◆ 健康保険の適用の特例 ◆
小規模事業所の法人代表者が業務上で怪我をした場合
通常、従業員が業務上で怪我をした場合には労働者災害補償保険から補償を受けることができる。しかし、労働者災害補償保険は「労働者」を対象とした保険制度であるから、原則として社長などの役員は特別加入をしない限り補償を受けることはできない。
しかし、小規模事業所の法人代表者が一定の要件を満たした場合については、労災の特別加入をしていなくとも、健康保険から給付を受けることができるという特例がある。
そもそも健康保険は業務外の傷病を対象としているが、法人代表者等の業務上傷病の取扱いに関する通達(平成15年7月1日 保発第0701002号)が出されており、それによれば以下の場合に業務上の傷病であっても健康保険による給付の対象とすることができるとされている。
① 健康保険の被保険者が5人未満である適用事業所に所属する
法人代表者等であること
② 一般の従業員と著しく異ならない労務に従事している者
③ 業務に起因して生じた傷病であること
ただし、労災保険に特別加入をしている者や労働者の地位を併せ持っている者については、労災保険が優先されるため、健康保険からではなく労災保険による給付の請求をするよう指導することとされている。
しかしながら、極めて小規模な事業所の法人の代表者等については、その事業の実態等を踏まえ、当面の措置として、下記のとおり取り扱うこととしたので、その実施に当たり遺憾のないよう取り扱われたい。
1 健康保険の給付対象とする代表者等について
被保険者が5人未満である適用事業所に所属する法人の代表者等であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者については、その者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関しても、健康保険による保険給付の対象とすること。
2 労災保険との関係について
法人の代表者等のうち、労働者災害補償保険法の特別加入をしている者及び労働基準法上の労働者の地位を併せ保有すると認められる者であって、これによりその者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関し労災保険による保険給付が行われてしかるべき者に対しては給付を行わないこと。このため、労働者災害補償保険法の特別加入をしている者及び法人の登記簿に代表者である旨の記載がない者の業務に起因して生じた傷病に関しては、労災保険による保険給付の請求をするよう指導すること。
3 傷病手当金について
業務遂行上の過程において業務に起因して生じた傷病については、法人の代表者等は、事業経営につき責任を負い、自らの報酬を決定すべき立場にあり、業務上の傷病について報酬の減額等を受けるべき立場にないことから、法第108条第1項の趣旨にかんがみ、傷病手当金を支給しないこと。
4 適用について
本通知は、本日以降に発生した傷病について適用すること。