人事労務の時事解説(2008年4月号)

人事労務の時事解説 2008年4月号


企業が求めている新入社員の「質」とは?

◆中小企業ほど新入社員の質が低下している!?

日本生命保険では、新入社員に関する企業へのアンケートによる調査結果を発表し、約4割の企業が、5年前よりも新入社員の質が低下したと感じていることが明らかになりました(調査は今年1月に実施。全国の2,669社から回答)。

企業全体では、新入社員の質が「向上している」と回答した企業{42.5%)と「低下している」と回答した企業(42.6%)はほぼ同じ割合でしたが、従業員300人以下の中小企業では「向上している」(37.7%)が「低下している」(44.2%)を上回り、従業員が少ない企業ほど新入社員に対する評価が厳しいという傾向がわかりました。

◆なぜ質が低下していると感じるのか

質が低下した理由(複数回答)としては、上位から「コミュニケーション能力・協調性の不足」、「向上心・積極性の不足」、「忍耐力の不足」の順となっています。それらの原因としては、「小中学校時代の教育に問題がある」という指摘が目立っています。

◆採用時に重視する能力は?

では、企業の採用担当者は、新入社員の採用時に何を重視しているのでしょうか。

ソフトバンク・ヒューマンキャピタルでは、2008年度の入社予定者と採用担当者の意識調査結果を発表しましたが、それによると「コミュニケーション能力」を最も重視しているとの結果が出ました(調査は今年2月に、人事採用担当者100人と入社予定者400人を対象に実施)。

企業の採用担当者が入社予定者に期待している能力は、上位から「コミュニケーション能力」、「主体性」、「実行力」となっています。入社予定者が最も重視している能力は、上位から「コミュニケーション能力」、「実行力」、「柔軟性」となっています。

上記2つの調査結果からもわかる通り、「新入社員の質の高さ=コミュニケーション能力の高さ」と考えている企業が多いようです。


異動の季節 業務引継ぎを円滑に進めるには?

すっかり春めいてきました。フレッシュな新入社員がやってくる時期であるとともに、異動の時期でもあります。部署を異動する人、担当替えとなる人は、後任者に業務を引き継ぐことになりますが、この引継ぎがうまくいかないと、社内だけではなく取引先などにも迷惑をかけるおそれがあります。引継ぎを円滑に進める極意はないものでしょうか?

◆上手に仕事内容を伝達する

引継ぎは、これまで携わってきた仕事内容や仕事の進め方を後任者に伝達することです。後任者が困らないように、上手に伝達することが求められます。後任者に伝えたいのは、まずは1週間などの一定時間軸でのおおまかな仕事の流れで、取引先との商談中によく出る話題や取引先が気にする点などの情報も重要です。

後任者に伝達する際のコツは、1度に伝えるのは話したいことの8割程度にとどめること。1度にすべてを話しても、伝わりにくかったり、後任者の理解が追いつかなかったりするためです。仕事を引き継いだ後、後任者から疑問や質問が寄せられたときに随時対応したほうが効率的です。
営業担当などの場合、資料の引継ぎや取引先の紹介などに十分な時間が割けないこともあるでしょう。短時間でおおまかなことしか伝達できない場合は、過去の付き合いや取引の経緯などを優先的に伝えることが大切です。

また、名刺なども含め、付き合いの中で得た情報は、後任者が仕事しやすいように提供するのが原則です。相手先の特徴、現在の仕事の進捗状況などについては、後任者だけでなく、社内の上司にもきちんと伝えます。上司が後任者のサポート役に回ることが多いからです。

◆業務のマニュアルやバイブルを作成する

会社組織には異動が付きものですが、仕事を引き継ぐ側も引き継がれる側も、本来の業務の傍ら、引継ぎ業務を十分にできるとは限りません。そこで、仕事のやり方を誰にでもすぐ伝えられるように、日頃から業務のマニュアルやバイブルを作っておくのが効率的です。これらには、普段の仕事の流れや相手先の特徴、必要とされる知識、業界の最新動向などをまとめておきます。

◆引継ぎ後にフォローを入れることも大切

業務を引き継いだ後、後任者が困ったときなどは、自分の新しい業務に支障が出ない範囲で後任者を手助けすることも必要です。例えば、担当を外れた後、かつての取引先と出会ったときなどにフォローを入れておくことは、後任者にとってありがたいものです。

なお、担当を外れた後に、取引先との付き合いが仕事を超えたものに発展することは問題ありませんが、そこでの付き合いで仕事に関係する話が出たら、後任者にきちんと伝えるなどの配慮が必要です。


今年度から新設される助成金関連情報

◆非正社員の正社員化を支援する「中小企業雇用安定化奨励金」

厚生労働省は、中小企業によるパート社員・契約社員・派遣社員などの正社員化を支援するための助成制度を今年度から開始することを明らかにしました。非正社員は、今や働く人の3人に1人まで増加し、正社員との待遇格差が問題となっています。同省では、雇用の安定化を図りたいとしています。

この助成制度の名称は「中小企業雇用安定化奨励金」(仮称)です。4月の時点で従業員が原則300人以下の中小企業を対象としており、非正社員を正社員化する制度を就業規則に盛り込み、実際に正社員化すれば35万円が支給されるものです。さらに、正社員になった人が3人以上出た場合、10人を限度に1人につき10万円が支給されます。

また、同省では、非正社員の待遇改善に向けた指針の策定や、日雇い派遣の規制強化を含む労働者派遣法の改正も検討するとしています。

◆長時間労働の是正などを図る「職場意識改善助成金」

厚生労働省は、労働時間等の設定の改善(過重労働の是正、年次有給休暇の取得促進等)に向けた職場意識の改善に積極的に取り組む中小企業に対して、「職場意識改善助成金」を創設する方針を明らかにしました。

中小企業が、職場の意識改善を図るために「職場意識改善計画」(実施体制の整備、職場意識改善の措置、労働時間等の設定の改善のための措置を盛り込むことが必要。実施期間は2年間)を策定し、効果的に実施したと認められる場合に、総額で150万円支給されるものです。

なお、支給される中小企業は、以下のいずれかに該当するものです。

・資本金の額または出資の総額が3億円(小売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主
・常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主


「オモシロ手当」の導入で業績アップにつながる?

◆管理職に「部下手当」を導入!

上司が部下との付き合いを円滑に進めるのはなかなか難しく、コミュニケーションを図ろうと仕事が終わった後にお酒を飲みに行ったりする場合などは、どうしてもお金がかかってしまうものです。
マンション分譲大手の日本綜合地所は、今年の4月から、部下との会食や冠婚葬祭のための費用に充ててもらう目的で、管理職を対象に「部下手当」を導入すると発表しました。“フトコロ”の心配をせずに部下とのコミュニケーションを積極的に図ってもらい、間接的に業績アップにつなげるのが狙いだそうです。

◆支給対象・支給額はどうなっている?

この部下手当の支給の対象となるのは副課長以上の約60名(部長級23名、それ以外の管理職39名)で、毎月の支給額は月10万から30万円の範囲となるそうです。部下が20名以上の部長級で「30万円」、部下が19名以下の部長級で「20万円」、それ以外の管理職(課長、副課長)は「15万〜10万円」となります。

この部下手当は給与の一部として支給されますが、管理職手当などとの違いを明確にするため、通常の給与の振込口座とは別の口座に振込を行うなど、工夫するそうです。

同社では従来、取引先との付き合いなどの費用は経費として処理してきましたが、部下や同僚との社内の飲み会は自己負担となっていたそうです。この部下手当の導入により、年間約1億5,000万円の負担増を同社では見込んでいます。

◆優秀な教授に最高20万円の特別手当

東北大学では、今年の4月から、研究や社会貢献活動で業績を上げた教授を「優秀教授」(ディスティングイッシュト・プロフェッサー)として選出し、最高で月額20万円の特別手当を支給することを決めたそうです。

国内外から優秀な人材を確保して大学の競争力を高めるのが最大の目的で、全国の国立大では初めての試みだそうです。2008年度は、約800人いる教授の中から各部局長の推薦をもとに約25人を選出して、それぞれ任期は3年になるとのことです。

大学間の人材獲得競争が激化している今、同大学では、「能力のある人物は高く処遇し、その姿勢を世界に示したい」と話しています。

日本綜合地所も東北大学も、それぞれの手当に見合うだけの効果(またはそれ以上の効果)を期待しているようですが、果たして結果はどうなるか、注目したいところです。

皆さんの会社でも参考にされてみてはいかがでしょうか。


リース会計の基準の改正が企業に及ぼす影響は?

平成19年度の税制改正で、新しいリース取引に係る税務上の取扱いが規定されました。これにより、平成20年4月1日以降、リースに関する会計基準が変更になります。

この改正は、一般報道等ではあまり注目されていません。ところが、今後の企業経営に大きく影響する可能性があるようです。

◆リース会計基準改正が持つ意味

リース取引は、中途解約ができる「オペレーティング・リース取引」と、中途解約できない「ファイナンス・リース取引」に分類されます。さらに後者は、いずれ所有権が移転する「所有権移転ファイナンス・リース」と、移転しない「所有権移転外ファイナンス・リース」に分けられます。

どちらのファイナンス・リースも、固定資産を購入したときと同様に、貸借対照表にリース資産とリース債務を計上し、損益計算書では減価償却費と支払い利息相当額を費用として落とす、いわゆる売買処理が原則的な処理方法になります。

ところが、現行、所有権移転外ファイナンス・リースにおいては、原則の売買処理のほかに、例外処理として賃貸借処理が認められています。この例外処理は日本国内では非常に多く利用され、とても“例外”と呼べる状況ではないのです。この処理は、「投資家等から財務状況が見にくい」「違う会計基準を採用していることにより、財務諸表の比較がしにくい」「国際的には所有権移転外ファイナンス・リースについては売買処理を行っており、国際的な比較がしにくい」など、多くの問題点が指摘されていました。

そこで、今回の改正により、この例外処理が廃止され、ファイナンス・リースについては、一律、売買処理が適用されることになるのです。

◆改正後の影響と対応策

リース取引の中でも、所有権移転外ファイナンス・リースは、「設備投資時に多額の資金を必要としない」「事務処理が簡単」などの理由から、日本国内では多く利用されています。しかし、今回の改正を受け、今後は貸借対照表上にリース資産・リース債務が計上されるため、自己資本比率の低下などが起こります。

また、リースにするか、借入金で購入するかは、財務諸表上での違いはほとんどなくなり、購入資金を銀行から借りるかリース会社から借りるか、といっただけの差になってしまうともいえます。企業としては、設備投資を行う際、貸借対照表に及ぼす影響や資金繰り、その他のリスク等を考慮したうえで、購入にするのか、リースにするのかを検討していかなくてはならないでしょう。

今後は、毎年引き上げられる社会保険料や、度々引き上げられる雇用保険料等ばかりではなく、今回のリース会計基準改正のような税制面の細かい改正も念頭に置いておかなくてはなりません。そのうえでの総合的な資産管理が、先を読む企業経営には必要なのかもしれません。


“名ばかり管理職”問題−マクドナルド判決のその後

◆マクドナルド判決後の同社関連の動き

日本マクドナルドが直営店の店長を管理職とみなして残業代を支払っていないのは違法だとして、埼玉県内の男性店長(46歳)が未払い残業代など約1,350万円の支払いを求めていた訴訟において、1月下旬に東京地裁は「店長の職務内容から管理職とはいえない」として同社に約755万円の支払いを命じる判決を下し、新聞やテレビなどで大きく報道されました。

その後、マクドナルドの元店長3人が残業代の支払いを求めて東京地裁へ提訴することも明らかとなっており、さらには別の元店長数人も訴訟提起を検討しているとのことで、今後同様の動きが広がっていけば、約1,700人の店長を抱えている同社の経営に大きく影響を与えかねないと思われます。

◆他の業界でも制度見直しの動きが

他の業界でも、上記判決の影響を受けてか、様々な動きがみられました。

2月上旬に、コンビニエンスストア最大手のセブンイレブン・ジャパンは、管理職と位置付けている直営店の店長に対して3月から残業代を支払う方針を示しました。大手小売業や外食業で制度を見直したのは、マクドナルドに残業代の支払いを命じた東京地裁の判決後、初めてのことだそうです。

また、2月下旬には、東日本でレストランチェーン店を運営するカルラも、店長の職務内容を洗い直して管理職から外し、手当等を変更して残業代を支払うことを決定しました。これもマクドナルド判決を受けたものとみられており、同社以外にも追随する外食企業が出てくる可能性があるかもしれません。

◆まだまだ出てくる!?「名ばかり管理職」「偽装管理職」

労働者や労働組合の権利擁護活動を行っている日本労働弁護団では、2月中旬に「名ばかり管理職」(十分な裁量や手当がない肩書きだけの管理職)に関する電話相談を初めて実施したところ、1日だけで130件以上の相談が寄せられたそうです。「管理職なのに部下がまったくいない」「高卒1年目ですぐに管理職にさせられた」「遅刻をすると減給されてしまう」「管理職候補だという理由だけで残業代が支払われない」などといった事例があったようです。

「名ばかり管理職」「偽装管理職」の問題はたいへん根が深く、まだまだ終わらないようです。


相次いで明らかになった残業代不払いの事例

◆ミズノは18億円以上の不払いが発覚

残業代不払いの疑いで是正勧告を受けて社内調査に乗り出していたスポーツ用品大手のミズノは、従業員約2,000人に対する残業代の不払いが、過去2年間で合計18億6,000万円あったと3月初めに発表しました。

同社では「労働時間改善委員会」を設置して勤務時間を適正に把握する体制を整えるほか、不払い分の残業代を3月の給与振込み時に一括で支払うとしています。

◆近畿大学は1億円不払いで書類送検

近畿大学は、2007年1月から半年間にわたって事務職員の残業代不払い(総額約1億円)を続けていたとして、同大学と元人事部長が労働基準法違反容疑で大阪労働局に書類送検されました。

不払いは元部長の独断によるものだったとされていますが、同大学が2003年にも是正勧告を受けていることから刑事責任を問うべきだと判断され、法人にも罰則を科す両罰規定が適用されました。

◆一向になくならないサービス残業

厚生労働省の発表によると、2006年度に労働基準監督署からサービス残業があったとして是正指導を受けた企業数(その支払額が1企業当たり合計100万円以上となったもののみ)は1,679社で、対象労働者数は182,561人、支払われた残業代は総額で227億円1,485万円(企業平均1,353万円、労働者平均12万円)となっています。企業数は前年度比155社増で過去最高でした。

なお、1企業当たり1,000万円以上の支払いが行われた企業数は317企業(全体の18.9%)、対象労働者数は120,123人(全体の65.8%)、支払われた合計額は181億5,200万円(全体の79.9%)です。
是正指導が繰り返し行われているにもかかわらず、サービス残業はいっこうになくなっていないようです。


“成果主義”導入でリハビリの質向上を促す

この4月から、診療報酬に初めて“成果主義”が導入されます。対象となるのは、「回復期リハビリ病棟」(約3万6,000床)。患者の病状の改善度合いに応じて医療機関が受け取る報酬に差がつけられ、成果が上がっている病院では患者の入院費が高くなります。

病院にリハビリの質の向上を促すことで長期入院を減らし、結果として無駄な医療費を抑える狙いがあります。厚生労働省では、今後、同様の方式を他の分野にも広げていくことを検討するとしています。

◆成果主義導入の背景

現行では、医療の質は病院の施設面積・専門職数などにより外形的に判断され、基準以上であれば診療報酬に加算される方式となっています。治療結果は反映されていませんでした。

前述の「回復期リハビリ病棟」は、脳卒中などの後遺症を改善するために集中的にリハビリテーションを行うための病棟です。現行では、回復期リハビリ病棟の入院料は1日につき16,800円(現役世代の自己負担は原則3割)とされており、成果がなかなか上がらず入院が長期化しがちな病院でも、成果がすぐに出て早く退院できる病院でも、同じでした。

今後は、患者の回復度合いが高い病院の入院費は高くなり、低い病院は安くなります。これにより、各病棟のリハビリの質の向上が見込めるとされています。

◆成果主義導入後の入院料

1.在宅復帰率、2.重症度の高い患者の入院率、3.退院時と入院時での日常生活機能の改善率などを指標として、病棟ごとに患者の平均データをとり、一定の数値を満たした病棟には報酬を上乗せし、未達成なら現行より引き下げられます。

入院料が上がるのは、新規の入院者のうち15%以上が重症患者、退院者のうち他の病院に転院せず自宅に戻れた人が60%以上の病棟で、16,900円となります。一方、この条件に当てはまらない病棟の入院料は15,950円に下がります。入院料が上がる病棟のうち、患者の回復度合いが総じて高いと認められた病院に入院すると、入院費がさらに1日につき500円高くなり、17,400円となります。
これらは4月から実施されますが、10月までは現行基準の病院も残すとされています。


障害年金の受給に立ちはだかる高い壁

「年金は老後のためだけではありません」。これは、国が若年層への公的年金加入を呼びかける際のうたい文句となっています。実際、ケガや病気で障害を負った人を対象とする障害年金は、現役世代でもお世話になる可能性のある年金です。

しかし、制度の認知度が低いためか、請求漏れが起こりやすく、請求後も受給の可否や金額をめぐって思わぬ壁にぶつかるケースも多いようです。

◆申請主義ゆえの問題点

18歳の時に交通事故により右足膝下を失い、30歳になってから障害年金の障害等級2級に該当することを知り、申請をした――。

こんなケースを想定してみましょう。年金の時効は5年ですから、20〜25歳までに受給できたはずの年金利益を取り戻すことはできません。逸失利益は、2級792,100円の5年分で、約400万円に達することになります。

公的年金は「申請主義」ですが、老齢年金では58歳には「年金加入記録のお知らせ」、年金が受け取れる年齢には「裁定請求書」が届くなど、保険者からの注意喚起があり、報道等によりその存在は広く認知されてきています。しかし、障害年金にはこのような仕組みもなく、制度の存在を知らない障害者が多いといわれています。

障害年金の対象自体はかなり幅広く、視力や聴力はもちろん、精神や肢体の障害、内臓疾患まで含まれます。また、腎不全で人工透析を受けている人やがん患者なども受給できる可能性があります。
公的福祉サービスを受ける際に必要な「身体障害者手帳」の等級とは、基準が異なることにも注意が必要です。対象自体が幅広いゆえに、請求漏れを起こしているケースも多いものと思われます。

◆あいまいな等級認定と医師の不慣れに問題も

公的年金の中でも、適切な書類を準備し、適宜申請するのが最も難しいのが障害年金だといわれています。

障害年金の場合、初診日の証明が重要なポイントになりますが、医師法上のカルテ保存期間は5年であるために、病院を転々とした人などは記録が廃棄されていて初診日の証明ができないことがあります。

また、等級認定は、視力と聴力以外は基準があいまいで、判断する人によってぶれやすいといえるほか、主治医が障害年金の請求に不慣れで認定の根拠となる診断書に重要事項の記入漏れなどのミスをしてしまっているケースも少なくありません。

これらのことを考えると、障害年金を正しく受給するうえで重要なポイントになってくるのは以下の点でしょう。

・診察券など、初診日の根拠となるものをきちんと保管すること
・申請者側が診断書の隅々まで目を通し、確認すること
・事前によく情報を集め、不本意な裁定を受けても簡単に受給をあきらめないこと


国家資格としてのキャリア・コンサルタント新設へ

厚生労働省は、就・転職時の職業選択、職業能力開発に関する相談に応じる「キャリア・コンサルタント」の国家資格を新設する方針を固めました。

転職市場の拡大などに伴い需要が急増していましたが、民間の資格が10以上も乱立しており、資格取得者間の能力格差などが問題となっていることから、公的資格の創設により質の向上を図る必要があると判断されたようです。

◆キャリア・コンサルタントの現状

厚生労働省では、個人の主体的なキャリア形成や求人と求職の効果的なマッチングを支援するため、キャリア・コンサルティングを担うキャリア・コンサルタントの養成を推進しています。特に、2002年からは、キャリア・コンサルタントを5年間で5万人増員する計画を立て、特に若年者の雇用情勢改善を目指してきました。

また、民間機関が実施するキャリア・コンサルタントに係る能力評価試験をその雇用する労働者に受けさせる事業主に対して、キャリア形成促進助成金(職業能力評価推進給付金)を支給することにより、キャリア・コンサルタントの養成を支援しています。

一般に、キャリア・コンサルタントは求職者や転職を考える人の相談に乗ったり、助言をしたりするため、企業の人材開発担当や公共職業安定所などで働いている人が多いようです。

◆資格試験の概要

厚生労働省では、職業技能開発促進法に基づく国家資格である「技能検定」の1つとして「キャリア・コンサルティング」を追加する方針だそうです。

検定試験は筆記と実技により行われ、上級者向けの1級、中級者向けの2級を設け、国が指定する民間機関により実施されます。1回目の試験は、来年度中に行われることとなっています。

◆ジョブ・カード制度導入のカギを握る

政府は、来年度、若年者や母子家庭の母親らの就職を支援する「ジョブ・カード制度」を導入する予定です。ジョブ・カードとは、ジョブ・プログラム(企業実習と座学を組み合わせた訓練)の修了証のほか、職務経歴・教育訓練経歴、取得資格などの情報をまとめたもので、求職活動時に活用して求職者と求人企業とのマッチングの促進を図るものです。このジョブ・カードの交付に大きく関わるとともに、カード記入をすることになるのが、キャリア・コンサルタントです。

来年度、ジョブ・カード制度の一環として、キャリア・コンサルタントによる無料相談が始められる予定です。したがって、キャリア・コンサルタントの質や能力の向上が、ジョブ・カード制度導入成功のカギを握っているといえます。今回、国家資格が新設された背景には、キャリア・コンサルタントの質や知名度の向上といった目的のほかに、ジョブ・カード制度導入をスムーズに行うためといった狙いもあるようです。

雇用情勢改善のため、広い意味で、今後のキャリア・コンサルタントのあり方が注目されることになりそうです。