企業を悩ますインターネットトラブル
◆企業を誹謗中傷する内容も
インターネット対策に頭を悩ます企業が増えています。ネットに書き込まれた情報は瞬時に多くの人の目に触れることになりますが、それが企業を中傷するような内容であれば、企業にとってはイメージ低下につながるおそれもあります。とはいえ、サービスの利便性やプライバシーとの兼合いもあり、情報の規制には困難が伴うのが実情のようです。
◆対応の難しい検索サービスによるトラブル
ある会社が、自社名を入力すると関連検索の欄に「悪徳商法」という単語が自動表示されることに困惑し、大手検索サービス会社に対して表示の差止めを求める仮処分を裁判所に申し立てた事例があります。
昨今問題とされているのが、こうした検索サービスによるトラブルです。検索サービスの画面で、入力したキーワードと一緒に打ちこまれる可能性の高い単語を自動的に並べて表示する「関連検索」という項目があります。利用者がサイトを絞り込んで検索できる便利な機能ですが、会社名や商品名を入力すると、「被害」「悪徳」など、イメージ低下につながる単語が自動表示されることがあります。企業にとっては、たまったものではありません。
先の事例では、企業側が「イメージが低下して売上にも悪影響が出た」と主張したのに対し、検索サービス側は「利用者の検索パターンを事実として表示しているだけ」と反論し、最終的に、裁判所は企業側の請求を退けました。「利用者は悪徳商法という単語を、同社名と併せて検索する頻度の高い単語と認識するだけである」と判断し、名誉毀損には当たらないとしたのです。
◆行政側の対応は?
もっとも、行政もネット上の名誉棄損問題に手をこまねいてきたわけではありません。2002年には「プロバイダー責任制限法」が施行され、一定の要件を満たした場合、プロバイダーは被害者の請求に応じて、違法な書込みをした発信者の情報を開示できるようになりました。
法務省の統計によれば、ネット上のプライバシー侵害などの報告件数は年々増加傾向にあるようです。これは、法律の施行により、一定の要件を満たせば内容を削除できるようになったほか、相手に損害賠償請求もしやすくなって、これまで泣き寝入りしていた被害が表面化したためだと思われます。しかし、同法は掲示板やホームページなどが対象であり、メールのような通信は含まれません。そのため、一斉メールでの中傷などに関しては、「通信の秘密を守る」という観点からも法的に対抗するのは難しいのが現状です。
今後、日常生活に不可欠となったネットサービスの利便性を損なわずに、どうやって個人や企業の権利を守って行くのか、ルールのあり方が問われています。