「後期高齢者医療制度」の見直しについて
◆廃止法案が参議院で可決
75歳以上を対象に4月から導入され何かと話題になっている「後期高齢者医療制度」ですが、民主、共産、社民、国民新の野党4党は「後期高齢者医療制度廃止法案」を参議院に提出し、6月上旬の本会議で賛成多数で可決され、衆議院に送られました。これに対し、与党は、衆議院で否決や廃案とはせずに継続審議とする方針を示しています。世論に配慮するためだといわれています。
◆政府・与党の見直し・改善策が決定
政府・与党は、後期高齢者医療制度の見直し策を決めました。主な見直しの内容は以下の通りです。
<保険料軽減措置の拡充>
被保険者全員が年金収入年80万円以下の世帯については、来年度からは均等割部分の9割(今年度は8割5分)が軽減されます。また、年金収入が153万円から210万円については、来年度からは保険料の所得比例部分を5割程度軽減するとしています。
<年金からの保険料天引きの一部見直し>
国民健康保険料を滞納せずに確実に納付してきた人については、本人口座からの引き落としが認められます。また、年金収入が年180万円未満の人については、世帯主や配偶者らが肩代わりして口座引き落としを選択できるようになります。天引きの見直しの実施時期については、早くても今年の10月以降のようです。
◆財源は不明確
上記の見直し・改善策は正式に決定されたものですが、今年度560億円、来年度以降360億円ともいわれる財源については、不明確との指摘があります。
また、先送りされた事項(保険料の軽減を判定する年収基準、年金天引きを免除する要件など)もあり、今後の動向が注目されるところです。
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●後期高齢者医療制度、見直し策決定(08年6月13日 読売)
政府・与党は12日、75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の見直しに関する協議会を首相官邸で開き、低所得者の保険料負担軽減の拡大や保険料納付の肩代わり容認を柱とした改善策を正式決定した。
<後期高齢者医療制度の主な改善策>
【保険料軽減】
・今年度は、年金収入が年168万円以下の人は10月から半年間、保険料徴収を凍結し、保険料の「均等割」を実質8割5分減額
・来年度以降は、同80万円以下の人は9割減額。同210万円以下の人は保険料の「所得割」を50%程度減額
・軽減しても保険料を支払えない人は、個別に減免
【保険料徴収】
・〈1〉年金収入が年180万円未満で、口座振替できる世帯主または配偶者がいる〈2〉国民健康保険(国保)の保険料の滞納がなかった――人は、申し出により、年金天引きでなく、口座振替の選択も可能に
・65〜74歳で国保に加入する世帯主も、滞納がなければ選択可能に
【診療報酬】
・「終末期相談支援料」は当面凍結を含め、取り扱いを中央社会保険医療協議会(中医協)で議論
・「後期高齢者診療料(かかりつけ医)」も中医協で速やかに検証作業に着手
【資格証明書】
・相当な収入があるにもかかわらず保険料を納めない悪質な人に限り交付
【検討課題】
・保険料の年金天引きの対象要件(年金収入が年18万円以上)の引き上げ
・70〜74歳の医療費窓口負担の1割据え置き措置、会社員の被扶養者の保険料負担軽減措置の延長