女性上司が部下を誘惑。セクハラでは?
20代の男性会社員が女性の上司から度々飲みに誘われ、体を触られたうえ交際を求められています。誘いを断ったところ残業を押しつけるなど仕事上厳しく当たるようになったような場合、セクハラ(性的嫌がらせ)として訴えられるのでしょうか。
◆法改正で男性も保護対象に
従来は女性による男性へのセクハラの法的扱いは明確ではありませんでした。平成19年4月施行の改正男女雇用機会均等法でセクハラの範囲が男性にも広げられ、調停対象となりました。
問題は男性へのセクハラの認定基準が確立されていないことにあります。女性へのセクハラに比べ男性への事例はまだ裁判例が蓄積されておらず、平均的な男性が性的羞恥心(しゅうち)心を感じるか否かで判断されているのが現状です。
◆「行動や発言に性的な要素が含まれるか」がポイント
例えば性交渉を持ちかけたり、身体に触れてきたりする場合、セクハラと認定される傾向にあります。一方、単にしつこく酒席に誘ったり、恋人の有無を聞いたり、というケースでは、女性への場合と異なり認定されない公算が大きいといわれています。
裁判例もまだ多くないため認定基準を見極めるのは難しいのが現状です。防犯パトロール中の女性職員が、同僚男性がいる浴室に入った行為がセクハラかどうかについて争われた訴訟では、一審では女性のセクハラ行為を認定しました(大阪地裁2004年9月3日判決)が、二審は女性に職務上の目的があったとして男性側の訴えを棄却しました(大阪高裁2005年6月7日判決)。
セクハラとして認定されない場合は「パワー・ハラスメント」として対処することになりますが、パワハラには法的規制がないため裁量権を大幅に逸脱した事例でない限り救済は難しいようです。
均等法改正で男性へのセクハラについても相談窓口を設置するなど、防止に必要な措置が企業に求められるようになりました。企業がこうした措置をとらないと違法とされ、裁判で使用者責任が問われます。男性へのセクハラはあり得ないと企業側が放置していると、手痛いしっぺ返しを食うことになります。
「男性へのセクハラも、女性へのものと同様と認識することが必要」で、企業はさらにセクハラ防止の意識をとぎすませる必要がありそうです。
◆ポイントは?
① 女性へのセクハラに比べ、認定基準が不明確な面もある。
② 男性に対するセクハラも企業の防止処置が必要である。