派遣契約期間満了前でも直接雇用は可能?
◆派遣先が「すぐに直接雇用したい」
大学卒業後、派遣社員として就職。今の派遣先は仕事も楽しく、派遣社員として長く働きたいと思っていた矢先、派遣先から「正社員にならない?」と言われました。まだ、派遣契約期間が満了していませんが、応じてよいものなのでしょうか。
◆契約期間満了前では契約違反に
派遣社員は、派遣元の人材派遣会社と一定期間の雇用契約を結び、派遣先企業で派遣社員として働きます。人材派遣会社は派遣先企業と派遣契約を結んでおり、派遣労働は二重の契約関係が成立していることになります。
派遣契約期間の途中に、派遣先が派遣社員を正社員として直接雇用することについては、原則やむを得ない理由がない限り認められないとされており、冒頭のような例は「やむを得ない理由」となる可能性は低く、派遣社員と派遣先は契約違反として派遣元から損害賠償を請求される可能性があります。
◆契約を途中で解除するケースも
2005年度の厚生労働省の調査によれば、事業報告書を提出している全国約31,000の派遣元事業所において、派遣労働者は約320万人と増加傾向にあります。
ただ、団塊世代の大量退職などもあり、企業において正社員雇用が一部で拡大する中では、派遣社員も、不安定な派遣社員より正社員になることを望む人が多く、派遣先企業から「すぐ直接雇用したい」との要望があった場合、派遣会社(有料職業紹介事業の許可を受けているものに限る)は直接雇用後の年収の一定割合を「紹介手数料」として派遣先から受け取り、契約を解除するケースもあります。
◆紹介予定派遣の活用も
契約期間が残り少ない場合は、派遣先企業に契約満了まで待ってもらうことが多くあります。当初から派遣先での就職を目指す場合には、2004年に法整備がなされた「紹介予定派遣」制度があります。同制度は一定期間(最長6カ月)派遣社員として働いた後、派遣先企業・派遣社員双方が直接雇用を望めば認められます。
ただ、厚生労働省の調査によれば、紹介予定派遣で直接雇用に結びついたのは約6割にとどまっています。一定期間経過後の直接雇用は派遣先企業の義務ではなく、必ずしも直接雇用に結びつくとは限らないので、派遣労働者は注意が必要です。