無保険の子どもを救う「改正国民健康保険法」
◆「無保険」の子どもを救済
自営業者らが加入する国民健康保険において、景気悪化の影響もあり、保険料の滞納が目立っています。保護者が国民健康保険の保険料を滞納したために「無保険」になっている中学生以下の子どもに臨時の保険証を発行する「改正国民健康保険法」が成立し、今年の4月1日から施行されることになりました。
◆滞納から発生する問題
日本では、全国民が公的な医療保険制度に加入する「国民皆保険」が建前となっています。会社員や公務員といった勤め人とその扶養家族は健康保険や共済組合などに加入し、自営業者やフリーター、会社退職者などは、原則として、自治体が運営する国民健康保険に加入します。
健康保険や共済組合では、多くの場合、加入者の給料から保険料が天引きされます。国民健康保険では、65歳以上の加入者から年金の天引きもありますが、多くの加入者は保険料を自ら払い込みます。国民健康保険に加入している世帯は約2,500万世帯あるそうですが、その2割弱で滞納が発生していると言われています
厚生労働省は保険料徴収を強化するため、2000年から、1年以上滞納したときは、特別な事情がなければ、保険証ではなく「資格証明書」を交付することを自治体に義務付けました。この資格証明書は、保険証の代わりに交付されるもので、窓口負担が全額自己負担となりますが、市町村へ申請することにより保険給付部の7割が還付されます。
しかし、資格書証明書を持つ加入者が病院にかかることを我慢し、病状を悪化させたり、死に至ったりするケースが報告され始め、この仕組みが裏目にでるようになりました。さらに、親の保険料滞納により保険証を回収され、医療機関にかかることの多い子供たちが「無保険状態」になることが問題視されるようにもなりました。厚生労働省の調査によると、無保険状態の中学生以下の子どもは全国に約3万3,000人もいると報告されています。
◆無保険の子どもを救う今回の法改正
このような状況に対策を打つべく、今回の改正が行われました。具体的には、中学生以下の子どもが医療を受ける必要がある場合、有効期間が6カ月の「短期保険証」を一律に交付します。これにより、保護者が保険料を滞納している状態であっても、中学生以下の子どもが医療機関で必要な医療を受けられるようになりました。
国民健康保険は国民「皆保険」を守る最後の砦となっているにもかかわらず、保険料の滞納によって様々な問題が生じているのが現状です。必要な医療を受けられない無保険の子どもを救済するために今回の改正は行われましたが、まだまだ取り組むべき課題がたくさん潜んでいるようにも思えます。