人事労務の時事解説(2008年3月号)

人事労務の時事解説 2008年3月号


管理監督者の定義とは

大手ファーストフードチェーンの店長が未払い残業代の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は原告の訴えを認め、会社側に755万円の未払い残業代の支払いを命じました。チェーン店の店長を管理職として扱うべきか、それとも非管理職として扱うべきか、判決は、同種の企業各社に影響を与えそうです。

今回の訴訟は、世間的に関心も高く注目されていました。今、管理監督者の定義が再び問われ始めているといえます。

◆管理監督者の残業代訴訟

過去にも、このような訴訟は数多くありました。代表的なものとしては、「レストラン・ビュッフェ事件」(昭和60年・大阪地裁判決)や「三栄珈琲事件」(平成元年・東京地裁判決)等が挙げられます。いずれの事件も、店長が管理監督者に該当するかどうかが争われましたが、店長がタイムカードなどで出退勤を管理されていたこと、経営方針など重要事項の決定に参画の余地がなかったことなどから、「管理監督者には該当しない」という判決が出ています。

新しいところでは、大手紳士服店店長の残業代請求訴訟で、会社側が600万円の解決金を支払ったケースもあります。

今回の訴訟では、「店長が管理職として経営者と一体的な立場にあり、出退勤の自由や賃金などで一般労働者に比べて優遇されているか否か」が争点になりました。判決は、(1)店長の権限が店舗内に限られる、(2)営業の必要上相当の長時間労働が必要となり勤務時間の自己決定権はない、(3)年収が管理職の待遇としては不十分、との理由から、「店長は権限や処遇からみても管理職とはいえない」としました。

◆管理監督者の明確な定義

厚生労働省の通達によると、管理監督者に当たるかは、(1)労務管理などで経営側と一体の立場にあるか、(2)賃金や勤務形態が優遇されているか等の、職務・職責・待遇を基準として判断されます。明確な線引きがしにくく、総合的な判断が必要になります。

名目的に就業規則や社内規程に定めるだけではなく、現実的に管理監督者といえるかどうか、大局的な立場に立った判断が必要とされているといえます。


「失恋休暇」「バーゲン半休」…ユニークな福利厚生制度

少し難しい、お堅いことばかりが書いてあるというイメージを持ちがちな、「就業規則」。ここに会社のオリジナリティーを盛り込んでみると、従業員の働く意欲のアップに貢献できるかもしれません。

ユニークな休暇制度を採用しているのは、女性を対象にしたマーケティング会社「ヒメ&カンパニー」です。この会社の休暇制度は各種新聞・雑誌等でも多く取り上げられ、注目されていますから、ご存じの方も多いかもしれません。

◆失恋から気持ちを切り替えて仕事を「失恋休暇制度」

ヒメ&カンパニーの就業規則第39条では、失恋のために業務に従事困難な未婚の社員が申し出たときは、年に1回、休暇を与えることが定められています。

この規則は、仕事が手につかなくて失敗するよりはましだ、との発想から、3年前に生まれました。年齢が上になればなるほど失恋時のダメージが大きくなるのが女性心というもの……失恋すると、25歳未満の女性は1日、30歳以上の女性であれば3日の有休を取得することができます。

◆良い物ゲットでモチベーションアップ 「バーゲン半休制度」

また、同社の就業規則第38条では、「バーゲン半休」なるものも定められています。その名の通り、バーゲンに行くという理由で半休が取得できるという制度で、良い物を手に入れてもらい、仕事へのモチベーションにつなげてもらおうという趣旨で設けられた規定です。

初日の早い時間に出かけて行って良い物を手に入れ、それを自慢するのがバーゲンの醍醐味です。会社を休んでバーゲンに行くのは気が引けるという人もいると思いますが、大手を振って会社を休むことができるこの制度は従業員にも好評で、取得率は非常に高いそうです。

◆福利厚生を企業のイメージアップに生かす

これらの制度は、同社の平舘美木社長の「女性が喜ぶものを追求する会社としては、ごく自然な」発想から生まれました。今では、「柔軟な発想をする会社」との評判につながり、より優秀な女性が従業員として集まるようになっています。

結果として、これらの条文は、「女性をターゲットとする」という社のスタンスを示す格好のメッセージとなったのです。

このようなユニークな福利厚生制度が、必ずしもいい結果を生み出すとは限りませんが、従業員のモチベーションアップ、企業イメージの向上に何らかの好影響が出るのであれば、参考にしてみる価値はありそうです。


人材不足は再雇用者にも恩恵?

定年退職者の再雇用制度。以前は再雇用者の仕事は補助的なものが多かったのですが、団塊の世代が退職期に入り人手不足や技能伝承の懸念が強まる中、有能なベテランを本格戦力として定着させて最大限に活用するために、給与や働き方を見直して企業内における中核業務に配置する動きが出てきました。

◆改正高年齢者雇用安定法

2006年に施行された改正高年齢者雇用安定法は、企業に社員の雇用期間を段階的に65歳まで引き上げるよう義務づけました。引上げの方法としては、再雇用を中心とした「継続雇用」のほか、「定年延長」、「定年廃止」の3つがあります。このうち、一般的にとられているのが、定年でいったん従業員を退職させた後、一定の能力があることなどを条件に再雇用するものです。厚生労働省が昨年6月に約8万2,000社を対象に行った調査では、改正法には「継続雇用で対応する」と答えた企業が86%を占めました。

ただし、その待遇は、再雇用では賃金が大幅に減額される上、年金の支給が減額されてしまうケースもあり、働き続けるメリットは小さいと考える退職者も多かったようです。

◆定年退職者再雇用の最近の動き

定年退職者の再雇用制度を導入した大手企業の間で、再雇用者の待遇を改善し、本格戦力として活用する動きが広がってきています。少子高齢化で労働力人口の大幅な減少が予想される中、有能な高齢者の雇用を促進する必要が出てきたためです。

たとえば、ある企業では、再雇用者の年収を最大で従来の2倍の1,000万円に引き上げています。また、1日5時間程度の短時間勤務を可能にする企業もあります。働きやすさを重視する人が退職後も同じ会社で勤められるような、柔軟な勤務体系を導入する動きも広がってきました。

こうした待遇改善の動きが広がれば、昨年初めて1,000万人を超えた60歳以上の就業者がさらに拡大しそうです。少子高齢化問題や、技術継承に課題が残る昨今、各企業が高度な技術を持った有能な人材を有効に活用していく方法を考えていく必要があるといえます。


派遣社員 2008年の動向

4月の改正パートタイム労働法の施行、非正社員を正社員へ登用しようとする世の中の流れなどで、派遣社員のなり手が少なくなっているようです。そのため、派遣業界では売り手市場で人手不足が深刻化しています。

◆人材派遣大手の研修メニュー

派遣会社各社では、優秀な派遣スタッフの囲い込みに躍起になっています。各社とも、派遣社員にとってのメリットのアピールに余念がありません。教育・研修メニューを充実させ、派遣スタッフへの無料研修を拡充してきています。

例えば、パソナグループでは、自社が派遣している店頭販売員向けの研修プログラムを新設。販売キャリアセンターを開設し、店長経験者による無料講座、無料セミナーを実施しています。また、カラーコーディネート、歩き方等のセミナーや、お茶・お花等の講座も行っています。

また、テンプスタッフでは、登録者のためのCAD技術の講習会を開講。3日間のコースで、操作方法を習得するとしています。

◆派遣社員を取り巻く環境

日本人材派遣協会が全国の派遣社員を対象に行ったアンケート調査により、2007年の派遣社員の平均時給が1,417円であったことが明らかになりました。正社員の1日の労働時間=8時間に換算すると、1万1,336円となります。

厚生労働省がまとめた2006年度調査では、派遣社員の平均日給は1万571円でした。調査対象が異なることも考慮に入れなければなりませんが、最近の人手不足を受けて派遣社員の賃金が上昇しているのは間違いありません。派遣社員の賃金の上昇傾向は、2008年も続くと思われます。

日本人材派遣協会のアンケート調査によると、派遣で働いている人の93.4%が女性、平均年齢は34.5歳となっています。時給は1,200円から1,400円未満が最も多く、次いで1,400円から1,600円未満、1,600円から1,800円未満と続きます。もっとも、時給は都道府県によって開きがあります。たとえば、都道府県別では東京が最も高い時給となっており、平均時給は1,604円です。


労働者派遣事業に対する文書指導

派遣業界の不祥事が急増しています。

今年1月、厚生労働省は日雇い派遣最大手の会社に対し、違法な二重派遣や港湾運送業務への派遣を行っていたとして、労働者派遣法に基づき事業停止命令を出しました。また、昨年8月には、日雇い派遣業界2位の会社も、港湾運送業務への派遣で事業停止処分を受けています。

◆文書指導件数62,081件 4年間で10倍に増加

厚生労働省によると、労働者派遣事業に関連して法令違反があるとして同省が文書で指導した件数は2006年度では62,081件にのぼります。2002年度の同件数は600件、単純に比較すると、4年間で10倍に増加していることになります。

文書指導件数が急増した背景には、労働者を派遣する事業所数の大幅な増加があります。2004年に製造業への派遣が解禁されたこともあり、2002年度には全国で19,000強だった派遣事業所数は、2006年度には50,000を超えています。

また、厚生労働省が派遣業界への監視を強めたことも文書指導件数の急増に影響しています。製造業などで「偽装請負」の問題が表面化したことを受け、同省では、指導監督方針として、派遣と請負の区分基準を周知し、偽装請負の解消等に努めていくことを明確にしています。

◆「二重派遣」問題

最近は、偽装請負の問題のほか、「二重派遣」問題も増えています。これは、労働者の派遣を受けた企業がその労働者をさらに別の企業に派遣するもので、労働者と企業の間の雇用・指揮関係があいまいになり、仲介料や手数料が増えて賃金が減る可能性があるため、労働者派遣法で禁じられているものです。

厚生労働省では、二重派遣の防止に向け、派遣先の企業に派遣労働者が働いた場所などを記録する管理台帳の作成を義務づける方針です。労働者派遣法の施行規則を改正し、4月からの実施を目指しています。


メタボリック・シンドローム あなたは大丈夫?

肥満症、高血圧、高脂血症、糖尿病、……こうした生活習慣病は、それぞれが独立した病気ではなく、肥満(特に内臓に死亡が蓄積した「内臓脂肪型肥満」)が原因となって惹き起こされるものだということがわかってきました。内臓脂肪型肥満によってさまざまな病気が起きやすくなった状態を「メタボリック・シンドローム」といい、今では治療の対象として考えられるようになっています。

厚生労働省の平成17年国民健康・栄養調査によると、40〜74歳の男性の2人に1人、同女性の5人に1人がメタボリック・シンドロームか、その予備軍であることが報告されています。

◆メタボリック・シンドロームの診断基準

メタボリック・シンドロームを構成する因子の中でも重要視されているのは内臓脂肪の蓄積で、内臓脂肪の蓄積を必須項目とした診断基準が各国で整いつつあります。

内臓脂肪の蓄積は、具体的には、ウエスト径で判断されます。男性85p以上、女性90p以上であれば、内臓脂肪の蓄積が疑われます。そのほかに血圧・血糖・血中脂質の判定項目が定められており、2項目に該当した場合は、メタボリック・シンドロームと診断されます。

◆特定健康診査の開始

平成20年4月からは、生活習慣病対策の強化を医療費抑制の重要な柱に位置づけた医療制度改革関連法により、メタボリック・シンドロームに着目した新しい特定健康診査・保健指導が始まります。これは、毎年、健康診査によってメタボリック・シンドロームの該当者・予備軍などを抽出し、リスクの高いグループに対し、効果的・効率的な保健指導を行うものです。

◆メタボリック・シンドロームの改善策

メタボリック・シンドロームには、生活習慣が密接に関係しています。生活習慣をちょっと見直すだけで、メタボリック・シンドロームを改善することができます。メタボリック・シンドロームと診断されたら、まずは生活習慣を振り返り改善するところから始めましょう。

たとえば、食事は満腹になるまで食べてはいませんか? 間食をよくとっていませんか? 濃い味付けが好き、緑黄色野菜をあまり食べない、という食生活ではありませんか?また、日頃から運動をあまりしていないのではないですか? アルコールやタバコなどの嗜好品をとりすぎてはいませんか?当てはまる項目が多い人は要注意です。まずは、腹八分目でやめる、階段を利用するようにするなど、簡単なところから改善していきましょう。

食事療法や運動療法を3〜4カ月続けても改善がみられない場合は、医師と相談の上、薬物治療が導入されることもあります。 生き生きと働き続けるためにも、自分の体について、ちょっと考えてみませんか?


勤務医減少に歯止めを! 2008年度診療報酬改定

小規模な公立病院を中心に、病院の医師(以下、「勤務医」)の確保が困難となってきています。勤務医不足により、病院の存続が危ぶまれるケースも増加傾向にあります。医師が安易に開業に走る例が増えているためです。その一因として、勤務医は救急や夜間の産科などの激務が多いわりに、一般的に収入が開業医より低いことが挙げられます。

勤務医の不足は、われわれの生活の安心に直結する問題です。勤務医と開業医の格差是正と、それによる勤務医不足解消を課題とした「2008年度診療報酬改定」について、その原案が明らかになりました。

◆勤務医の報酬引上げ

勤務医に関する報酬が総額1,500億円規模で引き上げられます。開業医から勤務医への所得移転を図り、給与面を改善することで、医師確保につなげようとの考えです。

まず、医科の診療報酬本体部分(医師の技術料などがこれに当たります)が0.42%引き上げられます。これにより、約1,100億円、報酬が上乗せされることになります。さらに、開業医向けの診療報酬から、約400億円程度が委譲されて、勤務医向けの財源に充てられます。

◆開業医の再診料引下げ

現在、同じ病気で2回目以降の診察を受ける場合にかかる再診料は、勤務医が570円(ベッド数200床未満)、開業医は710円です。患者としては、自己負担が少なくて済む病院にかかりたいところですから、勤務医のほうにかかる傾向が強まります。これが勤務医の過重労働につながっているとの批判がありました。

そこで議論の焦点となったのが、開業医の再診料の引下げです。再診料を同程度にすることで、これまで勤務医にかかっていた患者を分散させようという狙いです。

しかし、医師会の反発に考慮し、再診料は下げない中途半端な決着となりました。再診料引下げに代わり、軽度の治療に対する報酬廃止、外来管理加算の適正化、コンタクトレンズ検査料の引下げが提示され、合わせて800億円弱程度の財源が提示されています。

◆格差是正効果はどれほどあるか?

これらの対策により、300床の病院で年間5,000万円の収入増が見込まれます。

しかし、再診料こそが勤務医と開業医の不均衡の象徴ともいわれており、この差額をそのまま残していたのでは、「開業医の再診料に手を付けずに済む範囲で対策をまとめた」との批判が出る可能性もあります。想定した収入増が果たされなければ、今回の中途半端な決着に批判が集まるのは避けられません。

今回の改定が勤務医の減少対策となり得るか、さらなる議論が必要になるといえそうです。


ねんきん特別便 記録訂正わずか7%

誰のものかわからない、宙に浮いた年金記録。およそ5,000万件もある公的年金の記録漏れ問題の解明作業が、出足からつまずいています。年金記録の確認を促す「ねんきん特別便」を送り始めてから約2カ月がたちますが、持ち主が確認された記録は1割足らずです。全容解明の道筋がまったく見えてきません。

◆全面解決ほど遠く…

年金記録の統合作業はとても順調とはいえません。社会保険庁では昨年12月末までに約48万通のねんきん特別便を送付しましたが、記録訂正の申出があったのは2月初旬頃までで約3万6,000件。全体のわずか7%程度です。

年金特別便は、まずは名寄せ作業の結果、基礎年金番号の記録と結びつく可能性のある記録が出てきた人を対象に送られました。この人たちは、「記録漏れ濃厚」と社会保険庁が見込んだ受給者で、記録が回復されれば受け取る年金額も増えるのですから、申出も多く寄せられるだろうと見込んでいたわけです。ところが、申出件数が予想外に少なかったことに加え、専用の電話相談も5万数千件程度にとどまっているなど、記録漏れ問題の全面解決にはほど遠い状態です。

また、保険料を納めた証拠がない人への年金給付を審査する、総務省の年金記録確認第三者委員会の作業も遅れ気味です。昨年末の時点で約3万5,000件の異議申立てがありましたが、何らかの結果が出たものは4%程度にとどまっています。慎重に審議を進めていることもあり、判定作業に時間がかかっているのです。

◆複雑な制度・申請主義が解決の壁に…

ねんきん特別便の予想外の低調ぶりについて、社会保険庁は「年末年始で出足が鈍かった」と分析していますが、果たして理由はそれだけでしょうか。

該当者の反応が鈍い背景には、年金制度の運営方法がわかりにくいという側面があります。

年金記録が正しいかどうかは、自ら確認する必要があります。記録を訂正する場合には、抜けている記録を修正するための証拠を添えて、社会保険事務所に修正手続を求める必要があります。年金制度の仕組みがわかりにくいため、理解できずに放置している高齢者が相当数いるとみられているのです。ねんきん特別便は受け取ったものの、記録統合をあきらめているケースもあります。

今なお、社会保険庁は年金の申立てについて「申請主義」を原則としていますが、このままの「待ちの姿勢」では全面解決はおぼつきません。当事者らしからぬ社会保険庁の体質には、批判が集まっています。

制度の運営や管理の体制を立て直さなければ、延々と同じ混乱を繰り返しかねません。再考が望まれるところです。


生活保護が年金の代わり!? 高齢無年金者問題

「無年金者」「低年金者」と呼ばれる人たちがいます。保険料未納等により受給要件を満たさないために年金をまったく受け取ることのできない人、加入期間が短い等の理由のために年金額が低い人のことです。

高齢期に低所得となり、年金や貯蓄では生活を賄えない人の最後の拠り所となるのが、生活保護です。2005年時点で生活保護を受けている65歳以上の高齢者のうち、50%以上が「無年金者」であるといわれています。これは、公的年金の役割を生活保護が事実上肩代わりしている実態を表しているといえるでしょう。

◆高齢無年金者の現状

生活保護を受けている無年金者は2005年時点で約29万4,000人、1998年度の14万4,000人から7年間で2倍以上に増えています。

低年金のため、年金と生活保護を合わせて受給している高齢者も増加しています。自営業者等と異なり、年金以外に収入を持たないような人は、基礎年金額のみでは生活は困難だからです。調査によると、こうした人の平均年金受給額は月4万6,000円で、生活保護を受けていない人の平均額11万円強の半分以下です。

保険料の納付率低下が問題となっていますが、これにより、将来の無年金者・低年金者の増加や、それに伴う生活保護受給者の増加を懸念する声もあります。現在、生活保護予算は増加の一途をたどる見通しで、2007年度の生活保護予算は2兆6,000億円、15年前の約2倍にふくらんでいます。

◆年金と生活保護の関係

年金額が生活するのに十分でない場合、預貯金がない、勤労が困難である、親類の支援がない、等の条件を満たせば、生活保護の受給対象となります。無年金者・低年金者の多くが、この条件を満たし、生活保護の受給対象となっているのが現実です。

現行の年金制度は、無年金・低年金の高齢者が生活保護に流れることで、「国民皆年金」の前提が崩れ始めています。また、将来の年金給付額の水準が生活保護よりも低い場合に納付意欲に影響を与えるおそれがあること、保険料を納めずに生活保護を受ける人に対する不公平感など、問題点も挙げられています。

無年金者・低年金者の発生を防ぐための一番の対策は、国民年金の保険料納付率向上のための対策をとることです。年金制度改革において、高齢者に対して一定額の所得を保障する制度を設けるといった案も提案されています。無年金者・低年金者の問題は、年金改革論議にも一石を投じることとなりそうです。


「社会的弱者」の就業支援を強化

厚生労働省では、「社会的弱者」と呼ばれる、障害者や母子家庭の母親等の就職を支援するための対策を強化します。

国は、こうした人たちに対し、手当や生活保護の支給などで経済的支援を行ってきました。しかし、高齢化で社会保障費は増える一方であり、支援の受け手が増えれば制度維持自体が困難になることが懸念され始めていました。今回の就業支援強化には、「社会的弱者」と呼ばれる人たちの経済的自立を後押しすることで、社会保障費を圧縮する狙いがあります。また、働く意欲と能力のある人が自立できれば、今後減ることが確実な労働力の確保にもつながると考えられています。

◆障害者の就業支援

厚生労働省は、障害者雇用促進法の改正案を今国会に提出する方針です。具体的には、(1)障害者の法定雇用率を遵守しないと罰金の対象となる企業の範囲を段階的に広げる、(2)障害者就業・生活支援センターを現在の135か所から2011年度までに400カ所に増設する、(3)社会福祉法人職員などが職場を訪問して障害者と起業に助言するジョブコーチの数を2011年度までに現在の3倍以上の5,000人に増やす、といった内容が盛り込まれることになります。

障害者雇用促進法では、従業員56人以上の企業の場合、従業員数の1.8%以上の障害者を雇用するよう義務づけています。現行法では、目標に達しない場合、従業員数301人以上の大企業には罰金が科されます。この対象範囲が、段階的に従業員数101人以上の中小企業にまで広げられることになります。現在、目標未達の場合に罰則対象となる企業数は約1万2,000社、うち約7,600社が実際に罰金を科されています。対象が改正案どおりに拡大されれば、現状の雇用率が維持された場合、新たに約1万7,000社が罰金を科されることになる見込みです。

◆母子家庭の母親の就業支援

母子家庭の母親の85%は仕事をしていますが、約半数はパート勤務です。世帯収入の平均も年200万円程度と低いため、正社員登用への足がかりが必要視されていました。

2008年度から、母子家庭の母親の就業形態をパートから正社員に切り替えた中小企業に、一時金として15万円が支給される制度が導入され、正社員登用への支援が始まります。また、収入のない職業訓練中に生活費を無利子で貸す制度が拡充され、就職後の返済期間が現行の10年から20年に延ばされます。

◆生活保護受給者の就業支援

福祉事務所やハローワークの担当者と連携して職業訓練などの計画を作り、就労を支援する事業を積極化していくとしています。