人事労務の時事解説(2009年1月号)

人事労務の時事解説 2009年1月号


経営承継円滑化法の施行で事業承継がスムーズに

◆経営のバトンタッチが進めやすくなる

2008年10月1日より、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律が施行されました。この法律は文字通り、経営のバトンタッチを円滑に進められるように中小企業をバックアップする主旨で制定されたものです。これにより中小企業の事業承継は、かなり進めやすくなると考えられます。

◆新法の内容は

毎年、中小企業の多くが後継者の不在を理由に廃業し、多くの雇用が失われていると言われています。それらの対策として、後継者が事業を承継しやすくすることが目的です。

内容は大きく3つに分けられます。
(1)遺留分に関する民法の特例
(2)金融支援措置
(3)相続税の課税についての措置

(1)は、一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者との合意があることなどを前提に、後継者に生前贈与された自社株式を遺留分の対象から除外し、相続による自社株式の分散を防止できるものです。また、後継者に生前贈与された自社株の評価額をあらかじめ固定し、後継者の努力による株式価値上昇分を遺留分の計算に含めなくてもよくなります。これらは、2009年3月1日からの施行となっています。

(2)は、経営者の死亡等に伴い必要な資金の調達を支援するため、中小企業信用保険法に規定する通常の保証枠とは別に、事業承継資金の借入れを受けることや、低金利での貸付けを受けることができます。

(3)は、相続税の課税について、自社株式の80%を納税猶予するなどの措置が検討されています。(3)については2009年度の改正で創設し、2008年10月1日に遡っての適用が予定されています。

◆企業の存続と雇用の安定化を

当然、適用のためには様々な条件を満たし、経済産業大臣の認定を受けることが必要となります。また、認定の有効期限は5年間で、その間雇用の8割を維持することなどの条件が定められています。

今回の事業承継円滑化法が機能すれば、中小企業の廃業を防ぎ、多くの中小企業労働者の雇用を守ることになります。多くの労働者の雇用を守り、雇用を安定化するという観点において、社会的にも、とても意義のある法律だと言えるのではないでしょうか。


ついに「改正労働基準法」が可決・成立!

◆審議入りから1年8カ月の難産

平成19年3月の閣議決定を経て長らく国会審議入りしていた「改正労働基準法案」が、1年8カ月を経て、ようやく成立しました。

本法の施行は平成22年4月とまだ先ですが、「月の時間外労働が一定時間を超えた場合の賃金割増率のアップ」と「労使協定締結による5日以内の時間単位での年次有給休暇制度の創設」が大きな柱である本改正は、今後の労務管理実務に大きな影響を与えるものです。

ここでは、それらの内容を確認しておきます。

◆改正労働基準法の内容(1)

本改正の1つ目の柱は、「月の時間外労働が一定時間を超えた場合の賃金割増率のアップ」です。月の時間外労働時間が45時間を超え60時間までの場合の割増賃金率については、2割5分以上の率で、労使協定で定める率とし(努力義務)、60時間を超えた場合の割増賃金については5割増とする、という内容です。

上記の「60時間」の部分については、当初の案では「80時間」とされていましたが、野党などの強い反対により、審議のうえ修正されました。

◆改正労働基準法の内容(2)

本改正のもう1つの柱は、「労使協定締結による5日以内の時間単位での年次有給休暇制度の創設」です。労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者)との労使協定で「時間単位で有給休暇を与える労働者の範囲」、「時間を単位として与えることができる有給休暇の日数(5日以内)」などを定めることにより、従来よりも細かい単位で有給休暇を取得できるとする内容です。

時間単位で細かく取得できるようにすることにより、近年落ち込んでいる有給休暇取得率アップにつなげることが、本改正の目的です。

◆施行日と中小企業への猶予

改正法の施行日は「平成22年4月1日」と定められており、企業においては就業規則の整備や労使協定の締結などの対応が必要となりますが、割増率のアップの規定については、「中小事業主の事業については、当分の間、適用しない」とされています。

なお、ここでいう「中小事業主」とは、「その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主を」をいいます。


裁判員制度による休みは有給? 無給?

◆企業としての対応が迫られている

2009年5月から始まる裁判員制度、一般市民が司法に参加するこの制度は、平日に裁判に参加することになり、勤労者は仕事を休む必要が出てきます。裁判員に選ばれた人の所属する企業では、その休みへの対応が迫られています。

◆裁判員制度とは

裁判員制度は、一般市民が刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する信頼の向上につながることが期待されています。一般市民が裁判に参加する制度は、アメリカやイギリス、フランス、ドイツ等でも行われています。

日本の裁判員制度では、まず、地方裁判所ごとに裁判員候補者名簿が作られます。選ばれた候補者へ、調査票と共に候補者となったことが通知されます。2009年5月以降、事件ごとに初公判の6週間前までに、くじで候補者が選ばれて呼び出され、最終的にその中から6名が裁判員として選ばれ裁判に参加します。

辞退については、70歳以上の人や学生、重い病気やケガで参加できない人などは1年間を通じて辞退できます。ただし、仕事を理由とした辞退については、単なる「仕事が忙しい」という理由では原則辞退できません。

◆有給・無給は各企業の判断による

裁判員制度に基づいて裁判に参加することは、いわゆる労働基準法の「公の職務の執行」に当たるため、その時間は保障されねばなりません。多くの就業規則ではその旨の規定がありますが、裁判員の仕事に従事するための休暇制度を設けることは義務付けられていません。したがって、有給か無給かについては、各企業の判断に委ねられることになります。

有給の場合は、裁判員としての日当と会社の給与を、両方受け取れることになります。また、無給の場合は、裁判員としての裁判への参加意欲が減退することが危惧されます。

裁判所としては、裁判員が仕事を休みやすい環境作りが急務であることから、「裁判員としての仕事を行うための特別な有給休暇制度を作っていただくことが重要であり、法務省、検察庁、弁護士会とも連携し、各種経済団体、企業等に対し、休暇制度の導入の検討をお願いしている」と、ホームページ上などで説明しています。

正社員はもちろん、派遣社員にも「裁判員休暇」を与える企業や、配偶者が裁判員に選ばれた際に、有給で育児・介護休暇を取得できる制度を導入する企業など、積極的に制度に協力する企業も見受けられます。今後、制度が定着するには、企業側のこのような協力が重要な要素となってくることでしょう。


「5歳児健診」 就学前から母子を支援へ

◆5歳児検診を実施する自治体が増えている

母子健康法では、1歳半と3歳の乳幼児に対し、身体、精神の発達状況などを確認する健診の実施を自治体に義務付けていますが、それに加え5歳児を対象にした健診を独自に実施する自治体が増えています。

◆5歳児健診実施の狙い

5歳児健診を独自で取り組む自治体の狙いは、学校などでの集団活動の中においていじめにつながる恐れがある「軽度発達障害の子ども」を早期に発見することにより、小学校入学までに障害に応じて支援することが大きな目的です。

1歳半と3歳の乳幼児に対しての健診は、母子保健法により義務化されているのに対し、小学校に入る前の就学時健診は学校保健法が定めており、視・聴力や歯、脊柱の異常の有無などをチェックします。5歳児健診はその間を埋める健診とも言われています。

主に身体の発育チェックが中心とされている1歳半と3歳の乳幼児の健診は、精神的な成長の差が見えにくい時期でもあり、発達障害の発見は難しいと考えられています。これに対して、年中児を対象として行う5歳児健診は、集団に入ってからの様子を加味して判断ができることと、就学までに少なくとも1年の期間あり、その間に周囲の理解、本人への療育、就学援助などを行う余地があるという、絶妙な時期に行うことになります。

◆サポート体制を整えることも大きな課題

このような目的を踏まえ、5歳児健診の取組みを行っている自治体が増えています。早くから子どもの生活改善に乗り出すことができ、保護者の不安を解消したりすることで得られる便益を考えると、医療政策の中では高い効果が得られるものとして考えられています。また、地域の小児科医師の協力を得られれば比較的小額の財政負担で実施できるメリットもあります。

今後ますます5歳児健診を実施する自治体が増えてくると思われます。5歳児健診を受診することにより発達障害児を早期発見することだけでなく、その保護者をサポートする体制を整えていくことも、重要なポイントになってくるのではないでしょうか。


30歳代後半フリーター支援

◆30歳代後半のフリーター支援策が本格運用

厚生労働省が検討していた30歳代後半のフリーター支援策が12月から動き出します。

試験雇用していた企業に補助金を支給するほか、企業が試験雇用後に正社員として雇えば奨励金を支給します。これまで30歳代前半までの支援策はありましたが、新たな試みである30歳代後半のフリーター支援が注目されています。

◆試験雇用に補助金を支給

厚生労働省は、2008年11月19日に開いた労働政策審議会の職業安定分科会に施策の概要を報告しました。具体的には、30歳代後半のフリーターを試験的に雇用した場合に企業に対して月額4万円を3カ月間支給します。その後、雇い入れた30歳代後半のフリーターを正社員にすれば大企業向けに30万円を、早期離職者が多い中小企業向けには15万円上乗せし45万円を奨励金として支給します。これらの支援策に伴い、全国のハローワークでは、30歳代後半フリーターの就職支援を狙い、ハローワークの相談員を約70人増加する動きもとられています。

総務省の労働力調査によると、2005年以降の35歳〜44歳のフリーターが増加の傾向にあると報告されています。その増加傾向の理由として、1993年から2004年にかけての就職氷河期と呼ばれる時期に就職できず、フリーターの道を選んだ者が多かったためだと言われています。そして今、その世代が30歳代後半を迎え、フリーターが高齢化しているという問題が起こっています。これらの高齢化に対応するために、今回の30歳代後半のフリーター支援策が打ち出されました。

◆厳しさ続く雇用状況

経験を積まずに長い間フリーターを続けていると、書類段階で見限られ、採用面接までたどりつけない事例も多く年長フリーターの就職活動の厳しさを指摘する声もあります。そのうえ、昨今の景気悪化により、非正規社員である派遣社員や契約社員の早期での雇用打ち止めや雇用契約解消、新卒内定者の取り消し、さらには大企業でのリストラの動きも始まっています。それらの雇用状況の悪化の動きを見ていると、今回12月から動き出す30歳代後半のフリーター対策支援策にもかかわらず、30歳代フリーターらの正規社員への道は、さらに険しくなる恐れがあるかもしれません。景気悪化で雇用状況が思わしくない今、政府の効果的な雇用政策への取組みが、早急に求められるでしょう。


バリアフリー化、使える公的助成

◆バリアフリー改修とは

高齢者や障害者が、自宅で安心して快適な生活を送るために浴室に手すりを取り付けたり、部屋の段差をなくしたりと、自宅の不便さを改善することをバリアフリー改修と言います。このバリアフリー改修に対して、様々な公的助成・支援制度が拡充されています。

◆様々な公的支援

バリアフリー改修で緊急を要するのは、日常生活での支援が必要となる要支援・要介護認定を受けたときです。介護保険には、要支援・要介護認定者に対し、手すり設置、段差解消などの住宅改修工事に上限20万円(自己負担1割)の助成金を支給する制度があります。それに上乗せする形で独自の支援制度を設けている自治体も多く見られます。

ある自治体では、要介護認定者が自宅に階段昇降機を設置する場合に助成する制度を設けたり、65歳以上であれば要支援・要介護認定がなくても基本的なバリアフリー化の住宅改修に20万円まで助成金を支給したりしています。

◆税制上でも優遇される

バリアフリー改修には公的な助成金や自治体で支援する制度だけでなく、税制上で優遇される制度も整えられています。

50歳以上もしくは要支援・要介護認定を受けた人、または65歳以上の親と同居する人などがバリアフリー化の住宅改修のために融資を受けた場合、住宅ローン残高(上限1,000万円)に対し、バリアフリー工事相当部分(上限200万円)で2%、その他の工事費で1%を、所得税額から5年間控除を受けることができます。その他にも、2007年4月1日から2010年3月31日までの間に65歳以上もしくは要支援・要介護認定を受けた人が2007年1月1日以前から住んでいる自宅を30万円以上かけてバリアフリー改修を行った場合、改修工事が完了した翌年の固定資産税が3分の1に減額されます。

蓄えが乏しく毎月の収入が年金だけで、住宅改修費用はとてもまかなえないという60歳以上の人は、住宅金融支援機構の高齢者向け返済特例制度を活用することができます。自宅を担保に入れることで毎月の返済は利子分だけですみ、元金は融資を受けた人が亡くなった際に返済する仕組みとなっています。融資額は最大で1,000万円となっています。

しかし、こうしたバリアフリー改修に対しての公的な助成・支援制度は、適用対象となる年齢や工事内容などの条件が一律でないという面で注意する必要もあります。バリアフリー改修をすると決めたら、まず自分の住んでいる自治体の高齢者福祉担当窓口に足を運ぶか電話で相談するなどして、どのような支援制度を受けることができるかを確認し、そのうえで改修工事を実施することが望ましいと言えるでしょう。


景気悪化・大不況に伴う企業の動向と政府の対策

◆非正社員の失業、給与の減少…

景気悪化に伴う未曾有の大不況が大きな社会問題となっており、マスコミ等でも連日報道されています。

不況を理由として企業が実施するリストラによる非正社員の失業者が、今年10月から来年3月までに、全国で477件、合計で約3万人に上るとの推計結果が、厚生労働省から発表されました。自動車などの輸出産業の減産を反映し、製造業における派遣労働者が全体の約65%を占めています。そして、非正社員だけでなく、正社員のリストラや退職勧奨、賃金減額なども行われるなど、深刻な問題となっています。

また、同省から10月の毎月勤労統計調査(従業員5人以上)が発表されましたが、それによると、海外需要の低迷により輸出企業などの残業時間が短くなったことなどが影響して、現金給与総額が1人平均27万4,751円(前年同月比0.1%減)と10カ月ぶりに減少したそうです。製造業では、7カ月連続で残業時間が減少しています。

◆政府による対策は?

景気悪化により新卒者の内定取消が相次いでいる問題に関しては、内定取消を行った企業名を公表し、また、内定が取り消された学生を雇用した企業に1人数十万〜100万円程度の奨励金を支給するとする雇用対策案が発表されています。詳細についてはまだ決まっていないようですが、厚生労働省では、来春ごろまでに実施したい考えです。

また、同省は、労働者派遣契約の中途解除に係る指導・対応に関して、都道府県労働局長あてに通達(職発第1128002号)を11月下旬に出しました。「事業主が講ずべき措置に関する指針」に基づく徹底した指導を要請し、派遣先に対象労働者の直接雇用を求めていくとする内容となっています。

◆雇止め非正規労働者の失業手当受給要件を緩和へ

雇用保険関連では、雇止めされた非正規労働者などが失業手当を受給するために必要な雇用保険の加入要件について、現行の「1年以上の雇用見込み」から「6カ月以上」に短縮する方針が明らかになりました。また、失業手当の給付日数も60日程度上乗せされるようです。厚生労働省では、来年1月の通常国会に雇用保険法の改正案を提出し、2009年度から実施する意向です。

◆政府による新たな雇用対策

上記に記載した対策も含め、政府(新たな雇用対策に関する関係閣僚会合)は、12月9日に「新たな雇用対策について」と題する、今後実施していく施策を発表しています。詳細は下記の首相官邸ホームページをご参照ください。
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2008/1209koyou.pdf


障害者雇用をめぐる現状と不況による影響

◆障害者雇用率が過去最高に

平成20年の民間企業における障害者雇用率が1.59%(今年6月1日時点。前年比0.04ポイント増)となり、過去最高を更新したと、厚生労働省から発表されました。

雇用されている障害者数は約32万6,000人(同2万3,000人増)で、法定雇用率を満たしている企業は44.9%(同1.1ポイント増)です。産業別の実雇用率では、「医療・福祉」「電気・ガス・熱供給・水道」などで高く、「情報通信」「教育・学習支援」などで低くなっています。また、特例子会社の認定企業は242社でした。

また、ハローワークにおける障害者の就職件数については、平成13年度の27,072件以降、年々増加し、平成18年度には43,987件(前年度比13.1%増)と初めて4万件を突破し、平成19年度はこれをさらに3.6%上回り、45,565件と過去最高の就職件数となっています。

◆障害者雇用における「特例子会社」とは?

障害者雇用促進法で定める障害者雇用義務は、個々の事業主に課せられているため、子会社で雇用した障害者の数は親会社の雇用率には反映されません。しかし、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たしたうえで厚生労働大臣の認定を受けた場合には、子会社の労働者は親会社の労働者とみなされ、親会社が雇用する労働者数に加えることができます。この子会社を「特例子会社」といいます。

◆不況による影響は?

ここ最近の景気の悪化・不況により、障害者雇用への影響が出ている業種もあるようです。

売上の落ち込みが特に激しく、多くの企業が減産の方針を明らかにしている自動車業界では、障害者を雇用して部品の下請作業などを行っている「作業所」や「就労支援施設」において、受注カットなどが目に見えて増えているようです。これにより、労働者の収入が減少しているケースが多く見受けられ、労働者に不安を与えています。

◆初めて障害者を雇用した企業に奨励金支給へ

厚生労働省では、現在、障害者のさらなる就労促進を目的として、初めて障害者を雇用した中小企業(従業員56〜300人)に奨励金を支給する制度の創設を検討しているそうです。一企業について数十万円〜100万円程度を支給するとするもので、同省は、早ければ今年度中に実施したい考えです。

制度創設により、障害者雇用に良い影響を与えられるでしょうか。


国民年金の適用年齢を見直し!?

◆年金保険料はいつからいつまで払うのか

2009年度における財政再計算に向けて、社会保障審議会年金部会は国民年金の適用年齢の見直しを検討しています。「20歳〜60歳が適用」ですっかり定着している国民年金ですが、どのように見直されているのでしょうか。

◆学生から取る保険料

現在国民年金の適用年齢は20歳からですが、現状では、22歳程度までは大学生等の学生の割合が多く、生産活動に従事しているとは言い難い状況です。それを反映してか国民年金の保険料納付率は、20歳代が最も低く、年齢階層が上がるに従って高くなる傾向にあります。これらの事情を踏まえて、「学生から保険料を取ること自体がおかしく、適用年齢を引き上げるべき」、「より年金制度に関心を持つ世代に適用範囲をシフトさせれば、納付率の向上が期待できる」、「保険料の徴収は稼得と連動させるべき」といった意見があります。

◆見直し案と検討事項

見直す際に考えられる選択肢としては…
(1)適用年齢を25〜65歳とする。(40年加入は堅持)
(2)適用年齢を20(または18)〜65歳とし、その間で40年納付すればよいこととする。
(3)適用年齢を20〜65歳とし、うち20〜25歳は一律納付猶予の期間とする(任意で保険料を納付した場合には保険料納付期間として取り扱う)。60〜65歳については当面は任意加入とすることも検討する。

(1)の場合、20〜24歳については障害年金が給付されなくなるので、別途その期間中について障害者の所得保障のための措置(福祉手当の創設)を講じる必要があると考えられます。(2)の案は、個々の被保険者が保険料を納めていない期間について、「納付しなくてもよい期間(強制徴収不可)」と「納付すべきなのに納付していない期間(強制徴収がありうる期間)」との区別をどのようにつけるのか、検討の必要がありそうです。最後に(3)の案は、40年間という現行加入期間を超える期間の年金額への反映について、対処する必要があります。

適用年齢の問題とは別に、国民年金保険料の徴収時効を現行の2年から5年程度に延長することや、基礎年金の支給を受けられるようになるために必要な保険料を支払ったとみなされる期間(受給資格期間)を、現行の25年から10年程度に短縮することなどについても検討されています。

国民年金法の成立は昭和34年、当時とは全く様相の異なる現代社会にマッチした、柔軟な年金制度改革の実施が、待ち望まれます。そのための論議は、選挙の争点とするなどにより、国民全体で広く考えていくことも望ましいのではないでしょうか。