「裁判員制度」スタートで企業の対応は?
 
◆大手企業では「裁判員休暇制度」導入を検討も
 
2009年5月21日から「裁判員制度」(「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」に基づき一般国民が刑事裁判に参加する制度)がスタートするのを控え、社員が裁判員に選ばれて裁判手続に参加する場合に有給休暇として扱う「裁判員休暇制度」の導入を検討している大手企業が増えているようです。
 
◆有給か無給かは企業の考え方次第
 
裁判所では、審理にかかる日数については「概ね1週間程度」との見通しを示していますが、それ以上に長引くケースが出てくることも考えられます。原則として、選ばれた国民は辞退はできません。やむを得ない理由がある場合は辞退を認められますが、その基準についてはまだ不透明な部分があります。
 
労働者が裁判員となるために休みを取ることは、公民権の行使として法律上認められ、仕事を休んだことを理由に会社が不利益な扱いをすることは禁じられています。ただし、有給とするか無給とするか、就業規則での規定化などは企業に任されているため、どのような支援体制を設けるかは企業の考え方次第といえます。
 
◆有給休暇制度創設は企業の社会的責任?
 
確率的に多くの社員が裁判員やその候補になる可能性が高い大企業では、CSR(企業の社会的責任)の一環として、「特別有給休暇」を創設する方向性を打ち出しているところが多いようです。人員体制に余裕のない中小企業では頭の痛い問題といえるでしょう。
 
◆裁判員の選出方法
 
  1. 選挙人名簿から1年分ずつ、くじで裁判員の候補者が選ばれます。名簿に載った時点で本人に通知がきます。
  2. 事件ごとに候補者の中からまた50〜100人程度がくじで選ばれ、裁判所に呼び出されます。
  3. その中から裁判員6人を選出します。

 

年間で3500人に1人が裁判員または補充裁判員になり、候補者として裁判所に呼び出される人数はその10倍とみられています。
 
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最高裁判所HP 裁判員制度〜平成21年5月21日スタート〜
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法務省HP 裁判員制度コーナー【よろしく裁判員】
■法務省:従業員の方が裁判員等に選ばれた場合のQ&A
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■国税庁:
裁判員等に支給される旅費、日当及び宿泊料に対する所得税法上の取扱いについて
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裁判員休暇の就業規則への規定例
 (カワムラ事務所 規定例 08年11月改訂)
 
第●条 裁判員休暇
 
1.次のいずれかに該当する従業員
(※注1から事前に届け出があった場合、法定の年次有給休暇とは別に裁判員休暇を与える。
①裁判員候補者として裁判所に出頭するとき
②裁判員または補充裁判員として裁判審理に参加するとき
 
(※注1
対象者の範囲を規定しておくこと
  【全従業員を対象とする例】従業員(準社員、パートタイマーを含む全従業員)
  【月給制の従業員だけを対象とする例】従業員(パートタイマー等の時給制従業員を除く)
 
2.【有給とする場合】
裁判員休暇期間中は、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金(※注2を支給する。
  【原則無給とするが審理延長された日数は有給とする場合】
裁判員休暇期間中は原則として無給とする。ただし4日を超える審理終了までの期間については、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支給する。
 
(※注2
裁判所から支給される交通費や日当は所得税法上「雑所得」となる。給与所得や一時所得とはならない。
 
3.裁判員休暇を取得するときは、裁判所からの、裁判員候補者としての出頭日の通知 または裁判員もしくは補充裁判員としての裁判審理参加日の通知から、1週間以内(※注3に、所定の手続により届け出なければならない。事後の届出は受理しないものとする。
 
(※注3
裁判所からの「選任手続期日のお知らせ(呼出状)」は裁判員規則で選任手続期日の6週間前までには発送しなければならないとされているので、実際に裁判所に出頭するのは「呼出状」を受け取ってから約6週間後となる。(なお判員候補者名簿に登録されても、くじで選ばれなければ、裁判所に出頭することは当然ない。)
 
4.裁判員候補者として出頭 または裁判員もしくは補充裁判員として裁判審理に参加した従業員は、出社後すみやかに、裁判所が発行する証明書等を提出しなければならない。
 
5.会社は、裁判員または補充裁判員の辞退(※注4を希望する従業員が、その従事する業務内容等についての証明を求めた場合は、真正かつ正確な事実を証明する文書の作成等について協力するものとする。
 
(※注4
「重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがある」と裁判所が認めた場合のみ、辞退が認められる。「仕事が忙しい」というだけでは辞退はできない。(辞退の申立てがあった場合には、事業所の規模、担当業務の代替性、業務の日時変更の可能性、事業への影響、等々を考慮して判断される。)
 
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■「中小企業のための裁判員制度対応のポイント」
 (09年10月26日 東京商工会議所)
〜知っておくべき裁判員制度対応の手引き〜の発行について
 
2009年(平成21年)5月21日より「裁判員制度」が開始されたが、年を追うごとに、従業員などが裁判員候補者に選ばれる企業は増え、就業規則の変更やサポート体制の構築に苦慮することが予想されることから、中小・小規模企業の裁判員制度への対応を促進するため、経済法規委員会を中心に取りまとめを行い、本書を作成した。 本書では、裁判員制度の説明のほか、中小企業の実際の取り組み事例(少人数の組織を生かした社内体制の構築や柔軟な運用の事例、抱えている課題など)を掲載している。
 
東京商工会議所のホームページからダウンロードすることで、入手可能。
 
●裁判員、「従業員参加へ配慮を」 法務省・厚労省見解(09年6月3日 日経)
 
裁判員制度に関連して、法務省と厚生労働省は3日までに、裁判員などになった従業員に対する企業の労務管理について見解をまとめた。裁判所から支給される日当を企業側に納めさせたり、有給休暇中の給与から差し引いたりすることを一定の範囲で容認。運用の仕方によっては裁判員への参加意欲がそがれかねず、法務省は「企業は従業員が参加しやすくなるよう配慮してほしい」と呼び掛けている。
 
裁判員法には裁判員を送り出す企業の労務管理について細かい規定がなく、今年に入り問い合わせが急増。法務省は給与の取り扱いなどについて厚労省と統一見解を協議していた。
 
●従業員が裁判員に…「柔軟対応」中小は3割 中部706社アンケート
 (09年6月8日 中日)
 
5月に始まった裁判員制度で、裁判員に選ばれた従業員に仕事を休ませられる日数について、大手企業(従業員数300人以上)の約8割が「臨機応変に対応できる」として、必要日数に応じて柔軟に対応する考えを示す一方で、中小企業(同300人未満)は約3割にとどまることが、中日新聞社が5〜6月、中部9県の約700社を対象に行った企業アンケートで分かった。従業員が少なく人繰りが難しい事業所ほど、制度への抵抗感が強いといえそうだ。
 
●社員の裁判への参加「できればしてほしくない」経営者が5割超
 (09年5月22日 CAREERzine)
 
アリババ株式会社は、中小企業経営者に対し、5月21日にスタートした裁判員制度に関する調査を行った。裁判で社員が休暇をとると「業務に支障が出る」と回答したのが86.7%、裁判へは「できれば参加してほしくないが、義務なので参加はやむをえないと思う」が52.7%と、裁判員制度に対するホンネが明らかになった。
 
裁判員制度を知っているかどうかを尋ねたところ、「知っており、詳しく内容も理解している」は28.7%、「知っており、ある程度内容も理解している」は62.3%となり、「内容を理解している」は9割に上ることが明らかとなった。
 
一方で、裁判員の仕事に必要な休みをとることは法律で認められており、裁判員として仕事を休んだことを理由に不利益な扱いをすることは禁止されていることを知っているかどうかを聞いたところ、「知らなかった」は36.0%となった。経営者は「理解している」つもりだが、正しい知識が浸透しているとはいいかねる結果となった。
社員の裁判への参加についてどう思うかを尋ねたところ、「できれば参加してほしくないが、義務なので参加はやむをえないと思う」が52.7%、「参加させるのは難しいと思う」は22.0%となり、一方「ぜひ参加すべきであると思う」との積極的な回答は20.7%にとどまった。
 
社員が裁判員に選ばれ休むことになった場合、業務への影響はどの程度生じるかを聞いたところ、「かなり支障が生じる」54.7%、「やや支障が生じる」32.0%となり、8割以上の中小企業経営者が『支障が生じる』と考えていることがわかった。
 
●「Alibaba JAPAN」裁判員制度に関する調査(中小企業経営者調査) 裁判員制度による社員の休暇「業務に支障が出る」8割(09年5月22日 ChinaPress)
Alibaba JAPAN NewsReleases⇒ http://www.chinapress.jp/release/16956/
 
裁判員に「特別有給休暇」74社…主要100社へ読売調査
 (08年11月30日 読売)
 
来年5月に始まる裁判員制度について、読売新聞が主要企業100社にアンケート調査を行ったところ、74社が裁判員に選ばれた社員に対し、有給の特別休暇を与えることがわかった。
 
裁判への参加可能日数は、「7日以上」と回答した企業が27社と最も多く、社員の参加に前向きな姿勢を示す企業が多い。
 
一方、悲惨な事件を審理する際の精神面のケアについては、「企業内のメンタルヘルスでは対応に限界がある」など懸念が強く、裁判所にきめ細かい配慮が求められそうだ。
 
調査は先月下旬から今月上旬にかけ、各業種の主要企業を対象に実施した。
 
個別の事件で裁判員候補者や裁判員に選ばれた社員向けの休暇に関しては、38社が、裁判の証人など公の職務を果たす社員用の「公務休暇」などを適用し、通常の年次有給休暇とは別に特別休暇を与えると回答した。こうした従来の休暇制度を使わず、裁判員向けの特別有給休暇制度を新設するのは36社。
 
このほか、「既存の年次有給休暇を申請してもらう」という会社が1社あった。一方、「検討中」は23社で、2社が「検討しない」と回答した。
 
社員が裁判に参加する場合、何日まで会社として許容できるかを聞いたところ、「7日以上」との回答が27社で、「5日以内」(23社)、「3日以内」(15社)が続いた。最高裁の推計では、約7割の事件が3日以内、約2割が5日以内で終えるとされており、一定の参加は見込めそうだ。
 
ただ、裁判が長期化する場合については、「4日以上なら間隔を空けてほしい」(サービス)などの声があがった。また、「特別休暇は3日程度を想定しているため、それ以上かかる場合は、休暇の取得日数を制限せざるを得ない」(製造)という意見もあった。
 
殺人事件など悲惨な事件の審理を担当し、精神的なショックを受けた裁判員への心のケアについては、53社が「自社のメンタルヘルス体制で対応する」と回答した。ただ、「残酷なシーンを連想させる機会を極力避けてほしい」(情報サービス)、「事後のケアだけではなく、事前に十分説明を」(メーカー)といった要望が相次いだ。
最高裁は24時間体制の電話相談窓口を設置する方針だが、「裁判員には守秘義務もあり、社内で出来ることには限界がある」(百貨店)として、国による支援を求める声も多かった。
 
■裁判員制度に関するアンケート結果について(08年11月21日 東京商工会議所)
 
東京商工会議所(岡村正会頭)は10月29日に開催した「裁判員制度 映画上映会・説明会」に参加した会員中小企業の経営者、および人事・労務担当者約454名を対象に行った裁判員制度に関するアンケート調査結果を別紙のとおりとりまとめた(有効回答293名、回収率64.5%)。調査結果のポイントは以下のとおり。
 
拘束期間が3日程度であれば、約8割が裁判員制度に協力する意向
 
裁判員制度についてどのように考えるかを聞いたところ、「従業員を拘束されるのは仕事上問題だが、拘束期間が3日程度であれば国民の義務なのでやむをえない」が52.6%(昨年度52.1%)、「国民の義務なので当然参加すべきである」が26.6%(同22.0%)となり、制度に参加する意向を示す回答はあわせて79.2%(同74.1%)となり、昨年度と比較してやや増加している。このほか、「現時点では判断できない」が14.0%(同16.7%)、「3日程度であっても、参加させる(する)ことは難しい」は3.8%(同5.0%)であった。
 
具体的な対応は今後の課題。「特に何もしていない」は6割超
 
社内における裁判員制度への対応状況について聞いたところ、「特に何もしていない」が最も多く60.8%(昨年度72.7%)となり、依然として大半の企業が制度の対応を検討していないものの、昨年度と比較して検討を行った企業は増加している。また「新しい休暇制度を検討している(すでに導入している」が24.6%(同8.5%)となり、昨年度と比較して大幅に増加している。
 
「辞退できる理由」の運用について配慮を求める声
 
「裁判員を辞退できる理由」についてどのように考えるかを自由記入形式で聞いたところ、「辞退することができる場合をより具体的に示してほしい」といった意見や、「中小・零細企業は大企業と違い人員に余裕がないため、特に考慮してほしい」といった意見など、人員の補充がしにくい中小企業に一層の配慮を求める意見があった。また、「裁判員の個人情報やプライバシーの保護をしっかりとしてほしい」、「重大事件の裁判に参加した裁判員の心のケアにも取り組んでほしい」などの意見も寄せられており、裁判員制度の運用に対する関心の強さがうかがえる。
 
 
■裁判員制度実施に向けた企業の対応調査(08年9月11日 労務行政研究所)
―09年5月の裁判員制度開始に向け 半数近くが対応を決定済み、
 休暇付与の場合は「有給」が9割占める―
 
民間調査機関の(財)労務行政研究所(東京都港区 https://www.rosei.or.jp/ )では、2009年5月からの裁判員制度スタートに向けて、従業員が裁判に参加する場合の企業の対応に関する調査結果をこのほど取りまとめた。
 
裁判員制度の開始まで8カ月余りとなり、間もなく各地方裁判所では裁判員候補者名簿の作成が開始され、本年12月には候補者への通知と調査票送付が行われる予定となっている。関係機関での制度準備が着々と進む一方、企業では裁判に参加する社員の休務に備えた社内ルールの検討・整備が急務となっている。
 
注目される点は、裁判員の選任手続きや審理参加のために休務せざるを得ない場合、何らか特別休暇を付与する方法をとるのか、その場合給与の取り扱いはどのようにするのか――などである。これらに関し、今回の調査では次のような実態が明らかになった。
 
1.社員が裁判員に選任され、休務する場合の取り扱いを「すでに決めている」企業は46.5%。全体の3割は「今後検討する」
 
2.「すでに決めている」企業の対応内容は、「従来から公務に就く場合の休務ルールを決めており、そのルールを適用」が62.8%で最多。「裁判員休暇」を新設した企業は23.9%
 
3.何らかの休暇を付与する場合,休暇当日の賃金は「通常勤務とまったく同じ(有給)扱い」が全体の9割を占める。
 
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