人事労務の時事解説(2009年4月号)

人事労務の時事解説 2009年4月号

改正雇用保険法が成立、3月31日施行

◆企業の労務管理にも影響大

「雇用保険の適用拡大」「失業給付の拡充」「雇用保険率の引下げ」などを柱とした雇用保険法改正案が3月27日参院本会議で全会一致で可決、成立しました。3月31日から施行されています。ここでは、その改正内容を簡単にご紹介します(詳細は下リンク掲載の厚生労働省ホームページを覧下さい)。

◆改正の目玉

改正の目玉の1つは、「雇用保険の適用拡大」です。受給資格要件を緩和し、現行の「雇用見込み1年以上」から「雇用見込み6カ月以上」に短縮しました。厚生労働省では、この短縮により、新たに約148万人の労働者が雇用保険の適用対象となると見込んでいます。しかし、それでもパート労働者など約858万人は対象にはならないと言われており、問題視されています。

◆「6ヶ月以上」雇用見込みで雇用保険に加入義務

これまで雇用保険では、短時間就労者・派遣労働者について、1年以上の雇用見込みがあること、かつ1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であることの2つの要件を満たした場合に被保険者とされていました。今回の改正によりこの適用範囲が拡大され、以下の@とAの要件を満たした場合に被保険者となることとなりました。

@「6ヶ月以上の」雇用見込みがあること
A1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること

この改正により、平成21年4月1日(適用日)以降に上記の要件を満たす労働者を雇い入れた場合には、雇用保険に加入させなければなりません。また、平成21年3月31日以前から雇用している労働者については、4月1日(適用日)以降に適用基準を満たすことになった場合も同様に加入させなければなりません

なお、6ヶ月以上の雇用見込みの判断については、6ヶ月以上の期間を定めて雇用する場合はもちろんのこと、6ヶ月未満の短期の期間を定めて雇用する場合であっても更新規定により6ヶ月以上の雇用が見込まれる者、更新規定がなくとて雇い入れの目的等から6ヶ月以上の雇用が見込まれる者は、雇い入れの当初から被保険者となります。今回の法改正による適用範囲の拡大により、被保険者となるべき労働者の増加および雇用保険料負担の増加が想定されます。

◆その他の改正内容

「失業給付の拡充」も大きな改正事項です。解雇や労働契約が更新されなかったことによる離職者について、年齢や地域を踏まえたうえで、特に再就職が困難な場合には、給付日数が60日分延長されました。

その他、「雇用保険率の引下げ」(平成21年度に限り0.4%引下げ)、育児休業給付の見直し(休業中と復帰後の給付を統合して休業期間中に全額支給)、再就職手当の支給要件緩和・給付率の引上げ(30%から40%または50%に)なども実施されており、これらも企業に影響を与える内容となっています。

◆施行日を1日早めた理由

施工日は当初の政府原案では「4月1日」でしたが、製造業務への派遣労働者を中心に年度末に3年間の契約が切れ、多くの失業者が生まれるとされる「09年問題」も念頭に、与野党は施行を1日早めて「3月31日」とする修正案に合意しました。政府は1日繰り上げたことで、新たに2万人以上の失業者を救済できると見込んでいます。


厳しい雇用情勢と助成金制度の拡充

◆厳しい雇用情勢が続く

厚生労働省が発表した1月の有効求人倍率は、前月より0.06ポイント低い0.67倍で、2003年9月以来、5年4カ月ぶりの低水準を記録しました。また、総務省が発表した1月の完全失業率は4.1%で、前月より0.2ポイント改善したものの、依然として高い数値となっています。完全失業者の数は、前年同月比21万人増の277万人に上っています。

世界的な金融危機と景気後退を受け、生産・雇用情勢が一段と悪化している折り、政府は様々な雇用対策を打ち出しています。

◆数値でみる雇用情勢

有効求人倍率とは、公共職業安定所(ハローワーク)で職を探している人1人につき何人分の求人があるかを示す数値で、雇用情勢の動向が比較的早く数値に反映されると言われています。1月における数値の低下は、1992年以来の大幅なものとなりました。

完全失業率は、15歳以上の働く意思のある人のうち、まったく職についていない人の比率を示す数値です。1月は3カ月ぶりに改善しましたが、これは厳しい雇用情勢を受けて職探しを一時見合わせる人や、女性の短時間労働者が増えるなどしたための形式的・一時的なものとみられ、雇用情勢の厳しさは変わらないと判断されています。

◆助成金による政府の雇用改善対策

政府は雇用対策の一環として、助成金制度の新設と要件緩和・要件拡充を次々に打ち出しています。

例えば、「日本型ワークシェアリング」の促進を目的として、残業時間を削減して非正規労働者の雇用を維持した場合に非正規労働者1人当たり年20万から45万円を助成する「残業削減雇用維持奨励金」を設けました。具体的には、生産高や売上高が減少しながら、正社員の解雇や派遣契約の中途解除をせずに、従業員らを直近6か月平均で80%以上維持している企業が対象です。残業時間を直近6か月平均の2分の1以上減らした場合に、期間工や契約社員1人あたり年30万円(大企業の場合は20万円)、派遣社員は45万円(同30万円)をそれぞれ100人を上限に支給します。

同時に、従来の「中小企業緊急雇用安定助成金(雇用調整助成金)」についても、当該助成金を受給する事業主のうち、休業等を実施した期間及びその前6ヶ月間に解雇等を行なわなかった事業主に対しては、中小企業緊急雇用安定助成金の助成率を4/5から 9/10に(雇用調整助成金は2/3から3/4に)上乗せすることとしました。

また、新たに「若年者等正規雇用化特別奨励金」が創設されています。これは、雇用改善を目指し正規雇用を支援するもので、「採用内定を取り消されて就職先が未決定の学生等」または「年長フリーターおよび30代後半の不安定就労者」を正規雇用する事業主が、一定期間ごとに引き続き正規雇用する場合に、中小企業には総額100万円、大企業には総額50万円の奨励金を支給するものです。

この他にも、「派遣労働者雇用安定化特別奨励金」、「介護未経験者確保等助成金」、「特定求職者雇用開発助成金」など、様々な助成金制度が創設され、要件が緩和されています。

◆助成金による雇用改善策は実るか

このような助成金制度による雇用対策により、政府の目指す雇用改善はどれだけ図られるでしょうか。その成果が有効求人倍率や完全失業率に数値として現れてくるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。雇用情勢の悪化が今後も続くことが懸念されます。


「有期労働契約」のルールを根本から見直しへ

◆厚生労働省が研究会を立上げ

近年、正社員と非正社員との賃金格差(対応した「改正パートタイム労働法」が2008年4月に施行済み)、景気悪化を背景とした期間工の雇止め、そしていわゆる「派遣切り」による失業者の増大など、「非正規雇用」や「有期労働契約」に関する事項が大きくクローズアップされています。今年3月末までに期間従業員約23,000人が職を失うとも報道されています。

有期契約労働者とは、「臨時雇い」(1カ月以上1年以内の雇用契約)と「日雇い」(日々または1カ月未満の雇用契約)の総称だと言われていますが、厚生労働省では、「有期労働契約」に関する法規制の在り方を根本から見直す方針を打ち出し、新たな有期労働契約のルール作りを目指すため、学識経験者・専門家(大学教授)で構成される「今後の有期労働契約の在り方に関する研究会」を立ち上げました。

先日(2009年2月23日)、研究会の第1回会合が開催されましたが、今後、労働基準法や労働契約法の改正なども見据えているようであり、議論が深められていきそうです。

◆非正規雇用社員・有期労働契約の問題点

これは2007年時点のデータですが、正規雇用社員の数は約3,441万人、非正規雇用社員の数は約1,732人となっており、1985年時点と比較すると、正規雇用社員は約98万人、非正規雇用社員は約1,077万人増加しており、以前と比べ非正規雇用社員の割合がだいぶ高くなってきています。非正規雇用社員の内訳は、パート社員が822万人、契約社員・嘱託社員等が435万人、アルバイトが342万人、派遣社員が133万人です。

このような状況において、上記の研究会では、有期労働契約に関して、
(1)契約期間の上限制限(現行は原則3年、特例5年)、
(2)有期労働契約の範囲と職種ごとの期間制限、
(3)契約締結時の労働条件の明示、
(4)通常の労働者との処遇の均衡、
(5)契約の更新と雇止め
などに論点を絞り、いかなる法規制が必要なのか、または必要でないのかといった方向性を検討していくようです。

◆今後の動き−法改正はあるか?

研究会は、2009年度の早い時期に有期労働契約者の就業に関する実態調査を行ったうえで、有期労働契約に関する論点を整理し、2010年の夏ごろまでに報告書をまとめ、法律(労働基準法や労働契約法など)の改正を行っていきたい考えのようです。新聞紙上では、「雇止めの制限」「契約更新回数の制限」「最長3年間の契約期間の見直し」などが行われるのではないかと報道されています。

将来的には、有期労働契約に関するルールが大きく変わっていき、企業の人事労務管理に大きな影響を与えるようになるのかもしれません。


不法滞在外国人減少に向けた取組みと
新在留資格「技能実習」の創設


◆不法滞在外国人が大幅に減少

ここ数年、不法滞在の外国人が大幅に減少しているようです。法務省の入国管理局によれば、2004年に約25万人いた日本国内における不法滞在外国人の数は、2009年1月時点では約13万人になっているそうです。5年間でなんと約48%も減少しており、同省では、政府の中期的計画に基づいた「摘発の強化」と「入国審査の厳格化」が功を奏したとみているようです。

不法滞在外国人については、犯罪の温床になっているとも言われていますが、来日外国人の犯罪(不法滞在者以外によるものも含む)も減少傾向にあり、2007年中の来日外国人犯罪の検挙件数は3万5,800件(1万5,923人)で、前年比で4,328件(10.8%)減少しています。

◆法改正による「在留カード」の発行

政府は、さらなる対策にも取り組もうとしています。従来からあった「外国人登録証」(外国人登録制度)を廃止して、新たに「在留カード」(3カ月以上の滞在を認められた外国人について発行される)を作成するため、入国管理・難民認定法の改正案を3月6日閣議決定しました。今国会での成立を目指しています。

法務省の推計によれば、現在、約2万人の不法滞在外国人に「外国人登録証」が発行されていますが、「在留カード」には、偽造を防止するためにICチップが付けられ、不法就労者かどうかをすぐに見分けられるようにしまう。また、顔写真・氏名・国籍・住所・在留資格・有効期間などの情報が明記され、情報の変更には届出が義務付けられます。また、就労する資格があるかどうかについても記載されるとのことです。

なお、この在留カードを偽造した者には非常に重い罰則(1年以上10年以下の懲役など)が課せられることになっています。この法律改正により、さらなる不法滞在者の減少が期待されています。

◆「適法滞在者」には有利に

一方で、不法でない、適法な滞在外国人については、在留期間の上限をこれまでの3年から5年に延長することなども改正案に盛り込まれています。また、再入国については、原則として1年以内は政府による許可が不要とされるようです。

また、特別永住者(在日韓国人・在日朝鮮人など)は上記の改正された制度の対象外とされ、「特別永住者証明書」が発行されるそうです。

◆新在留資格「技能実習」の創設

なお、低賃金労働などのケースが問題になっていた外国人研修制度では、実体に即していないとして異論の多かった「就労研修」と「技能実習」の2本の在留資格を創設する案は見直され、1本化された新たな在留資格「技能実習」(最長3年)として創設される見込みです。

1年目の研修に実務が含まれる場合は雇用契約締結が必要な「技能実習1」、2年目以降に実習が行われる場合は「技能実習2」とされます。 これには、実務研修時の企業との雇用契約を結ばせることで、労働基準法や最低賃金法など労働関係法令の適用を可能にする狙いがあります。


希望退職制度を実施する場合の注意点

◆希望退職制度の実施企業数は?

新聞報道によれば、不況が本格化した昨年の9月以降、正社員の希望退職制度を実施した上場企業は、全国で約120社に及んでおり、希望退職の募集人員は約2万人(このうち約5,200人が応募し、退職が決定している)に上っているそうです。

上場企業だけでこの数字なのですから、中小企業も合わせるとこの数はさらに増え、多くの企業が不況に苦しみ、人員削減に踏み切らざるを得ない状況であることがわかります。

◆希望退職制度とは?

希望退職制度は、退職金を増額することなどを条件として、あくまでも企業側と従業員側との「合意」に基づいて実施される制度です。従来、解雇回避のための、あるいは解雇等に先んじて行われるべき人員削減策として用いられてきました。

希望退職者の募集は、特定の労働者に対して行われるのものではなく、会社全体もしくは少なくとも事業場単位で行われるものとされています。一般に、希望退職者の募集は労働契約解約のための申込みの誘因であると考えられますので、希望退職者の募集自体は、使用者側からの解約の申込みの意見表示ではありません。

そして、労働者が応募することにより、解約の申込みの意思表示をしたことになります。そして、会社がこれに対して承諾の意思表示を行えば労働契約は終了します。

◆制度を実施する場合の手順

企業の状況により異なる場合もありますが、希望退職制度を実施する際の一般的な手順は、次の通りです。

(1)募集対象・募集人員・募集期間などの検討・設定
(2)退職条件・退職予定日などの検討・設定
(3)労働組合や従業員代表との協議
(4)従業員への説明会の開催
(5)希望退職募集の案内(1次・2次・3次…)
(6)応募受付、募集の締切り
(7)合意書の作成など

◆トラブル発生の回避が重要

希望退職制度を実施する際には、労働者との間にトラブルが発生しないような配慮が必要です。特に、従業員の退職合意の任意性を損なわないように十分注意する必要があり、退職に応じるように個別の従業員を執拗に説得するなどの行為は、後々のトラブルに繋がる可能性があります。


プラス改定となった介護報酬と問題点

◆初のプラス改定に

介護サービス事業者に支払われる「介護報酬」について、2009年4月実施の改定率は「3.0%」となることが決定されています。2000年の介護保険制度創設以来、改定の度に引き下げられてきた介護報酬ですが、今回、初めてのプラス改定となりました。

離職率が高く人材確保が困難な現状を改善し、質の高いサービスを安定的に提供できるよう、介護従事者の処遇改善を進めるとともに、事業所の経営の安定化を図るための改定ですが、問題点も指摘されています。

◆介護報酬と改定内容

「介護報酬」とは、介護サービスを提供した事業所や施設が、そのサービスの対価として、保険者である市町村から受ける支払いです。介護報酬の額は、サービスの種類ごとに決められている単位数に、地域別の報酬単価を掛けて算出されます。サービス利用者の負担は介護報酬の「1割」で、残りの「9割」は介護給付費として介護保険から支払われます。

今回の改定では、基本の報酬部分はほとんど上げず、様々な加算部分の見直しを行って、新たに40を超える加算を設けました。職員のキャリアに着目し、介護福祉士や常勤職員の配置割合や勤続年数により報酬に差が出るしくみを採用したことは注目されます。

その他、医療連携・認知症ケアの充実などに関する加算、地域差を調整するための加算が増えています。

◆今回の改定の問題点

今回の改定は加算が中心の改定のため、加算部分が算定できるところとできないところで、事業所の差別化・選別化が進むおそれがあると言われています。また、加算の算定には記録の整備等が必要となるため、事務負担が増え、現場の困難が拡大することも考えられます。

さらに、今改定には利用者側の視点はまったくありません。介護報酬が上がれば、当然、その1割を負担する利用者の負担は大きくなりますが、利用料負担の軽減は行われませんでした。負担分が支払えないために、サービスの利用を制限せざるを得なくなるケースが今以上に増えるかもしれません。

介護サービスに対する家庭の負担を少しでも抑えるためには、「高額介護サービス費」(同じ月に利用したサービスの利用者負担の世帯合計が上限額を超えた分について後から支給する)や「高額医療・高額介護合算制度」(医療・介護にかかった費用の合算額で年限度額を超えた分について後から支給する)など、公的制度をうまく利用するのが賢明だといえるでしょう。


利用が進まない「ジョブ・カード制度」

◆1年間で約4万人に発行

職業経験が少ない人の就職を支援するため、厚生労働省が2008年4月から始めた「ジョブ・カード制度」ですが、普及が遅れています。5年間で100万人へのジョブ・カード発行が目標でしたが、導入から約1年で約4万人にとどまっています。

同省では、ジョブ・カード制度における雇用型訓練実施企業への助成を拡充するなどして、利用を呼びかけています。

◆「ジョブ・カード制度」の概要

ジョブ・カード制度は、企業現場でのOJT(実習)、教育訓練機関等でのOFF−JT(座学等)による職業訓練を通じて、フリーターや子育て終了後の女性など、職業経験の少ない人の能力を高め、就職を支援することをねらいとしてスタートしました。

ジョブ・カードの発行希望者は、企業現場・教育訓練機関で実践的な職業訓練を受け、その評価結果である評価シート等を取得し、これを自らの職歴・教育訓練歴、取得資格などの情報とともに「ジョブ・カード」として取りまとめます。

ジョブ・カードを作成することにより、自分の職業能力・意識を整理することができ、また、作成したジョブ・カードは、常用雇用を目指した就職活動や職業キャリア形成に幅広く活用することができるとされています。

◆政府の対策は?

制度の導入からまもなく1年が経過しますが、制度自体の認知度が低く、そのメリットが広く知られていないうえ、職業訓練希望者の受入れを表明した企業は現在約2,100社と少ない状況です。また、昨秋からの急激な不況で雇用が縮小しており、企業が今後の受入れに二の足を踏むことも予想されます。

普及促進のため、政府は、制度のテコ入れを始めています。まず、企業現場における職業訓練の際にかかる賃金の助成率が、中小企業では「2分の1」から「4分の3」に引き上げられました。また、訓練受入企業の参考となる「モデル評価シート」「モデルカリキュラム」等を作成し、企業の便宜を図っています。

◆不況期の雇用とジョブ・カード制度

中小企業にとっては、大企業が採用活用を控える傾向にある今、良い人材を積極的に採用できるチャンスです。その際にジョブ・カードを活用すれば、事前にその人の職業能力もわかり、雇用のミスマッチをなくすことができます。ひいては、雇用改善の近道ともなるでしょう。

政府には、制度自体の認知度を上げ、普及を進めるためのさらなる対策が期待されます。


4月から発送が開始される「ねんきん定期便」

◆「特別便」の成果はいかに?

社会保険庁は、2007年の年末から2008年の秋にかけて、すべての年金受給者と加入者(約1億900万人)に対して、「ねんきん特別便」の発送を行いました。しかし、思ったほどの効果は上がっていないようです。

この「特別便」への回答率は、昨年12月末時点で63%にとどまっており(そのうち約14%に当たる991万人が自分の記録に「漏れ」や「間違い」があると回答しています)、当初の予想よりもだいぶ低い結果となっています。

◆「ねんきん定期便」とは?

今年の4月からは、年金加入者(国民年金・厚生年金の被保険者。約7,000万人)に対し、「ねんきん定期便」の送付が始まります。社会保険庁は、これにより年金記録の「再点検」を求めるとしています。なお、送付の周期は「毎年誕生月に送付」となっています。

この「定期便」では、「特別便」とは異なり、記録の改ざんなども見抜けるような工夫がなされるようです。自分の年金加入記録(履歴)に加え、(1)標準報酬月額、(2)将来の年金見込額、(3)保険料の納付実績も記載されることとなっています。

◆「定期便」に封入される予定のもの

この「定期便」には、基本的には以下のものが封入されることになっています。
(1)定期便の本体
(2)説明書(冊子)
(3)回答票
(4)返信用封筒

なお、自分の年金記録漏れに気付いていない加入者については、記録漏れを申し出るためのヒントとして、記録が漏れている期間を示す書類(「あなた様の年金加入記録に結び付く可能性のある記録のお知らせ」)が同封されることになっています。

この「ねんきん定期便」の詳細やひな形等に関しては、社会保険庁のホームページ
http://www.sia.go.jp/topics/2006/n1124.html)でご覧いただくことができます。


公的年金制度はこの先も本当に大丈夫なのか?

◆2年連続でマイナス運用

公的年金の積立金の市場運用利回りが、2年連続でマイナスになる見通しだそうです。2007年度に5年ぶりのマイナスに転じて5兆8,000億円余りの損失を出した運用利回りですが、国内外の株価低迷を受け、2008年度における損失額は10兆円に達する可能性もあるとされています。

現行の公的年金制度は、向こう約100年にわたり平均4.1%の利回りを確保できることを前提としています。この前提のハードルの高さが鮮明となったことにより、年金制度の危うさが露呈しています。

◆財政検証による年金制度の見通し

現在、高齢者が受け取ることのできる年金の財源は主に3つあります。1つ目が「現役世代の支払う保険料」、2つ目が「国庫負担」、3つ目が「運用しつつ徐々に取り崩す積立金」です。

安定的に年金を受給できるかどうかのカギを握るのは、制度の支え手である現役層の厚さを決める「出生率」と、積立金の運用を左右する「経済情勢」です。近年、出生率が下がり続けており、また、経済情勢も悪化しているため、年金制度への不安がかなり高まっています。

厚生労働省は、5年ごとに行っている公的年金の財政検証をこのたび実施しました。これによれば、「所得代替率」(現役世代の平均手取り収入に対して厚生年金のモデル世帯の標準的な年金受取額が何%になるかを示す比率)は、将来も50%を維持できると試算されています。この数字だけをみると、非常に良い数値だといえます。

しかし、実際には、16兆2,000億円あった累積収益は、積立金の市場運用を始めた2001年度から2006年度末までに約9割減り、昨年末時点で1兆7,000億円弱にまで減っています。年金の主な給付財源の1つである積立金が減っているにもかかわらず、試算上は「50%給付」を維持できることとなるのは、経済が安定的な成長軌道に戻る、年金制度の担い手が増えるなどといった甘い見通しで計算を行っているからだと言わざるを得ません。

◆「100年安心」の年金制度実現へ何が求められるか

今回行われた公的年金の財政検証では、今後の約100年を見通して政府が公約する給付水準の下限の50%を何とか確保できると結論付けましたが、50%維持へのつじつま合わせの跡もうかがえます。

「100年安心」をうたう年金制度ですが、「100年安心」の年金制度を実現するためには、制度改革の議論とともに、安定給付のカギを握る経済成長と少子化対策への戦略が必要です。年金制度の安定には、「経済情勢回復」と「出生率向上」の両輪が欠かせないといえます。