育児・介護休業法改正のポイント
◆平成22年4月の施行予定
3歳未満の子どもを持つ従業員に対する「短時間勤務制度」の導入を企業に義務付けることや、父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2カ月までの間に1年間育児休業を取得可能とする「パパ・ママ育休プラス」の創設などを盛り込んだ育児・介護休業法の改正案(一部修正)が6月12日、衆院厚生労働委員会で可決されました。
国会審議が順調に進み今国会で成立すれば、来年4月から施行される予定です。
◆改正案のポイント
(1)子育て期間中の働き方の見直し
・3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けることを事業主の義務とし、労働者からの請求があったときの所定外労働の免除を制度化する。
・子の看護休暇制度を拡充する(小学校就学前の子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日)。
(2)父親も子育てができる働き方の実現
・父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2カ月(現行1歳)までの間に、1年間育児休業を取得可能とする。
・父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した後に復帰した場合、再度育児休業を取得可能とする。
・配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得不可とすることができる制度を廃止する。
(3)仕事と介護の両立支援
・介護のための短期の休暇制度を創設する(要介護状態の対象家族が1人であれば
年5日、2人以上であれば年10日)。
(4)実効性の確保
・苦情処理・紛争解決の援助および調停の仕組みを創設する。
・勧告に従わない場合の公表制度、および報告を求めた場合に報告をせず、または虚偽の報告をした者に対する過料を創設する。
◆仕事と家庭の両立に向けて
上記内容は、いずれも企業の取組み強化を迫るものとなっています。しかし、制度は整ったとしても、現実は利用しにくい雰囲気が、育休取得が進まない原因となっており、中小企業では、仕事と家庭を両立させ、育児休業を取得するには難しい状況であると言われています。
改正法が成立しても、両立支援が実効性あるものになるかどうかは、職場の意識改革を進めて育児休業を利用しやすい職場環境を作れるか、そして何よりも経営者の取組みがカギとなるでしょう。
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●育児・介護休業法改正後の介護休暇、対象家族の範囲―厚労省
厚生労働省は10月13日、育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)の改正についての詳細をトピックスとして同省のホームページに掲載した。
育児や介護を行う労働者の仕事と家庭の両立をより一層推進するために改正された同法は、4月21日の閣議決定を受けて9月30日施行となった。改正により創設された介護のための短期の「介護休暇」は、要介護状態にある家族の介護をしている労働者は年5日、要介護対象者が2人以上であれば年10日を上限として休暇を取得できる。
要介護状態とは2週間以上、常時介護を必要とする状態で、対象家族とは配偶者(婚姻の届け出をしていないが事実上婚姻関係同様者を含む)、父母、子、配偶者の父母、同居し扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫を指す。
これまでの「介護休業」では、介護の対象となる家族1人につき93日まで仕事が休めるほか、介護休業とあわせ93日までの勤務時間短縮などの措置が認められているが、家族の通院に付き添うなど介護者が短期の援助がしやすいように介護休業に加えて介護休暇が新設された。
また同省では、労働者と会社との間で育児・介護休暇の取得などをめぐりトラブルが生じた場合、解決に向けた援助を行う育児・介護休業法に基づく紛争解決援助制度を9月30日にスタートさせた。都道府県労働局長による指導や勧告を行うものと、弁護士や学識経験者などの調停委員による調停の2種類の援助があり、調停は2010年4月1日に開始される。
■改正育介法の「省令・指針の改正案」について
6月24日可決成立した育介法の目玉改正である「所定労働時間の短縮措置の義務化」。これには例外も認められているが、その内容が明らかになった。
指針案によると、「所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難な業務」は、次に掲げるものが該当する(例示=下記に限定されるものではない)とした。
ア)業務の性質に照らして、制度の対象とすることが困難な業務
−国際路線等に就航する航空機の客室乗務員の業務
イ)業務の実施体制に照らして制度の対象とすることが困難な業務
−労働者が少ない事業所において、当該業務に従事しうる労働者数が著しく少ない業務
ウ)業務の性質及び実施体制に照らして、制度の対象とすることが困難な業務
−流れ作業方式による製造業務
−交替制勤務による製造業務
−個人ごとに担当する企業、地域等が厳密に分担されていて、他の労働者では代替が困難な
営業業務
その他省令・指針案の全体像
■育児・介護休業法の改正について(09年10月13日 厚生労働省)
○育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び
雇用保険法の一部を改正する法律の概要
雇用保険法の一部を改正する法律の概要
○リーフレット 育児・介護休業法が改正されました!
(PDF:4,158KB) http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/dl/tp0701-1e.pdf
○リーフレット 育児・介護休業法に基づく紛争解決援助制度がスタートします。
(PDF:1,188KB) http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/dl/tp0701-1f.pdf
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●育児・介護休業法改正案が成立 時短義務化で対応を迫られる中小企業
(09年6月29日 ダイヤモンド・オンライン)
従業員規模10人〜29人の事業所における短時間勤務制度未導入の割合は、50%を超えている。その理由として「短時間勤務になじまない業務が多い」を挙げている企業が20.9%あることから推察されるのは、従業員数が多く、かつ、業務の分担などが定着・成熟していて「切り分け」やすい大企業に対し、中小企業は、業務が未分化であり、「切り分け」をするのはけっして容易でないということだ。
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育児・介護休業法改正案の概要
(平成21年4月21日 法律案要綱抜粋)
★暫定措置★
労働者100人以下の事業所に関しては、改正内容の一部に付き、3年程度の猶予措置が設けられる予定である。
(1)育児介護休業法の「目的」において、介護休暇に言及するものとする。
(2)育児休業(改正)
○ 1歳(両親ともに育児休業を取得した場合、1歳2か月)まで請求できる権利。保育所に入所できない等一定の場合は1歳半まで延長可能。
○(出産後8週間以内の父親の育児休業取得を促進するため)、配偶者の出産後8週間以内に、父親が育児休業を取得した場合には、特例として(当該父親の)育児休業を再度取得を認めることとする。
○ 労使協定を定めることにより、配偶者が専業主婦(夫)である場合等、常態として子を養育することができる労働者からの育児休業取得の申出を事業主が拒むことを可能としている規定を廃止する。
(3)子の看護休暇(改正)
年5日まで⇒1人であれば一の年度に5日、2人以上の場合にあっては、10日を限度とする。
(4)介護休暇(新設)
介護休暇=要介護状態にある家族の通院の付き添いなどに対応するため新設するもの。家族1人であれば一の年度に5日、2人以上の場合にあっては、10日を限度とする。(年度は原則として4月1日に始まり翌3月31日に終わるものとする。)
事業主は、①継続勤務が6箇月に満たない労働者のほか厚生労働省令で指定する合理的理由がある場合を除いて、介護休暇の申出を拒むことができないこと、②申出、取得を理由として解雇その他不利益な取扱をしてはならないこととする。
(5)所定外労働の制限(新設)
3歳に満たない子を養育する労働者(*1)が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定外労働をさせてはならないものとする(*2)。本件請求をしたこと等を理由として解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
(*1)継続勤務が1年に満たない労働者のほか厚生労働省令で指定する合理的理由がある場合について、労使協定で対象外とした者を除く
(*2)請求は、1か月以上1年以内の期間の初日及び末日を明らかにして、制限開始日の1か月前までにしなければならない。
(6)時間外労働の制限(改正)
「1月24時間、1年150時間制限」の適用を受けている期間は、新設された3歳に満たない子を養育する労働者の請求による所定外労働の制限の期間と重ならないようにしなければならない。
「1月24時間、1年150時間制限」、「深夜業の制限」の請求をしたこと等を理由として不利益な取扱いをしてはならない。
(7)所定労働時間短縮の措置等(新設)
事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者であって、育児休業をしていないもの(厚生労働省令で定める1日の所定労働時間が短い労働者を除く)の申出により、所定労働時間の短縮措置を講じなければならない。ただし、(1)継続勤務が1年に満たない労働者、(2)当該措置を講じないことについて合理的理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの、及び(3) 業務の性質又は業務の実施体制に照らして当該措置が困難と認められる業務に従事する労働者であって、労使協定で対象外とした者を除く
この場合、(3)の労働者であって、3歳に満たない子を養育するものについて、「所定労働時間の短縮措置を講じないこととするとき」は、育児休業に準ずる措置又は、始業時刻変更等の措置を講じなければならない。
所定労働時間短縮の措置等の申出をしたこと等に係る不利益取扱いを禁止する。
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、次の①②③の区分に応じ、
〔 〕内の措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。
①1歳(又は1歳6カ月)未満の子を養育し、育児休業をしていない労働者
⇒〔始業時刻変更等の措置〕
②1歳から3歳までの子を養育する労働者
⇒〔育児休業制度又は始業時刻変更等の措置〕
③3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者
⇒〔育児休業制度、所定外労働制限の制度、所定労働時間短縮の措置又は始業時刻変更等の措置〕
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