懲戒制度に関する実態調査(07年9月18日 労務行政研究所)

●懲戒制度に関する実態調査(07年9月18日 労務行政研究所)

「企業内の懲戒処分の実態に迫る」
―横領の場合、7割以上の企業が最も重い「懲戒解雇」を適用―


民間調査機関の(財)労務行政研究所(理事長:猪股靖 https://www.rosei.or.jp/)では、「懲戒制度に関する実態調査」を2003年以降4年ぶりに実施した。

企業のコンプライアンス意識の高まりや、社員の問題行動の増加に伴い、企業が下した懲戒処分が報道等でクローズアップされるケースをよく目にするようになってきた。懲戒処分の内容については,就業規則等の社内規定で定める必要があるが、現実に発生した事案によっては必ずしも規定の基準で十分とはいえず、企業としてもどの程度の処分が適当なのか判断に迷うケースも多い。本調査では、30のモデルケースを設定し、もしもそのようなケースが起こった場合にはどの程度の処分内容になるのかを、過去のケース等により判断して回答いただいた。

設定したモデルケースのうち、横領(「売上金100万円を使い込んだ」)や情報漏えい(「社外秘の重要機密事項を漏えいさせた」)、酒酔い運転(「終業時刻後に酒酔い運転で物損事故を起こし,逮捕された」)など,近年社会問題化している問題行動については、懲戒処分の中で最も重い「懲戒解雇」を適用している割合が高い。特に、横領した社員に対しては、7割以上の企業が懲戒解雇としている。また、懲戒解雇となった場合の退職金については、4社に3社が全額不支給と答えている。

調査要領
1.調査時期・方法 2007年5月30日〜7月2日。調査票の郵送により実施
2.調査・集計対象 全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3821社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)349社の合計4170社に送付。そのうち回答のあった121社を集計

1. モデルケース別にみた懲戒措置

下のようなモデルケースが起こった場合、どのような懲戒処分をとるのか、過去のケース等から判断して回答していただいた。

懲戒処分の中で最も重い措置である「懲戒解雇」を適用する、という回答が多かったケースとして、「売上金100万円を使い込んだ」(70.6%)、「無断欠勤が2週間に及んだ」(68.8%)、「社外秘の重要機密事項を漏えいさせた」(54.1%)が挙げられる。このほか、「終業時刻後に酒酔い運転で物損事故を起こし,逮捕された」(40.4%)、「社内で私的な理由から同僚に暴力をふるい、全治10日の傷を負わせた」(38.5%)、「満員電車で痴漢行為を行ったことが被害者からの訴えで判明した」(36.7%)など、近年社会問題化し、メディア等を通して監視の目が厳しくなっている事案も、懲戒解雇を適用している割合が高い。

2.懲戒処分に関するその他の取り扱い

(1) 解雇の場合の退職金支給

諭旨解雇では「全額支給する」が38.4%と最も多く、「一部支給する」の23.3%と合わせると、何らかの支給を行う企業が6割超に上る。「全額支給しない」はわずか5.8%にとどまった。「一部支給する」の多くは“状況に応じて支給割合を決定する”であった。

これに対し、懲戒解雇では「全額支給しない」75.0%と4社に3社を占め,当然のことながら諭旨解雇とは一転、厳しい内容となっている。「全額支給する」は3.3%、「一部支給する」は2.5%で、両者合わせても約6%にとどまっている。当研究所の「退職金・年金制度総合調査」(2006年9〜12月)によると,大学卒の自己都合退職金は勤続20年で約680万円、同30年で約1640万円、定年退職では約2240万円に上る。懲戒解雇によりこの退職金がもらえなくなるということは、社員にとって大きなダメージといえよう。

(2) 最近1年間における 懲戒の段階別発生件数

発生件数は、最も軽い段階の処分である「譴責けんせき」(注意処分、訓告、始末書等も含む)が16社の合計で57件、一方、最も重い処分である「懲戒解雇」は12社の合計で17件である。

(3) 状況により懲戒の重さに差異を設けているか

@マスコミの報道等により社名や実名が公表された場合に、通常その事案に該当する懲戒措置と比べ、懲戒段階や取り扱いに「差異を設けている」企業は40.0%にとどまった。

一方、A同一人物が同様の事案で数度にわたり懲戒を受けた場合では、59.4%と過半数の企業が「差異を設けている」と答えている。設けている差異の内容としては、@、Aとも“1ランク(以上)重い処分とする”というものが多い。Aの場合では“改しゅんの見込みがない場合は懲戒解雇とする”という厳しい措置もみられた。

詳細資料 懲戒制度に関する実態調査 07年9月18日
⇒ https://www.rosei.or.jp/contents/detail/2726


●懲戒処分:酒酔い運転は厳罰化、不倫は「?」 企業調査(07年9月22 毎日)

酒酔い運転は厳罰、部下との不倫での処分は判断に迷う−−。企業のコンプライアンス(法令順守)に厳しい目が向けられる中、企業の懲戒処分の実態調査でこんな傾向が浮かび上がった。

調査は財団法人労務行政研究所(東京都港区)が実施した。上場企業を中心にアンケートを行い、121社から回答を得た。「売上金100万円を使い込んだ」「妻子ある上司が部下と不倫を続けている」など30のモデルケースを挙げ、会社での過去のケースを参考に処分なしから懲戒解雇までどのような処分をするか聞いた。

退職金が全く支払われないケースが多く、最も処分の重い懲戒解雇となるのは「100万円の使い込み」(70.6%)で、次いで「無断欠勤2週間」(68.8%)、「秘密漏えい」(54.1%)だった。「終業後に酒酔い運転で、物損事故を起こし逮捕」での懲戒解雇は40.4%だった。このケースの4年前の調査では、出勤停止が最も多い処分で28.2%、懲戒解雇は22.6%だったことから、厳罰化が進んでいることが分かる。

一方、「社内不倫」の懲戒解雇は5.5%で「判断できない」が26.6%、「社内通報せず直接マスコミに内部告発した」でも「判断できない」が41.3%と線引きが難しいケースもあった。

同研究所では「酒酔い運転や情報漏えいなど社会問題化しているケースは重い処分になっている。社会が多様化する中で、企業がどの程度の処分が適当か判断に迷う場面も増えているのではないか」と分析している。【東海林智】

【懲戒解雇になる割合の高いケース】
@ 売上金100万円を使い込んだ70.6%
A 無断欠勤が2週間に及んだ68.8%
B 社外秘の重要機密事項を漏えいさせた54.1%
C 終業時刻後に酒酔い運転で物損事故を起こし、逮捕された40.4%
D 社内で私的な理由から同僚に暴力をふるい、全治10日の傷を負わせた38.5%
E 満員電車で痴漢行為を行ったことが被害者からの訴えで判明した36.7%
F 基準を超える取引を独断で行い、会社に1億円の損害を与えた34.9%
G 取引先から個人的に謝礼金等を受領していた34.9%
H 同僚にストーカー行為を繰り返して、被害を訴えられた32.1%
I コンピュータに保存されている重要なデータやプログラムを改ざんした30.3%

【懲戒解雇になる割合が低いケース】
@ 社有車をしばしば私用に使っていることが判明した1.8%
A 同僚の売上金の流用を知りながら、報告しなかった2.8%
B 車で営業中に得意先から携帯電話が入り、話に熱中して事故を起こした2.8%
C 会社の金庫のかぎを掛け忘れてしまい、公金の盗難にあった2.8%
D クレジットカードによる買い物のしすぎで自己破産の宣告を受けた2.8%

●横領100万円で懲戒解雇は7割 企業の処分で民間調査
 (07年9月19日 時事通信)


民間調査機関の労務行政研究所(東京 https://www.rosei.or.jp/)が18日まとめた懲戒制度の実態調査によると、社員が100万円を横領した場合、最も重い「懲戒解雇」を適用する企業は全体の7割に上ることが分かった。また、横領に限らず、理由が何であれ、懲戒解雇する場合には、4社に3社が退職金を「一切支給しない」と答えている。

使い込みをめぐっては、社会保険庁職員による保険料着服の場合、内々に処理されたり、退職金が支給されたりするケースがあるなど甘さが目立つが、民間企業は厳しい処分で臨んでいるといえそうだ。

調査によると、売上金百万円の使い込みに対する処分として、企業の70.6%が「懲戒解雇」、18.3%が「諭旨解雇」と回答し、解雇は九割近くに上った。

また、終業後に飲酒運転で物損事故を起こし逮捕された場合は、40.4%が「懲戒解雇」、19.3%が「出勤停止」だった。四年前の調査では「懲戒解雇」は22.6%にとどまっていたが、飲酒運転に対する社会の目が厳しくなったため、処分が厳格化しているようだ。