り消しとして損害賠償を求めることは可能でしょうか。

◆内定は両者の合意により成立

法律上、内定は、「始期付解約権留保付労働契約」として一定の拘束力を持ちます。一般の解雇よりも基準は緩いですが、合理的な理由なしに契約を取り消すことはできません。

では、どのような状態なら「内定成立」といえるのかですが、一般的に、雇用する側と雇用される側の意思が合致し、両者の合意があったとみなされた時点で内定は成立するとされています。重要なのは、この「合意の有無」であり、口頭での約束か文書かは判断基準ではないとの考えが一般的です。

ただ、口頭での採用の意思表明は、裁判時の証明が難しいという難点があります。その場合は、身体検査の実施や就業規則の交付などが状況証拠になるといえます。

◆新卒採用と中途採用で違いは?

また、新卒採用と中途採用では合意の判断に若干違いがあります。新卒の場合、試験や面接を経て夏頃までにいったん採用が決まっても、多くの場合、内定通知書の受け渡しや誓約書への署名などの手続きは10月ごろに行われます。

新卒者は何社もかけもちで就職活動を行い、いくつか内定をもらった中から進路を選ぶことが前提のため、誓約書への署名などの前段階で示される企業側の採用の意思表示は「内々定」として一連の手続き後の内定よりは法的な拘束力が緩いといえます。

一方、中途採用の場合は、通常、何社もかけもちで内定を取ることは考えにくいので、企業から採用の意向を示された時点で両者の合意が形成されたとみなされ、内定が成立するといえます。企業の人事権者が、「採用します」、「○月○日から来てください」などと伝えた場合は口頭でも合意が成立したといえるでしょう。

ただ、紹介者などその企業の人事権者以外から伝えられた採用の意向は、内定とは認められません。また、賃金などの条件が話題に上がっていた場合に、それが折り合わないままでは合意があったとは言い切れないでしょう。


出張先で飲酒中のケガは労災の対象になる?

◆出張先の反省会で酒を飲み転倒!

泊まりがけで出張した社員が、夜、上司と反省会と称して飲酒していたところ、酔って転んでケガをしてしまいした。お酒を飲んでいたとはいえ、出張中の行為であるため、労災と認められるのでしょうか。

◆労災認定のポイント

労働者が負傷や死亡した場合、労災になるか否かはまず労働基準監督署長などが認定します。認定されず、異議があれば処分取り消しを求める行政訴訟とすることも可能です。

労災保険法などの解釈によると、労災認定の可否は、「業務遂行性」(労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態かどうか)、「業務起因性」(業務と傷病との間に相当因果関係が存在するかどうか)の観点から判断されます。

◆出張中は通常よりも業務性の範囲が広い

飲酒時の労災が認められるかは、どの程度「業務遂行性」があるかで異なります。通常の就業日であれば、飲酒が業務性を帯びるのは、会社が費用を負担した接待や、出席が義務付けられた会合などに限られます。それ以外は上司との飲酒でも業務性が認められる可能性はほとんどないといえます。

しかし、出張中は仕事後の飲酒でも通常業務より業務性が認められるケースが広がります。出張では全般的に事業主の支配化にあると考えられ、食事など現地で必要な行為も同様です。宿舎内での飲酒や、飲食施設がない宿舎から近所へ出かけて飲酒した場合も業務中と認められる可能性は高く、上司が同行しているかどうかは問われません。

◆裁判例では

1993年の福岡高裁判決では、出張中に宿泊施設内で同僚と飲酒し酔って階段で足を踏み外し、頭部を強打して死亡した会社員の事例を労災と認定しました。「宿泊施設での飲酒は慰労と懇親の趣旨であり、出張に伴う行為」と判断されました。

一方で、出張時でも事故原因が業務と無関係なら労災と認められないケースもあります。
1999年の東京地裁判決は、出張先での送別会で泥酔し一度宿舎に戻った後、近くの川で、全裸で水死しているのを発見された会社員の事例で、「事故は自らの意思で外出した結果で、業務起因性がなく労災とはいえない」と判断しました。

出張中は、通常より広く業務性が認められ、宿舎で普通に飲んでのケガであれば原則として労災と認められる可能性も高いですが、仕事から逸脱した状態では労災と認められない可能性が高いといえます。


国民年金のカード払いが可能になる

◆公金のカード払いは初の試み

厚生労働省は、2008年初めをめどに、クレジットカードで国民年金の保険料を払えるようにする方針です。カードで払えばポイントをためることができるなど、若者を中心に低迷する納付率の向上に役立つとみられ、今通常国会に提出する国民年金法改正案に盛り込まれるようです。

カード決済だとカード会社がいったん保険料を立て替えるので、国からみれば納付者の口座の残高が足りなくても、回収リスクを負わずに済むというメリットもあります。

公金のカード払いは初めての試みであり、今後は地方税や水道料金などのカード払いにも広がる可能性があります。

◆納付手段を増やして納付率改善へ

2005年度の国民年金保険料の納付率は67.1%で、対象者の3分の1が払っていません。政府は、2006年度については74.5%を目標に掲げていましたが、目標達成は難しい状況にあります。

厚生労働省は、納付率改善のため利便性の向上を目指し、2004年2月にコンビニエンスストアでの納付、2004年4月に携帯電話やパソコンを通じたインターネットでの納付を認めてきました。2005年度の利用状況はコンビニが589万件、インターネットは14万件でした。カード決済は納付手段を増やすための第三弾となります。

◆今後の普及が課題

厚生労働省は、集めた保険料の一部をカード会社への手数料支払いに充てます。2007年度は広報、システム開発など準備費を含め1億2,000万円の経費を見込んでいます。

これまで、公金のカード払いは、カード会社への手数料支払いという財政負担が障害で普及が進んでいませんでした。政府が2006年3月に作成した規制改革の3カ年計画では、国税のカード決済の検討を打ち出しましたが、国税庁は財政負担を理由に否定的です。自治体で始まったカード払いも、まだ神奈川県藤沢市の軽自動車税など一部にとどまっています。今後の普及が課題だといえます。


改正雇用保険法案のポイント

◆雇用保険法が改正されます!

雇用保険制度の安定的な運営を確保し、直面する諸課題に対応するための改正雇用保険法案が、今通常国会で審議され、平成19年4月(以下に掲げた項目については10月)から施行される予定です。

ここでは、改正案の主な内容をご紹介します。

◆被保険者資格・受給資格要件の一本化

短時間労働被保険者とそれ以外の被保険者の区分がなくなり、被保険者資格が一本化されます。

現行では、1週間の所定労働時間が20〜30時間の労働者は短時間労働被保険者という区分に該当し、失業給付(基本手当)を受給するための被保険者期間は12月(短時間労働被保険者以外の一般被保険者は6月)でしたが、受給資格要件は被保険者期間6月に一本化されます(ただし、自己都合等による離職の場合の被保険者期間は12月)。

◆育児休業給付制度の拡充等

休業前賃金の40%(休業期間中30%、職場復帰6カ月後に10%)から暫定的に50%(休業期間中30%、職場復帰6カ月後に20%)となります。

◆教育訓練給付の対象範囲の見直し

教育訓練給付の受給要件を、当分の間、初回のみ緩和(3年→1年)されます。

現行では、教育訓練給付を受給するためには被保険者期間が3年以上なければ支給を受けることができませんが、教育訓練給付金の支給を受けたことがない者に限り、1年以上あれば、教育訓練給付金の支給を受けることができるようになります。


多くの確定拠出年金が運用放棄されている!

◆手続きが面倒?

国民年金基金連合会(厚生労働省の外郭団体)の調べによると、確定拠出年金を転職先に持ち運ばず、運用を放棄している人の数が、今年1月末時点で、転職者全体の約6割に相当する7万4,600人いることがわかりました。雇用の流動化に合わせ年金も持ち運びしやすい仕組みになりましたが、一定の手続きが必要で、十分活用されていない現状が浮き彫りになりました。

厚生労働省は、転職者が自動的に年金を移せるよう、転職者の積立金を専門に運用するファンドをつくることなど、新たな制度の検討に入ったそうです。

◆転職後に一定の手続きが必要

確定拠出年金は、確定給付年金など他の企業年金とは異なり、企業を窓口にしますが、企業ではなく個人が金融機関と運用の契約を結びます。従来の企業年金は、転職すると年金制度が終わってしまい、積立金を精算する必要がありましたが、確定拠出年金は、転職先が導入していなくても、一定の手続きをすれば引き続き加入できます。

しかし、転職後半年以内に切り替えの手続きを行わないと、積立金は自動的に国民年金基金連合会に移されます。すると、運用は一時的にできなくなり、将来の受取額が減ってしまいます。放置している間は加入期間に算入されないため、支給開始年齢が本来の60歳から5年間遅れる可能性もあります。

◆生保の個人年金保険への加入が拡大

一方、民間の生命保険会社が扱う個人年金保険の契約規模が急拡大しているようです。業界全体の保有契約高は84兆5,000億円程度(2006年12月末)になった模様で、2006年度に入って4兆円ほど増加しました。年度ベースでみると、10年ぶりの高水準に達しています。

空洞化が進む公的年金制度への不信も背景にあり、老後に備えるマネーは「官」から「民」へと移っているようです。


整理解雇の際に必要な「4要件」とは?

◆整理解雇にも「解雇権濫用法理」が適用

企業の経営事情等により、労働者を解雇することを「整理解雇」といいます。現在、景気回復の兆しがみえ、大企業等の設備投資が増加し、リストラも一段落したといえますが、整理解雇は、決して終わった問題ではありません。

企業としては、解雇については非常に慎重な対応が必要となります。普通解雇と同様、整理解雇についても解雇権濫用の法理が適用され、解雇権の濫用になるときは、その整理解雇は無効になります。

整理解雇の場合、解雇権濫用になるか否かの基準として、以下の4つの要件が判例上確立されています。

(1)人員整理による解雇の必要性があること
(2)従業員の解雇を回避する努力をしたこと
(3)被解雇者の選定が合理的であること
(4)解雇手続が適法であること

◆整理解雇の4要件の内容

(1)人員整理による解雇の必要性があること
企業が倒産必至の状況にあること、経営危機から人員削減措置が要請されること、企業の合理的運営上の必要性があることなどが必要とされます。

(2)従業員の解雇を回避する努力をしたこと
労働時間の短縮、時間外労働の削減、新規採用の停止、役員報酬のカット、昇給・賞与の停止、希望退職者募集、一時帰休、配置転換・出向などの解雇回避努力が求められます。

(3)被解雇者の選定が合理的であること
選定は、客観的で合理的な基準に基づく必要があります。勤務成績、能力等の労働力評価、勤続年数等企業貢献度、労働者の再就職の可能性、解雇による経済的打撃の大小などといった基準をある程度設けて、個別に判断することになります。

(4)解雇手続が適法であること
労動組合または労働者に対して、人員削減の必要性とその内容(時期・規模・方法等)について納得を得るための説明を行い、誠意をもって協議すべき義務があります。

以上、4つの要件が必要であり、これらの要件の1つでも欠けるときは、解雇権の濫用として、当該整理解雇が無効とされます。


パート労働者に健康保険も適用か?

◆厚生年金と健康保険の両保険適用を検討

現在、パート労働者に対して厚生年金の適用を進める際に、健康保険制度への加入も同時に進めることが検討されています。

年金の場合は、保険料が増えれば加入者が将来受け取る年金が増額されるため、パート労働者からは比較的理解が得やすいといえますが、健康保険の場合、保険料が増えても医療サービスの内容や自己負担額には変わりはなく、負担が増えるだけなので、具体化に向けた議論はかなり難航する可能性がありそうです。

◆負担保険料は年額約55,000円

新たな保険料の負担を強いられるのは、サラリーマンの妻が多く、パート勤務で年間120万円稼いでいる場合、健康保険料の負担は年間55,000円程度になるとする試算結果を厚生労働省は出しています。厚生年金保険料と合わせると、給与から控除される金額が増額され、パート労働者にとっては収入減につながります。

また、厚生年金保険の適用条件を、現行の労働時間の週30時間以上から週20時間以上に広げる検討もなされており、労働時間そのものを減らすパート労働者が出てくる場合も考えられそうです。

◆保険料負担が減る世帯は

夫婦が2人ともパートやアルバイト等の非正社員で、国民健康保険に加入している場合は、健康保険加入により、保険料が減額になる場合があります。国民健康保険にはない制度を受けることができるようになる上に、1年間の保険料も、世帯で約33,000円減額になるとする試算が出ています。

◆健康保険加入で受けられるサービス

被扶養者としてサラリーマンの健康保険に加入している場合に比べると、いくつかの給付等のサービスが増えます。私傷病等で仕事を休業する場合には「傷病手当金」を申請することにより収入の約60%の休業補償を受けることができ、また、女性の場合は「出産育児一時金」に加えて「出産手当金」が、産前・産後休業の期間受け取れます。育児休業をしている期間には、保険料の免除もあり、いくつかメリットもあります。


定年年齢を引上げるともらえる奨励金

◆「定年引上げ等奨励金」とは

昨年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、多くの企業で再雇用制度等の導入が行われましたが、国はその先をみており、65歳以上、さらには70歳まで働ける制度の普及を進め、最終的にはいくつになっても働ける社会の実現を目指しているようです。

この政策を推進するため、平成19年度より「定年引上げ等奨励金」制度(平成19年度の予算が国会で成立後、政令の改正を根拠として施行、一部変更となる場合あり)が創設されることとなりました。

この奨励金は、以下の2種類で構成されています。

◆中小企業定年引上げ等奨励金

事業主(常用被保険者数300人以下)が就業規則等により定年引上げ等(65歳以上への定年引上げまたは定年の定めの廃止)を実施した際に、その経費として一定額を1回に限り支給します。

また、70歳以上への定年引上げまたは定年の定めの廃止を実施した場合には、1回に限り上乗せして支給されます。

<65歳以上への定年引上げまたは定年の定めの廃止>
(企業規模ごとの受給額)
1    〜9人:40万円
10  〜99人:60万円
100〜300人:80万円

<70歳以上への定年引上げまたは定年の定めの廃止(上乗せ額)>
(企業規模ごとの受給額)
1    〜9人:40万円
10  〜99人:60万円
100〜300人:80万円

◆雇用環境整備助成金

事業主(常用被保険者数300人以下)が、定年引上げ等を実施後1年以内に、55歳以上の常用被保険者に対して研修等を行う場合、その研修等に要した経費の2分の1を当該事業主に支給します。

支給対象となる研修等とは、以下の条件にいずれも該当することが必要です。

1.キャリア・カウンセリングや定年退職等に伴う意識改革など、事業主の雇用する常用被保険者の雇用機会の確保等、職業生活の充実に資するものであること
2.実施時間が合計で7時間以上(複数組み合わせ可能)であるもの
3.法令違反や反社会性を助長する内容等でないもの
4.計画について、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の理事長の認定を受けたものであること