「パワー・ハラスメント」の基準は?
 
◆法的定義のないパワハラ
 
職権を使ったいじめや嫌がらせである「パワー・ハラスメント」(パワハラ)が、会社の業務に大きな影響を与えるようになってきました。社員の士気や会社の評判を落とさないように対策に乗り出している企業もありますが、「セクシュアル・ハラスメント」(セクハラ)と違って法的定義がなく、あいまいな基準が対応を難しくしています。
 
◆パワハラに関する裁判例
 
企業内で上司などから暴力や暴言、無視されるなどのパワハラ行為を受けて悩む社員は多く、年々増加傾向にあると言われています。2007年10月の医薬品販売会社社員の自殺について、東京地裁がパワハラとの因果関係を認めて労災と認める判決を出しました。
 
また、2008年7月には道路会社社員の自殺をめぐり、被害者がうつ病で自殺したのはパワハラが原因であるとして、遺族が慰謝料などの損害賠償を求めた訴訟の判決で、松山地裁は自殺との因果関係を認め、約3100万円の賠償を命じました。裁判長は、上司による過剰なノルマ達成の強要や度重なる叱責は「違法と評価せざるを得ない」と指摘し、「自殺は予見可能だった」として会社の責任を認めています。
 
また、企業のトップがパワハラ体質であるために社員が相次ぎ辞めていく会社もあると言われており、パワハラに対する社会の見方は厳しさを増していると言えるでしょう。
 
◆「パワハラ上司」のタイプ
 
パワハラに関し、研修の主要テーマに据えるなど、何らかの予防策を模索する企業は増えています。パワハラに関する研究を行っている有識者によると、主に「パワハラ上司」は、以下の4つのタイプに分けられるとしています。
 
(1)怒鳴るなどの威嚇をする「自己中心型」
(2)細かく指示する「過干渉型」
(3)自分の上司頼みで責任を回避する「無責任型」
(4)意欲に乏しく部下に負担をかける「事なかれ主義型」
 
◆世代間で認識にギャップも
 
パワハラについては、世代間の認識の差なども大きく、特に年長社員には先輩社員に怒鳴られながら仕事を覚えた経験を持つ人も多く、「部下に熱心に注文をつけて何が悪いのか」といった反応もあるようです。
 
暴力を振るう、到底達成できないノルマを課すなどの行為は典型的なパワハラですが、一方で、部下の成長を願って強く注意するといった行為がパワハラなのか、基準は受け止める側によってまったく変わってきます。ただ、パワハラ対策に真剣に取り組むことにより、必然的に、上司と部下の関係や、職場の雰囲気などが改善されていく可能性は大いにあると言えるでしょう。
 
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■厚生労働省:「精神障害等の労災補償」関連情報
 
■心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針の見直し(09年4月6日)
■上司の「いじめ」による精神障害等の業務上外の認定について(08年2月6日)
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●二審は賠償額10万円に 旧鳥取三洋のパワハラ訴訟(09年5月22日 中国新聞)
 
旧鳥取三洋(現三洋電機コンシューマエレクトロニクス)の女性従業員(52)がパワーハラスメント(パワハラ)を受けたとして損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁松江支部は22日、三洋側に300万円の支払いを命じた一審鳥取地裁判決を変更し、10万円の支払いを命じた。
 
一審判決を不服として三洋側が控訴していた。
 
判決理由で古川行男ふるかわ・ゆきお裁判長は「人事担当者が大声で非難したのは社会通念上許されない不法行為」と認定したが、一審判決がパワハラと認めた人事評価や給与減額については「会社人事の裁量の範囲内で適法」と判断した。
 
判決によると、女性は「準社員」として勤務。2005年、同社は業績悪化のため、準社員全員に出向や転職を持ちかけ退社を迫った。女性だけが拒否すると怒鳴られたり、関連会社へ出向させられたりした。
 
●上司の違法な叱責なかった…パワハラ訴訟、原告が逆転敗訴
 (09年4月23日 読売)
 
上司の執拗な叱責(しっせき)が原因で自殺したとして、労災認定された道路建設会社「前田道路」(本社・東京)の営業所長(当時43歳)の妻、岩崎洋子さん(47)(松山市)ら遺族2人が、同社に慰謝料など約1億4500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が23日、高松高裁であった。
 
杉本正樹裁判長は「違法な叱責はなかった」などとして、会社側に約3100万円の賠償を命じた1審・松山地裁判決を取り消し、原告側の請求を棄却した。
 
1審判決は「社会通念上許される指導の範囲を超える叱責があった」と認定したが、所長が営業成績を水増ししていたことが叱責の背景にあるとして賠償額を減額。控訴審で原告側は、賠償額の見直しを求め、会社側は「違法な叱責はなく、上司の指導は適切だった」と主張していた。
 
●上司のパワハラ、脳梗塞の原因に 東京高裁が労災認定(08年11月12日 日経)
 
過重な業務と上司のパワーハラスメントのストレスで脳梗塞(こうそく)を発症したとして、ヤマト運輸子会社の元社員(故人)の妻が国に労災認定を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は12日、原告側の請求を棄却した1審判決を取り消し、労災と認めて休業補償給付を命じた。
 
判決理由で南敏文裁判長は「元社員を起立させたまま2時間にわたって叱責(しっせき)した」などとして上司のパワハラを批判。叱責が月に2回以上あり、発症1カ月前の残業が約80時間に及んだことと併せ、「肉体的疲労だけでなく心理的負担も重なり脳梗塞を発症した。会社の業務が原因といえる」と労災と認めた。
 
判決によると、元社員は1994年4月、業務後の新入社員歓迎会で脳梗塞を発症。96年に労災申請し、認められないまま再審査中の2006年に死亡した。妻が労災認定を求め提訴したが、1審・東京地裁判決は「説教は上司の指導としての通常の範囲内」として請求を棄却した
 
●トヨタ自動車に賠償命令/系列出張社員のうつ発症で
 (08年10月30日 共同通信)
 
長期出張先のトヨタ自動車の過重な業務が原因でうつ病を発症したとして、系列の自動車部品会社デンソーの男性社員(44)が計約1,880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁の多見谷寿郎裁判長は30日、業務の一部と発症との因果関係を認め、両社に計約150万円の支払いを命じた。
 
男性はうつ病を2回発症。多見谷裁判長は判決理由でトヨタに約1年間出張中の1回目の発症は「業務上の過重負荷が相当程度寄与した」と認定。「両社は業務の軽減措置など原告の健康状態に注意する義務を怠った」とした。デンソーに復職後の2回目の発症は「業務負担はさほど重くなかった」と因果関係を認めなかった。
 
またトヨタで上司から「使い物にならない人はいらない」と発言を受けたとの主張には「パワハラと評価されても仕方がない過酷な表現で、重い精神的負荷を与えた」としながらも発症への影響は否定。「うつ病は原告の精神的脆弱性という要因も相まって起きた」などと指摘し、賠償額を減額した。
 
判決などによると、男性は1999年8月から約1年間、トヨタに出張しエンジン開発を担当。長時間の過重な業務を強いられ2000年8月、うつ病を発症し約2カ月間休職。その後、デンソーに復職したが02年8月、うつ病が再発し約6カ月間休職した。
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