人事労務の時事解説 2009年2月号

 

「育児・介護休業法」改正をめぐる動き
 
◆労働政策審議会が建議
 
厚生労働省は、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会に「仕事と生活の両立支援」を目的とした育児・介護休業制度の見直し案を提示していましたが、同審議会は、昨年12月25日、同見直し案を舛添大臣に建議しました。厚労省では、現在開催中の通常国会に育児・介護休業法改正案を提出する考えのようです。
 
改正法案には、3歳未満の子どもを持つ労働者の残業免除や短時間勤務措置の事業主への義務付け、男性の育児参加を促すための仕組みや介護のための短期休暇制度の創設なども盛り込まれる模様です。なお、短時間勤務制度などに関しては、中小企業への適用に猶予期間を設けられるようです。
 
以下、改正法案のベースとなる、労働政策審議会雇用均等分科会が示している報告案の内容を見てみます。
 
◆「子育て中の働き方の見直し」について
 
短時間勤務について、3歳に達するまでの子を養育する労働者に対する事業主による単独の措置義務とすることが適当であり、この場合、例えば、勤務時間が1日6時間を上回る分の短縮の措置を含むこととするなど、措置の内容について一定の基準を設けることが適当だとしています。
 
また、所定外労働の免除については、3歳に達するまでの子を養育する労働者の請求により対象となる制度とすること、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の労働者等については、労使協定により措置の対象から除外できるようにすることが適当であるとしています。
 
◆「父親も子育てができる働き方の実現」について
 
父母がともに育児休業を取得する場合に、育児休業取得可能期間を子が1歳2カ月に達するまでに延長することが適当であり、この場合、父母1人ずつが取得できる休業期間の上限については、現行と同様に1年間とすることが適当であるとしています。
 
また、出産後8週間以内の父親の育児休業取得を促進し、この期間に父親が育児休業を取得した場合には、特例として、育児休業の再度取得の申出を認めることが適当であるとしています。
 
◆「子育て・介護の状況に応じた両立支援制度の整備」について
 
子の看護休業について、付与日数を小学校就学の始期に達するまでの子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日とすることが適当であり、子どもの予防接種や健康診断の受診についても取得理由として認めることが適当であるとしています。
 
介護のための短期の休暇については、要介護状態にある家族の通院の付き添いなどに対応するため、介護のための短期の休暇制度を設けることが適当であり、この場合、付与日数ついては、1人につき年5日、2人以上であれば年10日以上が適当であるとしています。
 
 
内定取消しによる企業名公表の基準
 
◆内定取消しが急拡大
 
企業による新卒者の内定取消しが大きな社会問題となっています。
 
厚生労働省の調査によれば、来春に高校や大学を卒業する学生の採用内定取消件数は、12月下旬時点で172事業所769人となっています。この数字は、11月の第1回調査時点(331人)と比較して急拡大しており、大手証券会社の破綻による影響が出た1998年(1,077人)を上回るハイペースです。産業別では、不動産が197人と最多で、製造業が187人で続いています。
 
また、文部科学省は、内定取消し問題で大学関係者らを集めて12月中旬に緊急対策会議を開きましたが、大学側の調査により、国立大だけで47人の内定取消しがあったことがわかっています。また、日本高等学校教職員組合の緊急調査では、採用内定を取り消された高校生が全国で73人(12月19日現在)にのぼっています。
 
◆内定取消しが認められる場合とは?
 
大日本印刷事件(最高裁昭和54年7月20日判決)では、内定取消しが認められる場合について、「内定当時知ることができず、また知ることを期待できないような事実があり、それを理由に内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できる場合」に限られるとしています。
しかし、企業との結びつきの強弱の観点から、内定取消しは、社会通念上相当な事情があれば、正式採用後の解雇に比べると合理性や相当性が緩やかに認められるといえるでしょう。
 
◆内定取消し企業名の公表基準
 
厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会職業安定分科会は、1月上旬に、厚生労働省が示していた新卒者の内定取消し企業名の公表基準について了承し、舛添厚生労働大臣に答申しました。1月中に実施される予定の公表基準(5項目)は以下の通りです。
 
(1)2年連続で内定取消しを行った。
(2)同一年度に10人以上の内定取消しを行った。
(3)事業活動の縮小が余儀なくされていると明らかには認められない。
(4)学生に内定取消しの理由を十分に説明していない。
(5)内定を取り消した学生の就職先の確保を行わなかった。
 
昨年中に内定取消しを行った企業についても、上記の基準に該当すれば、企業名が公表されるそうです。
 
 
職場での「不当な扱い」と企業の責任
 
◆募集時の説明と異なる労働条件
 
「募集時の説明と労働条件が違う」。新聞報道によると、若手社会人の約7割、アルバイト学生の半数が、働くうえでこのような「不当な扱い」を経験したと回答していることが、厚生労働省の調査で明らかになりました。
 
◆多くの人が「対応何もせず」
 
勤務先やアルバイト先で受けた不適切な扱いで一番多かったのが、「労働条件が募集時の提示内容と異なる」というもので、社会人の38.4%、学生の21.8%が経験しているそうです。
 
社会人では、「就業規則をいつでも確認できるようになっていない」が28.2%、「労働条件を書面で提示されていない」が22.6%で「残業代が支払われない」も21.3%にのぼり、学生の回答もほぼ同じ項目が上位に並びました
 
逆に、「不当な扱いの経験がない」と答えたのは、社会人で28.9%、学生の52.6%でした。
 
このような不当な扱いを受けた際にどのよう対応をしたかを聞いたところ、「同僚に相談した」「転職した、辞めた」といった回答よりも多かったのが、「何もしなかった」という回答で、社会人の41.3%、学生の54.8%を占めました。
 
◆大きなトラブルになる前に
 
「何もしなかった」という理由として、社会人・学生ともに「どうせ何も変わらない」「対処するのが面倒」ということが多く挙げられています。
 
その原因として、若い社会人や学生の多くが、労働法規の理解が乏しかったり、理解していてもどうせ改善されないと考えたりするということがあるようです。改善策としては、学校教育や社員研修の中で、労働者の権利と義務を学ぶ機会を与え、キャリア教育を充実させる必要性があると指摘されています。
 
労働者が不当な扱いを受けていながらそれを放置していたからといって、会社側は安心できません。
 
不当な扱いの中には、「残業代の不払い」「労働条件の相違」「上司による嫌がらせ」「セクハラ」等、経営者側の法律違反・コンプライアンス違反が問われるものが多く見受けられます。残業代不払いやセクハラ問題が、労働者の訴えにより明らかになり、多額の不払い残業代や損害賠償請求などを支払わなければならない状況に追い込まれ、経営が圧迫されている企業も最近ではたびたび見受けられます。
 
まずは法令順守の目線から職場環境を見直し、正社員・非正社員と雇用形態にかかわらず、誰もが働きやすい職場作りを目指すことが、経営者にとって急務といえるでしょう。
 
 
「石綿健康被害救済法」改正による被害者救済の拡充
 
◆石綿被害者救済のための法律
 
2006年に「石綿健康被害救済法」が施行され、その後 度々改正が行われました。そして、2008年12月1日に、「石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律」が施行されました。
 
◆支給内容の拡充・支給期限の延長
 
今回の改正により、2008年12月1日より、以下の通り支給が拡充されています。
 
(1)医療費等の支給開始日が「療養開始日」に
 
医療費や療養手当の支給開始日が、「認定の申請をした日(認定申請日)」から「療養を開始した日(療養開始日)」に改正されました。すでに認定されている方についても、さかのぼっての支給となります。ただし、認定申請日から3年前の日より前に遡ることはできません。
 
(2)法律施行日以降に亡くなった方の遺族に特別遺族弔慰金等を支給
 
石綿を吸入することにより中皮腫や肺がんにかかったものの認定の申請を行わず、これらの疾病に起因して2006年3月27日(法律施行日)以降に亡くなった方の遺族にも、特別遺族弔慰金・特別葬祭料(約300万円)が支給されることとなりました。
 
(3)特別遺族弔慰金等の請求期限を延長
 
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(約300万円)の請求期限が、2012年3月27日まで延長されることになりました。
 
◆被害者への手厚い救済の動き
 
労災保険でも健康保険でも、多くの給付は、支給が開始されるのは「療養開始日」となっています。石綿に関して言えば、体に違和感をおぼえ療養を開始し、治療を行う中で石綿が原因であることが判明し、その後申請を行って支給が開始される流れになっています。
 
これまでは、病院に行き療養を開始した日と申請日が異なる場合、申請するまでの間に受けた治療等については健康保険等においての自己負担となっていました。しかし、今回の改正により、支給開始日が「認定申請日」から「療養開始日」と変更され、法施行日以降に亡くなった方の遺族にも特別遺族弔慰金等が支給されることになり、被害者や遺族にとっては歓迎すべき改正になったと言えるでしょう。
 
 
国の失業者対策と民間企業や自治体による失業者の採用
 
◆非正規労働者の失業が急増中
 
厚生労働省の調査によれば、景気後退によるリストラにより、昨年10月から今年3月までに職を失う(実際に失った)非正規労働者の数は8万5,012人に達する模様で、昨年11月末の調査時から2.8倍に拡大しています。また、昨年11月の有効求人倍率(0.76倍)、完全失業率(3.9%)はいずれも悪化しており、不況の深刻さを物語っています。
 
連合が昨年12月中旬に発表した「緊急雇用実態調査」によれば、過去3カ月間に解雇等の雇用調整を行った企業は約3社に1社にのぼるそうです。期間工や派遣労働者を多く雇用している製造業ではこの傾向が特に顕著であり、約48%の企業が、すでに雇用調整を実施しています。
 
◆厚生労働省による失業者対策
 
厚生労働省は、昨年12月に、失業した非正規労働者に対して、ハローワークを通じて住居費や生活費に充てるための資金(半年で最高180万円)を低利で融資すると発表しました。また、派遣契約解除に伴う失業者の就業支援を今年から強化する方針も明らかにしています。内容は、全国約30カ所のハローワークに専属の担当者を配置し、履歴書の書き方や面接の受け方に関する指導、職業紹介などを行うものです。
 
また、同省は、雇止めされた非正規労働者などが失業手当を受給するために必要な雇用保険の加入要件について、現行の「1年以上の雇用見込み」から「6カ月以上」に短縮する方針も示しています。失業手当の給付日数も60日程度上乗せする方針で、現在開会中の通常国会に雇用保険法の改正案を提出し、2009年度からの実施を目指すとしています。
 
◆民間企業・自治体による失業者などの積極採用
 
タクシー会社の第一交通産業(福岡県北九州市)では、雇用の受け皿として、今年3月末までに30の都道府県で合計6,000人を運転手として採用すると発表しました。居酒屋「白木屋」などを運営するモンテローザ(東京都武蔵野市)でも、主に雇用調整で失業した人などを対象として、3月末までに最大で500人を正社員採用すると発表しています。その他にも、ラーメンチェーンを経営する幸楽苑(福島県郡山市)は店長候補として150人、進学塾などを経営する学究社(東京都新宿区)は臨時職員として100人をそれぞれ採用するとしています。
 
同様の動きは自治体でも見られます。大分キヤノンや東芝などの工場がある大分市では、解雇された非正規労働者約50人を臨時職員やアルバイトとして採用することを決定しています。神奈川県横浜市(約500人)、東京都港区(約50人)などでも、不況対策として契約解除された非正規労働者を中心に臨時職員として採用する方針を示しています。トヨタ自動車の本社がある愛知県豊田市では、1月中旬以降に臨時職員100人前後を採用するそうです。
このように、失業者を積極的に採用する動きは今後も広がっていきそうです。
 
 
派遣労働者数が過去最多に、賃金は減少傾向
 
◆厚労省が平成19年度の集計結果を発表
 
労働者派遣事業の事業運営状況については、労働者派遣法に基づいて、各派遣元事業主から当該事業所の事業年度ごとに「労働者派遣事業報告書」が厚生労働大臣に提出されることになっています。
 
平成19年度中に事業年度が終了し、報告書を提出した派遣元事業所(一般労働者派遣事業所20,095事業所、特定労働者派遣事業所30,014事業所)の事業運営状況について、厚生労働大臣が取りまとめ、昨年12月下旬にその概要を発表しました。
 
主なポイントは以下の通りです。
 
◆派遣労働者数が過去最多を更新
 
2007年度の派遣労働者数は約384万人(前年度比19.6%増。登録型派遣約280万人、常用型派遣約104万人)となり、過去最多を更新しました。派遣事業所数、年間売上高も前年度より約2割増となっています。
 
しかし、厚生労働省では、景気後退の影響による昨秋以降の急激な「派遣切り」などの影響により、今年度は派遣労働者等の減少を見込んでいます。
 
◆派遣労働者の賃金は減少傾向
 
派遣労働者の賃金については、8時間換算で、一般労働者派遣事業においては平均9,534円(前年度比9.8%減)、特定労働者派遣事業においては平均13,044円(前年度比7.9%減)となり、いずれも減少傾向にあります。
 
◆紹介予定派遣の活用状況
 
紹介予定派遣により労働者派遣された労働者の数は53,413人(前年度比19.0%増)、紹介予定派遣で職業紹介を経て直接雇用に結びついた労働者の数は32,497人(前年度比18.8%増)となり、いずれも増加傾向にあります。
 
 
「次世代育成支援対策推進法」改正のポイント
 
◆少子化抑止のための法律
 
少子化が急速に進行し、今後の経済社会に深刻な影響を与えることが懸念されています。そこで、次代を担う子どもたちが健やかに産まれ、育成されるのに必要な環境整備を図るため、2003年7月に「次世代育成支援対策推進法」が成立しました。この法律により、国・自治体・企業それぞれの責務を明らかにし、一体となって、少子化の流れを変えるための環境整備を推進することになりました。
 
今回、この次世代育成支援対策推進法の一部が改正されました。
 
◆改正内容のポイント
 
次世代育成支援対策推進法では、地方公共団体等が「地域行動計画」を策定・公表するとともに、企業においても、従業員数に応じて、従業員の仕事と子育ての両立を支援するための「一般事業主行動計画」を策定し、その旨を届け出ることが義務付けられています。
 
今回の改正では、上記の行動計画の届出を義務付ける企業規模が拡大され、行動計画の公表および従業員への周知が義務化されています。詳細は下記の通りです。
 
(1)行動計画の公表および従業員への周知の義務化
 
仕事と家庭の両立を支援するための雇用環境の整備について、事業主が策定する一般事業主行動計画の公表・従業員への周知が、従業員101人以上の企業は義務、100人以下の企業は努力義務となります。(2009年4月1日施行。従業員101人以上300人以下の企業は2011年3月31日までは努力義務)
 
(2)行動計画の届出義務企業の拡大
 
一般事業主行動計画の策定・届出の義務付け範囲が、従業員301人以上の企業から、従業員101人以上の企業に拡大されます。(2011年4月1日施行)
 
◆「くるみん」マーク取得が効果を生む
 
この法律に基づいて、従業員が仕事と子育てを両立できる職場環境の整備を目指し、行動計画を作成し、定めた目標を達成したことなど一定の要件を満たした場合、申請を行うことにより、都道府県労働局長の認定を受けることができます。認定を受けた事業主は、次世代認定マーク(愛称:くるみん)を求人広告、自社の商品などにつけることができます。
 
このマークの取得により、次世代育成支援対策に積極的に取り組んでいる企業であることがアピールでき、企業イメージが向上し、その企業に雇用される従業員のモラールアップや優秀な人材の確保につながることが期待されています。最近では、名刺やホームページなど、あらゆるところでこのマークが見受けられるのも、様々な期待と効果を生んでいる表れではないでしょうか。
 
 
無保険の子どもを救う「改正国民健康保険法」
 
◆「無保険」の子どもを救済
 
自営業者らが加入する国民健康保険において、景気悪化の影響もあり、保険料の滞納が目立っています。保護者が国民健康保険の保険料を滞納したために「無保険」になっている中学生以下の子どもに臨時の保険証を発行する「改正国民健康保険法」が成立し、今年の4月1日から施行されることになりました。
 
◆滞納から発生する問題
 
日本では、全国民が公的な医療保険制度に加入する「国民皆保険」が建前となっています。会社員や公務員といった勤め人とその扶養家族は健康保険や共済組合などに加入し、自営業者やフリーター、会社退職者などは、原則として、自治体が運営する国民健康保険に加入します。
 
健康保険や共済組合では、多くの場合、加入者の給料から保険料が天引きされます。国民健康保険では、65歳以上の加入者から年金の天引きもありますが、多くの加入者は保険料を自ら払い込みます。国民健康保険に加入している世帯は約2,500万世帯あるそうですが、その2割弱で滞納が発生していると言われています
 
厚生労働省は保険料徴収を強化するため、2000年から、1年以上滞納したときは、特別な事情がなければ、保険証ではなく「資格証明書」を交付することを自治体に義務付けました。この資格証明書は、保険証の代わりに交付されるもので、窓口負担が全額自己負担となりますが、市町村へ申請することにより保険給付部の7割が還付されます。
 
しかし、資格書証明書を持つ加入者が病院にかかることを我慢し、病状を悪化させたり、死に至ったりするケースが報告され始め、この仕組みが裏目にでるようになりました。さらに、親の保険料滞納により保険証を回収され、医療機関にかかることの多い子供たちが「無保険状態」になることが問題視されるようにもなりました。厚生労働省の調査によると、無保険状態の中学生以下の子どもは全国に約3万3,000人もいると報告されています。
 
◆無保険の子どもを救う今回の法改正
 
このような状況に対策を打つべく、今回の改正が行われました。具体的には、中学生以下の子どもが医療を受ける必要がある場合、有効期間が6カ月の「短期保険証」を一律に交付します。これにより、保護者が保険料を滞納している状態であっても、中学生以下の子どもが医療機関で必要な医療を受けられるようになりました。
 
国民健康保険は国民「皆保険」を守る最後の砦となっているにもかかわらず、保険料の滞納によって様々な問題が生じているのが現状です。必要な医療を受けられない無保険の子どもを救済するために今回の改正は行われましたが、まだまだ取り組むべき課題がたくさん潜んでいるようにも思えます。
 
 
母子手帳の電子化をはじめとするIT活用
 
◆母子手帳の電子化構想
 
政府は、パソコンや携帯電話などを活用して、現行の母子手帳に双方向性の機能を持たせる「電子版母子手帳」(仮称)の導入を検討しているそうです。今年度中にもモデル自治体において実証実験が行われるようです。
 
◆様々な手続きの電子化が負担軽減に
 
母子手帳を電子化して双方向機能を持たせることで、女性の負担を軽減したり孤立感を解消したりと、少子化対策の一助とするねらいがあります。行政機関が保有するデータを連携させることで、児童手当などのネット申請を実現可能にします。また、婚姻届を提出すれば他の申請書類を出さなくてもパスポートや運転免許などの情報を変更できるシステムの構築も検討されています。
 
新しい母子手帳は、ネット上の個人ページに入力した母子の体重・血圧などの健康情報に基づき、地域の医療機関などからアドバイスなどの返信を受けられる仕組みを想定しています。健康診断や予防接種の実施日も電子メールで通知し、診療漏れを防ぐ効果が期待されています。
 
女性の結婚から育児時期までの様々の煩雑な手続きについて、ITを活用することにより負担を軽減する、その支援イメージはまさに具体化しつつあります。そして、政府が導入を目指している年金や医療などの個人情報を集約した「電子私書箱」(仮称)と連動させることも検討されています。
 
◆電子化計画の実現に向けて
 
このような様々な効果や効率化が期待されている電子化計画ですが、実現するにはまだ様々な課題があります。全国の自治体においては、情報のインフラに互換性を持たせる必要があります。そして、これにより地方の負担が重くなれば自治体との調整が難航する可能性もあります。IT化することで誰もが利用できる環境を整えること、誰もが使いこなせる仕組みを作ることも必要となり、情報格差という新たな問題も出てくるでしょう。
 
まだまだ実現可能になるまでは、課題も山積みで情報のインフラを整えることも必要な状況ですが、この母子手帳の電子化をはじめとするITを活用した育児世帯支援の実現は女性にとって望ましい、優しい社会を作り出すことは間違いないと言えるのではないでしょうか。
 
 
「年金記録問題」に関連した最近の動き
 
◆「無年金」状態から受給権を回復
 
社会保険庁は、「宙に浮いた年金記録」から自分の記録が見つけ出されたことにより、「無年金」の状態から受給権を回復できた人が、今年5〜9月の間に62人いたと発表しました。この62名の方々の年齢は62歳から93歳までであり、受給可能な年金額は年間平均で約61万3,000円となっています。
 
◆記録の訂正が社保事務所で可能に
 
社会保険庁は、厚生年金標準報酬月額が改ざんされていた問題に関して、記録の回復を早めるため、従業員の記録が遡って改ざんされていた場合について、総務省の年金記録確認第三者委員会における審査を省略し、社会保険事務所で記録を訂正できるよう、全国の社会保険事務所に通知を出したそうです。
 
被害者が事業主や役員でない一般の従業員であり、事業所が厚生年金から脱退した後に遡って従業員の標準報酬月額が引き下げられていたり、加入期間が短くされていたりするケースにおいて、改ざんされた時期の給与実態が給与明細書等の記録により確認できる場合に、記録の訂正が可能となります。
 
◆記録漏れの訂正事務処理体制を強化
 
舛添厚生労働大臣は、年金記録の訂正事務処理を行うための人員について、現在の280名から500名に増やす方針を明らかにしました。平均で7カ月程度かかっている訂正申請から年金受給までの期間を3カ月程度に短縮するのがねらいだそうです。なお、1月末時点での未処理件数は約80万件にのぼると見込まれています。
 
また、舛添大臣は、年金の支払いが遅れた分だけ利息をつけることを検討する意向を示しました。税金が徴収されすぎた場合には利息をつけて還付されていることが念頭にあるようです。
 
◆「電子私書箱」活用で記録改ざん防止に
 
政府は、社会保障関連の個人情報などを、本人がインターネットで閲覧できる「電子私書箱」(仮称)を活用して、標準報酬月額などをネット上で直接確認できるようにする制度の創設を検討していることを明らかにしました。事業主や社会保険事務所の手続上のミスや改ざん防止をねらうためであり、順調に行けば2011年度導入の予定です。

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