月60時間を超える残業に「50%以上」の割増率(07年5月号)労基法改正案が一部修正のうえ衆院通過(08年11月)

60時間を超える残業に「50%以上」の割増率

◆労働基準法の改正案

厚生労働省は、長時間労働の削減を図るため、残業代割増率の引き上げについて、労働基準法改正案に「月60時間を超える残業に50%以上の割増率」という具体的な数値を盛り込みました。

改正案には残業代割増率引上げのほか、現在は原則として1日単位でしか取得することができない有給休暇を、年間5日分は1時間単位で取得できる新制度なども盛り込まれています。改正案が成立すれば、生活環境に合わせ、「両親の介護のために5時間のみの有給休暇を取得する」ことなども可能になります。

◆明文化で拘束力

改正案では、残業台割増率の枠組みとして、以下のように3段階方式となっています。
1.1カ月の残業時間が45時間以下だった社員に対しては最低25%
2.45時間超60時間以下の場合はそれより高い率を設定する(努力義務)
3.60時間を超える場合は労使協議に関係なく50%以上

80時間以上の残業は、過労死などの危険性が高まるとされていますが、現行制度では残業時間に関係なく最低25%以上の割増賃金を企業に求めています。

厚生労働省は当初、3段階方式という枠組みだけ改正法に明記し、具体的な割増率は労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)で議論して政省令で定める予定でしたが、法に明記することで拘束力を強め、制度が簡単に変わることを避けたいと考えているようです。

◆当面 中小企業は適用除外

厚生労働省の調べによると、1カ月の残業時間が80時間を超えるのは、働く人全体のうち0.2%程度だそうです。割増率の引上げにより企業のコスト意識を高め、残業を減らす効果を期待しています。しかし、企業側からは、「社員が残業代を増やすために、社員自ら残業を増やすケースが出てくる」との声もあがっており、かえって残業が増えるのではないかとの指摘もあります。

改正案は、雇用ルール改革の柱の1つです。一定の条件を満たす会社員を1日8時間の労働時間規制から除外する制度(日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)は労働組合などの反発が強く見送られました。

残業代割増率引上げは、原則として当面は社員数301人以上、資本金3億円超の大企業が対象です。施行から3年後には中小企業も対象とするかどうかを改めて検討するそうです。

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労基法改正案が一部修正のうえ衆院通過
 (08年11月18日 労働調査会

〜割賃率50%以上は60時間超の時間外労働が対象〜


昨年の通常国会に提出され、今臨時国会まで継続審議扱いとなっていた「労働基準法の一部を改正する法律案」が11月18日、法案の一部を修正して衆議院厚生労働委員会で可決、同日の同院本会議で同様に可決され、参議院へ送られた。

同改正法案は、平成19年3月13日に閣議決定され、同日、国会に提出された。昨年の通常国会では、同改正法案とともに提出された「労働契約法案」、「最低賃金法の一部を改正する法律案」と一括審議された。しかし、同通常国会では審議が終局せず、同年秋の臨時国会で3法案一括で継続審議された。

そして、「労働契約法案」と「最低賃金法の一部を改正する法律案」については、与野党間で修正協議が行われ両法案は内容を一部修正し、19年11月28日に成立した。一方、「労働基準法の一部を改正する法律案」については、その後、国会での質疑などは行われず、今年の通常国会、さらに、今臨時国会での継続審議扱いとなっていた。

今臨時国会では、11月18日の厚生労働委員会に自民党、民主党・無所属クラブ、公明党の提案による修正案が提案された。修正内容は、時間外労働の割増賃金率について、50%以上の支払いを義務化する時間数として、原案では「1カ月80時間を超えた場合」としていた点を「1カ月60時間を超えた場合」としたもの。このほか、改正法の施行期日について、原案では「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」としていた点を「平成22年4月1日」と確定期日に修正している。

この修正案に対して、同委員会では反対討論(共産党、社民党)を行い、その後、採決され、与党及び民主党などの賛成多数で修正案を可決、同日開かれた衆議院本会議に上程され、同様に可決され、参議院へ送られた。なお、改正法案(修正後)の概要は以下の通り。

【労働基準法の一部を改正する法律案】


(1)時間外労働の抑制
(イ)時間外労働の限度基準で定めることができる事項として、割増賃金の率に関する事項を追加するものとすること。
(ロ)使用者は、月60時間を超えて時間外労働をさせたときは、その超えた時間の労働については、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないものとすること。ただし、中小事業主については、当分の間、適用を猶予し、施行後3年を経過した場合に検討を行うものとすること。
(ハ)使用者は、労使協定により、(ロ)の割増賃金の支払に代えて、有給の休暇(年次有給休暇を除く)を与えることができるものとすること。

(2)年次有給休暇の見直し
使用者は、労使協定により、年次有給休暇のうち5日以内については、時間単位として年次有給休暇を与えることができるものとすること。

(3)施行期日
平成22年4月1日。