人事労務の時事解説 2008年5月号

 

保護される企業の「営業秘密」の範囲が拡大する可能性
 
◆年内にも指針を抜本的に見直し
 
経済産業省は、法律で保護する企業の「営業秘密」の管理手法の目安を示す指針を抜本的に見直し、年内にも改定する方針です。この見直しにより、これまでよりも幅広い範囲の情報が営業秘密として認められる可能性があります。
 
◆現在の「営業秘密」事情
 
不正競争防止法では、従業員が営業秘密を故意に漏らした場合などに刑事罰を科すことができるほか、被害を受けた企業が損害賠償や差止請求をできるとしています。保護の対象になる営業秘密については、経済産業省の「営業秘密管理指針」で定義された、以下の3つの要件を満たす必要があるとされています。
 
(1)機密管理性:施錠保管するなど秘密として管理している
(2)有用性:事業に有用な技術・営業上の情報である
(3)非公知性:公然と知られていない
 
法律だけでは営業秘密として保護される情報の範囲がはっきりしないため、2003年に、営業秘密と認められるのに必要な企業の管理手法などを例示した指針がつくられました。この指針では、営業秘密の「望ましい管理水準」として、情報へのアクセス制限や特定の管理者による施錠、パソコン保管時のパスワード管理などが列挙されています。
 
指針に法的拘束力はありませんが、秘密漏洩事件に関する裁判では、企業が指針に基づいた管理をしていたかどうかが、営業秘密と認定されるための重要な判断材料となります。指針に沿った管理をしていなかったため、漏れた情報が営業秘密と認められなかった例も多くあります。
 
◆見直しの内容
 
今回の見直しでは、企業側からの「これまでの指針は一律に高い管理水準を求めすぎている」との批判を受け、業種や企業規模に応じた弾力的な基準に改めることが検討されています。
 
具体的には、商品の研究開発や試験に長い時間がかかり、開発に失敗するリスクも高く、情報を幅広く企業秘密として認めて保護しなければ研究開発意欲をそぐおそれのあるバイオテクノロジー・医療分野などでは管理水準が下げられます。
 
また、中小零細企業も緩和の対象となる見通しです。特に中小企業などから不満の大きかった、管理の際の施錠やパスワード設定、社内での独立した秘密管理部署の設置などについては、削除したり条件を付けたりするなどして管理水準を緩和することが検討されています。
 
こうした見直しにより、従来よりも幅広い範囲の企業情報が営業秘密として保護される効果が期待されていますが、一方で、他社の企業情報等について、これまで以上に慎重に取り扱う必要が出てくるかもしれません。
 
 
各業種に広がるパート・契約社員等の正社員化の動き
 
◆改正パート労働法が施行
 
非正規雇用労働者が働く人の3人に1人を占めるまでに拡大しているなか、4月1日から改正パート労働法が施行されました。同法では、パート労働者の通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置を講ずるように事業主に義務付けています。
 
厚生労働省が発表した「労働経済動向調査」(2月)の結果によれば、過去1年間に正社員以外から正社員に登用した実績のある事業所の割合は41%となっており、特に製造業、飲食店、宿泊業、サービス業などでその割合が高くなっています。今後の方針については、64%の企業が「正社員に登用していきたい」としています。
 
改正法の施行を機に、非正社員を正社員化する動きはますます広がっていきそうです。
 
◆パート・契約社員を正社員に
 
東京都に本社を持つ日用雑貨販売大手の株式会社ロフトでは、パート社員・契約社員のうち、今後、希望する者を正社員としていくそうです。同社が雇用しているスタッフは約3,300人で、そのうち正社員は約400人。1年契約の社員は280人、半年契約の社員は2,650人で、そのうちの2,350人が正社員になることを希望しているそうです。
 
なお、新規採用者については、6カ月間の見習い期間を経て、正社員か有期雇用かの選択を行います。
 
ちなみに、正社員化に伴う同社の総額人件費は、約1割程度増加する見込みだそうです。
 
◆製造大手では派遣社員を直接雇用などに切替え
 
また、派遣社員を多く抱えるキヤノン本体・グループ18社では、子会社を含めた工場などの製造現場で働く約1万2,000人の派遣社員の受入れを年内にも全面的に打ち切り、半数を直接雇用の期間社員、残りの半数を請負会社との契約に切り替えること発表しました。
 
同社は以前から『偽装請負』があるとして労働局などから指導を受けており、派遣契約への切替えをすすめていましたが、直接雇用と請負とに再編する方針を決めたようです。
 
建機製造トップのコマツでも、2009年3月末までに工場で働く派遣社員全員を期間社員に切り替える方針を明らかにしています。
 
 
処分決定前の自宅謹慎期間を無給扱いにできるか?
 
◆重要情報を他社へ漏洩!
 
ある会社の社員が会社の重要情報を他社へ漏らしてしまい、処分決定まで自宅謹慎するように会社から命じられました。1週間の謹慎後、減給処分となりましたが、会社は「謹慎中は無給」と言い渡しました。就業規則には謹慎に関する規定は特になく、社員は納得できない様子です。
 
◆規定がなくても謹慎処分に付すことは可能
 
社員の行為が就業規則で定めた懲戒事由に該当する場合、会社は処分内容を決定します。処分決定をする前の段階として「自宅謹慎」や「自宅待機」を命じることがありますが、就業規則にこれらの扱いに関する規定がない場合、そのような謹慎・待機命令を下せるのかという問題が生じます。
 
大企業に比べ中小企業では、就業規則に謹慎に関する扱いを明記していないところが多いかもしれません。結論から言うと、そのような規定がなくても、処分決定前の自宅謹慎を命じることは、会社の指揮命令権の一環である業務命令として可能です。
 
会社の業務命令として自宅謹慎を命じた場合、社員が「働きたい」と言っても会社はこれを拒否することができます。会社には社員の行為が懲戒事由に当たるのか調査する必要があり、職場秩序を維持するためであれば当該社員に自宅謹慎を命じることもやむを得ないと認められるためです。
 
◆「謹慎」の付与名目によって異なる賃金支払義務
 
処分決定前に自宅謹慎を命じる場合の扱いをめぐる裁判には、「懲戒処分ではなくても、会社側に職場秩序維持の理由などがある場合」に謹慎を命じることができるとしたものの、このような場合の自宅謹慎は当面の職場秩序維持の観点からとられる一種の職務命令であることから、使用者には謹慎期間中の賃金の支払義務があると判断したものがあります(日通名古屋製鉄作業事件・平成3年7月22日名古屋地裁判決)。
 
他方、謹慎命令が、懲戒規定に基づいた「処分」として出されたものならば、謹慎期間中は無給でもよいとされています。例えば、調査のために1週間休むように命じた後、懲戒処分として再び1週間休むように命じた場合、後者の期間は無給となります。
 
しかし、処分対象の社員に会社内で強い権限があれば、安易に証拠をもみ消すことができるおそれもあります。前述の名古屋地裁判決は、このような場合には「不正行為の再発、証拠隠滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由」があるとして、例外的に処分決定前の謹慎でも無給にできると判断しています。ただし、この要件は厳格で、該当するケースはかなり限られます。
 
◆この問題に関するポイントは?
 
 ポイントは次の通りです。
1.規定がなくても、会社は業務命令として自宅謹慎を命じることができる。
2.自宅謹慎が懲戒処分として会社が命じたものである場合は、当該期間は無給でよい。
 
 
企業の外国人雇用をめぐる状況,制度改正の動向
 
◆昨年10月から改正雇用対策法が施行
 
改正雇用対策法が昨年10月1日から施行されていますが、この改正の目的の1つは、今後見込まれる労働力不足に対応するため、若者や外国人を積極的に活用していくということにあります。
 
上記改正法には、外国人労働者に関する雇用管理等に関する事項が盛り込まれており、外国人労働者の適正な雇用管理の推進のために、事業主に外国人の雇用状況等の届出義務を課し、国に外国人の雇用管理の改善等について努力義務を求めているのが大きなポイントです。
 
◆「在留カード」発行で外国人情報を一元管理へ
 
外国人に関しては、現在、「在留カード」(仮称)の発行が検討されています。
 
鳩山法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会は、現行の「外国人登録証」を廃止し、新たに「在留カード」を発行して外国人の情報を一元管理できるようにする在留管理制度の見直し案を提言しています。また、この見直し案には、在留期間の上限を現在の原則3年から5年に延長することも盛り込まれており、法務省は、来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針とのことです。
 
これらの改正が行われた場合、企業における外国人雇用にも影響していくでしょうか。
 
◆外国人研修生・技能実習生の保護拡大へ
 
また、政府は、外国人研修・技能実習生の保護を拡大する方針を明らかにしています。
 
母国語で相談できる電話窓口を設置したり、受入れ先企業が倒産した場合であっても研修を続けられるよう支援したりするほか、労働環境を改善するための新たな在留資格の導入などが検討されています。
 
これらの施策については、法務省、厚生労働省、経済産業省などの関係省庁が連携して、2008年度から順次着手していくそうです。
 
◆ハードルが高い外国人留学生のフルタイム採用
 
独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によれば、卒業後の外国人留学生を過去3年間にフルタイム社員として採用したことのある企業の割合は9.6%だったそうです。従業員300人以上の企業では36.3%でしたが、中小企業ではこの割合が大きく下がります。
 
採用企業の理由は、上から順に「国籍に関係なく優秀な人材を確保」「職務上の外国語の必要性」「事業の国際化」となっています。
 
 
上場企業の法規制は4月からはこう変わった!
 
◆4月から始まった制度
 
この4月から、企業に関係する様々な法制度が変わっています。改正パートタイム労働法の施行、改正保険業法の全面実施、金融機能強化法の新規適用の終了、内部統制報告制度の導入、上場企業の四半期財務報告の義務化などです。
 
ここでは、「内部統制報告制度の導入」と「上場企業の四半期財務報告の義務化」について、簡単にみていきたいと思います。
 
◆内部統制報告制度の導入―決算書の信頼性を高める
 
内部統制報告制度は、経営者に社内管理体制の自己点検を義務付ける制度であり、粉飾防止など決算書の信頼性を高めるのがねらいとされています。今回の制度は、2002年に米国で巨額粉飾事件をきっかけに制定された企業改革法(SOX法)を参考に作られており、「日本版SOX法」とも呼ばれています。
 
制度の導入対象企業はすべての上場企業です。経営者は、内部統制が適正に整備され、有効に機能していることを示す「内部統制報告書」を作成しなければなりません。信頼性の高い決算書を作成するための社内管理体制が整っているかどうかを毎期点検し、その報告書を有価証券報告書と併せて提出します。報告書には、外部監査人による監査証明も必要です。
 
経営者は、内部統制に問題がなければ「有効」と明記し、粉飾につながりかねない問題が見つかれば「重要な欠陥がある」と記載し、情報開示を行います。なお、期中に不備があっても、期末日までに直せば有効となります。
 
◆上場企業の四半期財務報告の義務化―企業情報の信頼性を上げる
 
上場企業の四半期開示は、リスクの高い企業の開示頻度を上げる必要性から、1999年に新興企業向け東証マザーズの創設に伴って始まりました。その後、政府の要請もあって、上場企業全体の企業開示向上策として、東証独自の開示ルールとして義務化されましたが、4月からはこれが法制度として義務付けられました。
 
これにより、売上高や利益などの財務情報が3カ月単位できめ細かく開示されることになりました。また、四半期報告には監査法人によるレビュー(簡易の監査)も義務付けられたほか、「ゴーイングコンサーン」と呼ばれる会社の継続可能性についての注記なども求められるようになり、情報の信頼性・量が増しています。
 
業績のトレンド変化がこれまでよりわかりやすくなるとみられていますが、株価が短期の業績によって左右されやすくなるという指摘もあります。
 
◆企業経営への影響は?
 
今回の制度改正・導入では、きめ細かな情報開示による業績評価が市場にどれだけ広がり、それが企業経営にどう影響するかが注目されています。しかし、上場企業にとっては、開示すべき情報の増加や自己点検の必要等、負担増が懸念されます。監査法人との協力等、コスト負担の問題を含めて、まだまだ対応に追われることになりそうです。
 
 
労災が認定された最近の事例から
 
◆保護者の要求でうつ病の保育士に労災認定
 
兵庫県の私立保育園で、園児の保護者から執拗なクレームを受けたことが原因でうつ病やストレス障害となった女性保育士2人が、西宮労働基準監督署に労災認定されていたことが明らかになりました。
 
保護者の父親は、担任を代えることなどを強く要求していました。保育園では謝罪したり話合いの機会を設けたりしていましたが、父親の要求はますますエスカレートしていったそうです。
 
これにより、担任の保育士3人のうち2人が休職し、うつ病やストレス障害と診断されました。2人は昨年4月に、西宮労基署に労災を申請して同年11月に労災認定されました。認定された2人のうち1人は退職してしまったそうです。
 
◆過労が原因で自殺した外科医に労災認定
 
栃木県の病院に勤務していた男性外科医が自殺したのは過労が原因だったとして、鹿沼労働基準監督署がこの医師を労災認定していたことが明らかになりました。このケースでは、過重労働のほか転勤や医療ミスによるストレスが原因でうつ病を発症したと認定されています。
 
この医師は大学卒業後の2000年12月から埼玉県内の公立病院に勤務し、2002年5月から栃木県内の病院に移ってからうつ病を発症して同年6月に自殺しました。前任地では月80時間を超える時間外労働が恒常的に行われ、転勤後の2002年5月下旬には医療ミスを起こしたことに悩んでいたそうです。
代理人の弁護士は「激務が問題となっている外科医の過重労働が認められた意義は大きい。国は早急に勤務条件の改善に務めるべきだ。」と指摘しています。
 
 
政府管掌健康保険が1,577億円の赤字を計上
 
◆なぜこれほどの赤字になった?
 
主に中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険(以下、「政管健保」という)の医療費収支が、2007年度決算で1,577億円程度の赤字を計上する見通しとなりました。5年ぶりの赤字転落となりますが、社会保険庁では、2008年度も1,700億円程度の赤字が見込まれるとしています。
 
4年連続で黒字となるなど収支状況を回復していましたが、それがなぜこれほどの赤字を計上することとなったのでしょうか。
 
◆医療費の増加で採算が悪化
 
2007年度の政管健保の医療費収支見通しは、支出が前年度より4,000億円程度多い7兆2,744億円、収入が7兆1,167億円で、1,577億円の赤字となる模様です。
 
政府は、慢性的・構造的な赤字体質を改善すべく、2003年度に医療費の患者負担の割合を2割から3割へと引き上げました。これにより収支状況は改善しましたが、わずか4年間で再び赤字体質に陥ることとなりました。
 
また、2008年度には、メタボリック症候群を予防する特定健診・特定保健指導の開始で、新たに700億円の負担が発生します。そのため、2008年度も赤字となることが確実とみられています。
 
こうした赤字の背景には、政管健保の採算の急速な悪化があります。高齢化で医療費が大きく膨らむ一方、賃金の伸び悩みなどで保険料収入は微増にとどまっており、再び構造的な赤字体質に陥りつつあるのです。今後、大企業の社員等に、保険料引上げなどの形で負担が付け回される懸念もあります。
 
◆一時的な対策でなく抜本的改革が必要
 
社会保険庁では、財政の安定運営を目的に積み立ててきた「事業運営安定資金」を取り崩して赤字を穴埋めしますが、この残高は2006年末時点で約5,000億円程度。現在と同程度の赤字が今後も続けば、2009年度にも底をつきます。
 
厚生労働省は、社会保障費の伸びを抑制する観点から、政管健保に対する国庫負担金を1,000億円程度削減し、これを大企業の社員が加入する健康保険組合と公務員が加入する共済組合に肩代わりさせる特例法を国会に提出しました。これは2008年度の特例措置ですが、赤字が続けば、2009年度以降もこの肩代わりが行われる可能性もあります。ただ、負担を肩代わりさせるような対策では、根本的な解決にはつながりません。
 
現在、社会保険庁が運営する政管健保は、2008年10月より、全国健康保険協会管掌の通称「協会けんぽ」となり、国から独立した新たな健康保険として発足します。組織の移行だけではなく、制度自体の抜本的改革も望まれるところです。
 
 
未払い賃金に関する従業員救済制度
 
◆勤務先が経営破たん
 
勤めていた会社が経営破たんしてしまい、「もう少し待ってもらえないか」と言われていた先月分の給与も支払われなくなってしまった。このままでは生活が立ち行かなくなってしまう…。このようなケースでは、従業員救済のため、労働者に対して未払い賃金の一部を立替払いする「未払い賃金の立替払い制度」がセーフティネットとして用意されています。
 
◆未払い賃金の立替払い制度とは
 
未払い賃金の立替払い制度では、「賃金の支払いの確保等に関する法律」に基づいて、労働者健康福祉機構(旧労働福祉事業団)が未払い賃金の一定範囲を立替払いします。機構は労働者が持つ賃金請求権を代わりに取得し、もし事業者に資産があれば、そこから立替払いした賃金を回収します。
 
立替払いの請求は、未払い賃金のある労働者が、破産等の証明者から証明書の交付を受け、機構に提出して行います。証明者は、会社の倒産が破産などの法的手続による倒産なのか事業停止などの事実上の倒産なのかにより異なります。法的手続による倒産の場合は裁判所が選任した管財人や清算人、事実上の倒産の場合は会社所在地を管轄する労働基準監督署長が証明者となります。
 
立替払いの金額は、退職前6カ月間に未払いになった給与や退職金の80%です。賞与や総額2万円未満の未払い賃金については対象とはなりません。また、退職時の年齢に応じて支払われる金額に上限が設けられており、30歳未満は88万円、30歳以上45歳未満は176万円、45歳以上は296万円とされています。
 
◆対象は中小企業、パートやアルバイトも対象者
 
この制度の特徴の1つとして、対象は中小企業に限定されるということが挙げられます。中小企業の範囲については、業種別に4つの区分に分けられていますが、一例を挙げると、一般的な産業であれば「資本金3億円以下または労働者300人以下」、サービス業であれば「資本金5,000万円以下または労働者100人以下」などとなっています。
 
また、この制度は正社員だけを対象者にしたものではありません。パートやアルバイト、外国人労働者等、労災保険の適用事業場に雇われて賃金を得ていた労働者であれば、雇用形態・国籍等を問わず、未払い賃金の立替払いの対象となります。
 
 
「子育てパパ力(ぢから)検定」とは?
 
◆全国7会場で実施
 
父親の育児への参加を促そうと、「子育てパパ力(ぢから)検定」が3月16日に初めて実施され、東京・大阪・名古屋・広島・新潟等全国7つの実施会場は、多くの受験者で賑わいました。女性や夫婦、カップルでの受験も目立っていたそうです。
 
経済産業省や東京都などが後援するこの検定は、どのような検定なのでしょうか。
 
◆検定の内容は?
 
この「子育てパパ力検定」は、父親の育児支援を支援する特定非営利活動法人(NPO法人)ファザーリング・ジャパンが企画しました。同法人の代表理事は、この検定は「育児そのものへの関心やパートナーとの関係・自身の働き方の見直し、あるいは子どもを取り巻く社会環境への問題意識を喚起すること」を目的としているとしています。
 
検定では、6歳までの子育てに関する知識を中心に、4択式の50問を1時間で解いていきます。問題の範囲は幅広く、「家族の会話を活発にするには雑学も必要」と、幼児に人気のアニメの登場人物や童謡に関する問題も盛り込まれています。
 
受験者は子育て世代の30代男性が約半数を占めましたが、20代から70代までの広い年齢層から集まりました。「出産前の勉強に」などと、夫婦やカップルでの申込みもありました。
 
◆父親の育児参加の現状
 
この検定に関して注目すべきは、私生活の充実が仕事の意欲につながると考えた企業が、社員の受験をバックアップする例がみられたことです。
 
平成18年度版の厚生労働白書によると、2005年度の育児休業の取得率は、女性が72.3%、男性が0.5%にとどまっており、希望する者全員が安心して育児休業を取得できる状況にはほど遠い状況です。また、子育て期にある30歳代男性の4人に1人は週60時間以上就業しており、長時間就業者の割合も増加してきていることも手伝って、男性が子どもと向き合う時間が奪われています。
 
また、我が国の男性の家事・育児に費やす時間は1日平均25分で、アメリカの1時間13分やスウェーデンの1時間7分などに比べて相当少なく、世界的に見ても最低レベルの水準です。子育ての負担が女性に集中しているといえます。
 
現在、そのような現状を打破するための様々な取組みが企業内で行われています。「労働時間の短縮」や「男性の育児休業取得の推進」への取組みなどです。これらももちろん必要ですが、今回の「子育てパパ力検定」の受験支援のようなユニークな取組みも、今後の「父親の育児参加」というテーマを考えるうえで重要なのかもしれません。
 
 
フリーターの就職は依然として厳しい?
 
◆4年連続でフリーターが減少
 
2007年のフリーターの人数は、前年比6万人減の181万人となっており、ピークを迎えた2003年から4年連続で減少しています(総務省発表)。雇用環境の改善によるものとも言われていますが、25−34歳のいわゆる「年長フリーター」の人数は、前年と横ばいの92万人となっており、依然として状況は厳しいようです。
 
フリーターを積極的に採用したいと考えている企業はまだまだ多くはないようですが、フリーターを採用する場合、企業はどのようなことを重視しているのでしょうか。
 
◆採用時の面接では「熱意・意欲」などを重視
 
独立行政法人労働政策研究・研修機構による調査(「企業における若年層の募集・採用等に関する実態調査」)では、フリーターの正社員採用について、過去1年間にフリーターを正社員として採用した企業の担当者が採用する際の面接で最も重視したポイントは「熱意・意欲」であるという結果が出ており、以下、「コミュニケーション力」「忍耐力」と続いています。
 
また、既卒者(学校卒業後すぐに就職する者以外で35歳未満の者。勤務経験の有無は問わない)を募集した理由について、新規学卒者枠で募集した企業では「新卒者と変わらないから」、中途採用枠で募集した企業では「即戦力になるから」という理由が多く挙がっています。
 
しかし、フリーター経験を「マイナスに評価する」とした企業が約40%に上るなど、フリーターの就職は依然として厳しい状況であることも明らかになっています。
 
◆今年度から導入される「ジョブ・カード制度」で変化は?
 
政府は、フリーターなどの就職を支援するため、今年度から「ジョブ・カード制度」を導入する方針です。職業訓練を受講した者にハローワークから職歴や職業訓練の受講歴を記載した「職業能力証明書」が発行されるもので、就職活動に活用してもらうのがねらいだそうです。
 
同制度は、企業が一定期間、フリーターなどを雇用しながら職業訓練を実施し、訓練実績や資格を記載した証明書を公的機関が発行する仕組みですが、職業訓練を行う企業には助成金や税制優遇などの経済支援が検討されています。
 
政府は2008年度からの5年間で100万人程度の同制度の利用を目指していますが、制度導入によりフリーターの就職状況は改善されていくのでしょうか。
 
 
『年金記録問題』『ねんきん特別便』をめぐる状況
 
◆全受給者・加入者9,500万人に発送開始
 
4月2日から、記録漏れの可能性が高い人以外の全受給者・加入者計9,500万人に向けて「ねんきん特別便」の発送が始まりました。6月以降には事業所経由での送付も予定されています。社会保険庁でも、社会保険事務所における休日の相談日を増やすなどして、相談体制を強化する方針を明らかにしています。
 
◆民主党が「ヒント付き特別便」の独自法案提出へ
 
しかし、社会保険庁の発表によれば、これまでに「特別便」を送付した受給者の約4割に相当する約90万人が未回答であり、回答した約141万人のうち約103万人は「訂正なし」と答えていますが、実際には記録漏れの事例が相当数あるそうです(3月18日現在)。「特別便」を受け取っても、「具体的な情報が載っていないのでわかりにくい」「昔のことで思い出せない」という人が多いようです。
 
民主党では、「特別便」が届いても記録漏れに気付かないとみられる人(3月末までに特別便が届いた記録漏れの可能性が高い年金受給者・現役加入者のうち記録を訂正した人を除く)を対象に、記録漏れがあるとみられる記録やヒントを同封して「特別便」を再送する独自の法案(ねんきん特別便緊急支援法案)を今国会に提出する方針を示しています。
 
◆物証があれば社会保険事務所でも審査
 
またこれまで、自分の記録に誤り等があると思う人は、「年金記録確認第三者委員会」に申し出る必要がありましたが、家計簿や確定申告書のコピーなど、保険料を納付していた物的証拠があることで判断しやすい案件については、社会保険事務所に申し出て年金支給の是非を審査してもらえるようになりました。
 
審査が進まない「年金記録確認第三者委員会」の審査を省略して記録回復のペースを上げるのがねらいだそうです。
 
また、厚生労働省は、国民年金加入者が満額の受給額を確保した後も保険料を払い続けてしまった分について、返還する制度の創設も検討しているようです。

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