◆ 労働時間の端数処理の注意ポイント ◆
■1日の残業を30分単位で四捨五入すると違法です
原則として労働時間は、たとえ1分であっても計算しなければなりませんが、厚生労働省は、労働基準法『違反ではない』端数処理の方法を、通達(基発第150号)で提示しています(以下抜粋)。
① 1ヵ月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数が生じた場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること
② 1時間当たりの賃金額および割増賃金額の円未満を四捨五入すること。
③ 1ヵ月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の割増賃金の総額の1円未満の端数を四捨五入すること。
④ 1ヵ月の賃金支払額の100円未満の端数を四捨五入すること。
⑤ 1ヵ月の賃金支払額に生じた1000円未満の端数を翌月の賃金支払い日に繰り越して支払うこと。
通達の①で示しているのが、労働時間の端数処理の方法ですが、注意すべきポイントが2つあります。
第1のポイントは
『1ヵ月の合計』の端数処理であって、
1日の合計の端数処理ではない ということです。
1日の労働時間の端数を30分単位で四捨五入する方法は、違法となるのです。
第2のポイントは、
『時間外・休日・深夜の労働時間の合計』の端数処理であって、労働時間の合計の端数処理ではない
ということです。
つまり、端数処理は、時間外・休日・深夜の労働時間につてのみ認められているのであって、
『法定労働時間内に収まっているのであれば、たとえ1ヶ月の合計であっても、端数を30分単位で四捨五入する方法は認められない』ということなのです。
『短時間勤務の』パートタイマーやアルバイト
の労働時間管理においては、この第2のポイントに注意する必要があります。
■5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットできるか?
遅刻対策として、「遅刻や早退をした場合は30分単位で賃金を減額する」と、就業規則(賃金規程)で定めていることがあります。
例えば5分遅刻した場合であっても30分の賃金を減額するというものです。遅刻した5分の賃金カットについては、ノーワーク・ノーペイの原則の通り、何ら問題はありません。
これに対し、実際に労働した25分についての賃金カットは、労働基準法(第24条の賃金の全額払いの原則)に違反しています。
ただし、これが懲戒処分であれば、法の範囲内で賃金カットが可能となります。
そのためには、
『実際の遅刻と30分との差(事例では25分)は労働基準法に基づく制裁による減給とする』
ことを就業規則に記載しておくことが必要です。
(制裁としての減給であれば、1件につき平均賃金の半日分まで可能です。)
厚生労働省は、上記の処理方法について通達で考え方を示しています。
「5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金の全額払の原則に反し、違法である。なお、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として、法第91条の制限内で行う場合には、全額払の原則には反しないものである。」(昭和63.3.14基発第150号抜粋)
「給与規則の当該規定が、30分に満たない遅刻、早退の時間を常に切上げるという趣旨であるならば、労働基準法第91条の減給の制裁として取り扱わなければならない。この場合就業規則中に特に制裁の章等を設けてその中に規定する等の方法によって制裁である旨を明らかにする方が問題を生ずる余地がないから適当である。」(昭和26.2.10基収第4214号抜粋)