人事労務の時事解説(2008年2月号)

人事労務の時事解説 2008年2月号


まもなく施行される「改正パートタイム労働法」

◆4月1日から施行

改正パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が、4月1日から施行されます。

◆「パートタイム労働者」とは?

パートタイム労働法の対象である「短時間労働者」(パートタイム労働者)は、「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間における所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。

◆改正パートタイム労働法の概要

1.労働条件の文書交付等
2.待遇の決定についての説明義務
3.均衡のとれた待遇の確保の推進
4.通常の労働者への転換の推進
5.苦情処理・紛争解決の援助

3.については、パートタイム労働者の待遇を通常の労働者との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じる内容です。具体的には、「職務の内容(業務の内容および責任の程度)」「人材活用の仕組みや運用など」「契約期間」の3つの要件が通常の労働者と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いについて規定しています。

◆「差別的取扱いの禁止」とは?

「職務の内容(業務の内容および責任の程度)」が同じ、「人材活用の仕組みや運用(人事異動の有無および範囲)など」が全雇用期間を通じて同じ、「契約期間」が実質的に無期契約となっているパートタイム労働者は、通常の労働者と就業の状態が同じと判断され、賃金の決定をはじめ教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、その他のすべての待遇について、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されます。

「人材活用の仕組みや運用などが全雇用期間を通じて同じ」とは、パートタイム労働者が通常の労働者と職務が同一になってから、退職までの期間において、事業所の人事システムから判断して同じ、となる場合です。

「契約期間が実質的に無期契約」とは、期間の定めのない労働契約を結んでいる場合や、期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当とされる場合などです。


終了期限が迫る!「人財投資促進税制」

◆社員の成長が会社の成長に

企業にとっての経営資源は「人・もの・お金・情報」であると言われています。とはいっても、「人」以外の要素に意志や想像力はありません。こうした資源を活用して新たな付加価値を生み出すことができるのは「人」そのものといえます。

「企業=人材」の言葉のとおり、社員の成長なくして、企業の成長はありえません。

◆人材育成の形態

企業における代表的な人材育成の形態には、「OJT」(職場内訓練)と「OFF・JT」(職場外訓練)の2種類があります。OJTは、上司が日常の業務を通じて、部下に対し、業務に必要な知識や技能を育成指導する形態です。OFF・JTは、社員を仕事から切り離して勤務外の時間に行うため、教育を集中して体系的に行えるのがメリットです。

いずれにしても、効率的に人材育成を行い社員の戦力化を図るためには、計画的にOJTとOFF・JTを併用していくことが大切であると考えられています。

◆「人材投資促進税制」の活用

中長期的な投資とも考えられる人材育成に日本の企業がかける費用は、諸外国の企業と比較すると、まだ少額であるといわれています。

「人材投資促進税制」は産業競争力の基盤である産業人材を育成・強化する観点から、従業員の人材育成に積極的に取り組む企業・個人事業者を支援するため、平成17年4月に創設されました。業種や規模を問わず、すべての企業が対象となり、教育訓練費の一定割合を法人税・所得税から税金控除するものです。

この特別税額控除は、3年間の時限措置です。適用期間は、平成17年4月1日から平成20年3月31日までに開始される事業年度であることから、終了期限が間近となっていますが、ぜひとも利用を検討したい制度です。

◆人財投資促進税制の効果

人財投資促進税制は、税額控除ですので所得控除とは異なり、税額を直接減らすことができるため、上手に利用すれば非常に大きな節税効果を得ることができます。また、経営計画を人事制度に反映させて、計画的に人材育成を実施すれば、企業の成長につながる社員を育成できる効果が期待できます。さらに、人材教育に力を入れている企業の姿勢をアピールすることで、優秀な人材が確保しやすくなり、企業の活性化や社員のモチベーションアップを図ることができると考えられます。

人財投資促進税制を活用しながら、会社と社員の成長に役立つ定期的な人材教育の実施を検討されてみてはいかがでしょうか。


「日雇い派遣」の規制が強化されます

◆派遣法に基づく事業停止命令

大手日雇い派遣の企業が、偽装請負の状態で、都内の港湾地区に派遣した男性を労働者派遣法で禁止されている港湾での荷物の積み下ろし作業に従事させていたことが判明しました。同社が労働者派遣法で禁止されている港湾業への派遣などの行為を繰り返していたとして、厚生労働省は、労働者派遣法に基づく事業停止命令を出しました。

◆料金や条件明示を徹底

厚生労働省は、「労働者保護が不十分」との指摘が出ている日雇い派遣制度を2008年度中にも見直し、規制を強化する方針を固めました。派遣先企業が支払う料金を公開させることにより派遣会社が極端に多額の手数料を取ることを防止し、業務内容など労働条件の事前明示を徹底することが柱です。

日雇い派遣は、派遣会社と1日単位の雇用契約を繰り返し、条件も契約ごとに変わる仕組みで、同省は派遣先企業が支払う料金が公開されれば、労働者が派遣会社に賃金の引上げを要求しやすくなるとみています。また、業務内容が明示されていれば、派遣労働者が過酷な契約を避けることが可能になり、労働条件の改善につながると期待しています。

◆派遣労働の規制緩和は見送り

労働政策審議会は、2007年12月に派遣労働に関する中間報告をまとめ、規制緩和の早期実施の見送りを決めました。派遣労働力を効率的に活用したいという企業や規制改革会議の要望は退けられた形になりました。厚生労働省は規制緩和を盛り込んだ労働者派遣法改正案の2008年の通常国会への提出を断念しましたが、一方で、日雇い派遣は規制を強化する方針を正式に決定しました。

政府は当初、柔軟な働き方を広げるため、規制緩和に前向きでした。規制改革会議などでの議論を踏まえて受け入れ企業が採用前に直接面接する「事前面接」の解禁や、派遣社員を一定期間以上雇うと派遣先企業が直接雇入れを申し出なければならないという「直接雇用義務」の撤廃などの方向を打ち出していました。

働いても生活保護水準以下の収入しか得られない「ワーキング・プア」の問題などが表面化し、「不安定な派遣労働者には規制強化が必要」という労働者側の意見が勢いを増しました。労働者派遣は徐々に規制が緩和されてきましたが、労働者保護のための派遣期間や業種などに制限が残ります。

「規制が逆に派遣の雇用を不安定にしている」との批判もあります。厚生労働省は大学教授ら有識者5〜6人で組織する研究会を立ち上げ議論の打開を目指す考えで、今年はじめに研究会の第1回会合を開き、来夏をメドに報告書をまとめ、労働政策審議会で再度議論する予定です。


後期高齢者医療で「外来主治医制度」導入へ

◆「外来主治医」制度とは

2008年4月からスタートする後期高齢者医療制度において、75歳以上の患者の心身状態を1人の医師が総合的に診察する「外来主治医」(仮称)制度が導入されます。

複数の病気にかかっていても、原則として患者1人に1人の主治医とし、高齢者が複数の医療機関にかからないようにして、医療費を抑えることが狙いです。

◆研修を受けた医師が「外来主治医」に

外来主治医の資格は、お年寄りの日常生活能力を判定する機能評価の演習など4日間程度の研修を受け、厚生労働省に届け出た医師に与えられます。研修では、日本医師会と学会でつくる組織が受け持ち、高齢者の薬物療法、認知症の診療、家族や介護者への指導方法などを習得するそうです。

患者は、外来主治医から1年間の治療・検査計画を記した「高齢者総合診療計画書」を示され、糖尿病や脳血管疾患などの診療を受けるには、計画書に患者の同意署名が必要となります。また、患者には月初めの受診時に、検査結果や次の受診日時などを記した文書が渡される予定です。

◆患者にはどんなメリットがある?

患者1人ひとりが信頼できる医師を持つことにより、複数の医療機関を渡り歩いて検査や投薬が重複することを防止し、外来医療から入院、在宅療養へ移ることがスムーズになります。ただし、主治医を持つことは義務ではなく、また、どの医師を選ぶのかは患者自身が決めることになります。

◆診療報酬に「定額制」導入

新制度の導入に伴い、75歳以上を対象とした診療報酬に「医学管理料」が新設され、外来主治医が請求できるようにし、一部を除く検査、画像診断などについては何度実施しても一定の報酬しか払わない「定額制」が導入されます。また、外来主治医には、毎回患者に服薬状況を確認することも義務付けられるそうです。


「国民年金任意加入」の損得勘定

◆団塊世代の老後の資産形成

会社人生が終わりつつある団塊世代の男性が老後の資産づくりに躍起になっています。専業主婦だった妻も人ごとではありません。「自分のお金を少しでも有利に運用したい」という思いから、国民年金の「任意加入」が注目されています。

ただ、金融商品と公的年金では仕組みが異なりますので、注意が必要になります。

◆国民年金任意加入の損得

仮に、年上の夫が定年退職し、専業主婦だった妻のA子さん(57歳)が、国民年金の「第3号被保険者」という立場から外れ、あと3年保険料を払って国民年金に加入しなければならなくなったとします。この3年とかつての国民年金の任意加入時代に6年加入した分を合わせて保険料を払う期間は9年になります。

「第3号」期間が22年で、60歳になった時点で合計加入期間は31年、65歳からの老齢基礎年金(加算を含まず)は年約61万円になります。「もうちょっと増やせないか」と考えたとき、65歳になるまで国民年金に任意加入できることを知りました。任意加入分だけ年金も増えますが、そこで気になることが出てきました。

◆何歳まで生きれば払った保険料の元が取れる?

例えば60歳以降で5年任意加入(5年分の保険料約84万円)すると、65歳からの年金は約71万円になり、73歳を少し超えて長生きすれば得になります。

ただ、任意加入しても65歳からの年金を貰う前に死亡すると悲劇です。

4年任意加入した時点でA子さんが亡くなったとすると、保険料を払った期間が計13年なので、夫に死亡一時金12万円が払われます。A子さんが任意加入せずに64歳で亡くなって場合の保険料納付期間は9年になり、このときの一時金も12万円です。4年分の保険料約67万円は水の泡になってしまいます。

金融商品でも損失が出るリスクはありますが、一般的には資産が残ります。しかし、公的年金は「相互扶助」が原則なので、払った分に見合う金額が必ず戻るとは限りません。

公的年金は原則25年、制度に加入しないと老後の年金はもらえないので、すでにこの要件を満たしているとき、さらに任意加入するかどうか検討するときには、公的年金のこのような仕組みも知っておきたいところです。

経済的にゆとりがあるなら、任意加入する分を投資に回したり、貯蓄に回したりしたほうがいいかもしれません。


実現されるか? 年金負担の平等化

◆基礎年金の税方式化とは?

納付率の低下や年金記録漏れ問題などにより、基礎年金の保険料を徴収する現行の「社会保険方式」への国民の信頼が失われつつあります。制度の維持が難しくなっているなか、解決策として、消費税で賄う「基礎年金の税方式化」が検討されています。
 
◆税方式にするとどんなメリットがある?

年金制度改革研究会が、税方式の案の利点であるとして提案している「共通年金(厚生・共済年金の基礎年金部分を含む国民年金を65歳以上の人に原則同じ額だけ給付するというもの)」は、1.財源を保険料から消費税に転換して徴収、2.国内居住10年で受給権が発生、3.移行期間は新旧両制度から加入期間に応じて給付するなどの特徴があります。

大きな利点の1つは、現行制度の存続を危うくしている未納・未加入の問題をほぼ解消できることです。年金記録の管理も単純になり、記録漏れ問題の是正も期待できます。例えば、日本に最低10年間居住すれば誰でも年金を受け取れるようになると、「国民皆年金」の姿に近くなります。40年で満額となるように居住期間に比例して支給する方法を想定しています。

現行の基礎年金制度は保険料を納めた期間に応じて受給額が決まります。最低加入期間の25年(保険料を免除、猶予された期間も含む)に1カ月でも届かなければ無年金となります。満額を受給するには40年間、保険料を払い続けなければならないのが原則です。

居住年数に応じて給付を受けられるようになれば、専業主婦やフリーターなど雇用形態や生活様式の多様性にも柔軟に対応できます。また、受給要件を拠出期間25年から例えば居住期間10年にすることで、無年金者を救う効果も期待しています。

現行制度の「社会保険方式」も年間約19兆4千億円の給付額の3分の1近くはすでに税に依存しています。「税方式」への転換は、残りの12兆円の保険料負担をなくす代わりに税に置き換える方法です。
 
◆世代間の不公平感解消にもなるが…

日本で生活している限り、必ず消費税の負担が生じます。高齢者も相応の負担をするので、現行制度に比べて世代間の公平さの面で優れていますが、半面、年金受給者の側からみれば、引退後も消費税の形で年金制度に追加拠出することになるので、年金の受給額が実質的に減ってしまいます。

給付と負担の関係も不明確となり、「生活保護」と似た性格を持つことも問題となり得ます。最低10年居住を受給条件とすれば、現行制度に比べて財源が膨らむ可能性もあります。

いずれにしろ、国民の負担は免れないのであれば、政府のスリム化、企業の効率化を通じて、国民が安心してお金を消費に回せるように、社会保障全体の信頼を高めなければなりません。


どうなる? 個人向け住宅優遇税制

◆「個人向け住宅優遇税制」延長・拡充へ

自民党の税制調査会は、2008年度税制改正において、「個人向け住宅優遇税制」を延長・拡充する方針を固めています。耐震偽装の再発防止のために審査基準を厳しくした改正建築基準法施行の影響により住宅投資が低迷していることなどの影響もあり、「200年住宅」等への税優遇導入などを含め、改正案が検討されています。

◆固定資産税等の延長へ

新築住宅の固定資産税を半減する特例は、1964年に法整備されてから延長を繰り返し、2008年3月末で期限切れになる予定でしたが、2年間延長されることとなっています。ただし、対象物件は2008年3月末までに購入した新築物件となっています。

また、土地売買で所有権の移転登記などにかかる登録免許税を半減する特例措置も2008年3月末で期限が切れることになっていますが、こちらも延長される方向です。

住宅購入の目的で親から生前贈与を受ける場合に限り、3,500万円まで贈与税を非課税とする特例も2007年12月末で期限切れとなっていますが、延長する方向で検討されています。

このような特例措置がなされない場合、個人の税負担は全体で約3,000億円発生すると推計されています。

◆どういった法案が検討されているのか?

数世代にわたって暮らせる「200年住宅」は、耐久性など国の認定基準を満たせば固定資産税を築後3年間は4分の1にする案を軸として調整する方向で進められています。

また、登録免許税や不動産取得税も控除対象にできるように検討しています。

省エネルギーを促すための改修費用を支援する優遇税制も検討中です。改修にかかった費用の10パーセント相当を税額控除できるようにしたり、固定資産税を3年間半減できるようにしたりする案が検討されています。しかし、財務・総務両省は消極的であり、こちらの優遇税制の創設は難航しそうです。

昨年末の定率減税廃止等で個人の増税感を薄めるためにも、住宅優遇税制の延長・創設に期待したいものです。


公的手続がインターネットで簡単に

◆新システムを開発・導入へ

経済産業省など5省庁は、NTTデータなどの民間企業と組み、企業が納税申告などの公的な手続きをインターネットで簡単に行うことができる新システムを開発するそうです。

2009年1月を目途に導入される予定で、企業にとっては、コスト削減に役立つ仕組みとして期待されています。

◆中小企業のコスト削減に

中小企業では、公的申請を担当者数人がかり行っていることが多いようですが、新システムの導入により、手間が減り、経営の効率化が高まると見込まれます。

対象となる公的申請は、従業員の納税や商業登記、年金、雇用保険などであり、経済産業省、厚生労働省、法務省、社会保険庁、国税庁の5省がネット上に専用のページを作成するそうです。

例えば、納税申告であれば、専用のパスワードやIDを入力し、サイト内で売上高や従業員数、給料などの数字を入力すれば、法人税額や所得税額などが簡単に算出されます。計算結果は自動的に電子申請書に転記され、ネット上で各省庁への手続きが完了します。

企業が支払うシステム利用料は一般のソフトと比較して、2分の1から3分の1に抑えられる予定です。

◆政府も普及率のアップでコスト削減を期待

政府は国や地方自治体への申請手続のオンライン利用率を2010年度までに50%にする目標を打ち出してはいますが、現状ではわずか3%の利用にとどまっています。政府は、新システムの導入により、普及率のアップと窓口対応のコスト削減を期待しています。